ジム・ロジャーズが株全売却、米ドル保有を推奨する理由
ジム・ロジャーズの株全売却と米ドル選好
世界三大投資家の一人として知られるジム・ロジャーズ氏が、保有する米国株をすべて売却し、ポートフォリオの大部分を米ドルに振り向けていることが注目を集めています。ロジャーズ氏は「歴史上、終わらない強気相場など存在しない」と繰り返し警告しており、2008年のリーマンショック以降続いてきた長期上昇相場の終焉が近いとの見方を示しています。
本記事では、ロジャーズ氏がなぜ今「株を持つな、米ドルを持て」と主張しているのか、その投資戦略の背景と個人投資家が考えるべきポイントを解説します。
ロジャーズ氏が株式を全売却した背景
史上最長の強気相場への警戒
ロジャーズ氏は、ジョージ・ソロス氏とともに1973年にクォンタム・ファンドを共同設立し、10年間で4,200%超のリターンを記録した伝説的投資家です。その経験から「パーティーは何度も見てきた」と語り、すべての米国株を売却したことを明かしています。
同氏が警戒する最大の理由は、米国株が2009年以降ほぼ一貫して上昇を続けてきたという事実です。これほど長期間にわたって調整なく上がり続けた例は米国市場の歴史においても極めて異例であり、その反動は大きくなると指摘しています。
膨張する政府債務
ロジャーズ氏が繰り返し強調するのが、世界的な債務の膨張です。米国の政府債務残高はGDP比で120%を超える水準に達しており、第二次世界大戦直後の水準を大きく上回っています。同氏は「次の弱気相場は私の人生で最悪のものになるだろう。なぜなら、過去14年間で債務が驚くべき規模に膨れ上がったからだ」と述べています。
コロナ禍以降の大規模な財政出動により、先進国全体で政府債務が急増しました。IMFのデータによれば、世界の政府債務のGDP比は4年ぶりの高水準に達しており、こうした状況がロジャーズ氏の危機意識をさらに高めています。
なぜ「米ドルを持て」なのか
短期的な安全資産としてのドル
ロジャーズ氏が現在、資産の大部分を米ドルで保有している理由は明確です。「人々が不安を感じると、安全資産に向かう。そして世界の多くの人々は、米ドルが安全資産だと考えている」と説明しています。
これは長期的にドルを信頼しているという意味ではありません。あくまで金融危機が到来した際に、投資家のリスク回避行動によってドルへの資金流入が起こるという経験則に基づいた戦略です。2008年のリーマンショック時にも、危機の震源地が米国であったにもかかわらず、ドルは安全資産として買われた実績があります。
長期的にはドルにも悲観的
一方で、ロジャーズ氏は米ドルの長期的な価値については悲観的な見方を崩していません。同氏は、多くの国がドルに代わる決済手段を模索し始めており、石油やコモディティの取引でも非ドル建て決済が増加していると指摘しています。
つまり、ロジャーズ氏の戦略は「短期的にドルを保有し、適切なタイミングで売却する」という二段構えです。弱気相場の到来でドルが買われる局面を利用し、その後はドルから他の資産へ移行する計画だとされています。
株式以外の注目資産
金・銀への投資
ロジャーズ氏は、金融危機から資産を守る最も有効な手段として金と銀の保有を挙げています。同氏自身も両方を保有しており、特に銀に注目しています。その理由として、金が過去最高値圏にある一方、銀はまだ歴史的高値に達していないことを挙げ、「今買うなら銀を選ぶ」と述べています。
2026年3月時点で、金の国内店頭小売価格は26,000円前後と歴史的高値圏で推移しています。一方、銀は工業用途も広いため、景気回復局面での上昇余地が大きいとされています。
農業・コモディティ
ロジャーズ氏はコモディティ投資の第一人者としても知られ、ロジャーズ国際商品指数(RICI)の開発者でもあります。同氏は「インフレ時には実物資産が最善の投資先であり、実物資産とはコモディティのことだ」と語っています。
特に農業分野は長期間にわたって低迷してきたため、今後の上昇余地が大きいと見ています。食糧やエネルギーなどの基礎的なコモディティは、紙幣の価値が下落する局面で相対的に価値を保つとの考えです。
ウズベキスタン株式への投資
意外な動きとして、ロジャーズ氏はウズベキスタンの株式市場にも投資していることが報じられています。タシケント共和国証券取引所に上場するほぼすべての企業の株式を購入し、銀行、通信、エネルギーセクターに注力しているとされています。これは、先進国市場のバブル崩壊後に新興国市場が台頭するという同氏の長期的な投資哲学に基づいた行動です。
ロジャーズ予測の限界と2026年市場リスク
ロジャーズ氏の予測の的中率
ロジャーズ氏の警告は重要な参考情報ですが、同氏が過去にも繰り返し暴落を予測してきたことは認識しておく必要があります。「暴落が来る」という主張は数年前からなされており、その間も米国株は上昇を続けてきました。著名投資家の見解を盲信するのではなく、自身の投資方針と照らし合わせて判断することが重要です。
個人投資家が考えるべきポイント
ロジャーズ氏のように全株売却という極端な行動は、一般の個人投資家には必ずしも適切ではありません。ただし、ポートフォリオの一部をキャッシュ(ドル建て資産)やコモディティに振り向けることでリスク分散を図るという考え方は、現在の市場環境において検討に値します。
2026年の市場では、インフレ動向、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策、そしてAI関連株の業績が焦点となっており、不確実性が高い状況が続いています。
米ドル・金銀・コモディティ分散による資産防衛
ジム・ロジャーズ氏の「株を持つな、米ドルを持て」という主張は、歴史的に長い強気相場の終焉と、膨大な政府債務がもたらす金融危機への備えを訴えるものです。短期的には米ドルを安全資産として保有し、中長期的には金・銀やコモディティへの分散を推奨しています。
個人投資家にとって重要なのは、こうした警鐘を参考にしつつ、自身のリスク許容度に応じたポートフォリオの見直しを行うことです。現金比率の調整やコモディティへの分散投資は、不確実な市場環境における有効な選択肢の一つといえます。
参考資料:
- Jim Rogers sold all of his US stock holdings because he’s ‘seen this party’ before
- ジム・ロジャーズ氏: 2026年、紙幣の価値暴落が開始する
- Jim Rogers warns of worst market crash in his life
- ジム・ロジャーズ氏: 株価急落でもまだ「アメリカ売り」にはなっていない
- Jim Rogers Invests in Uzbekistan’s Stock Market
- The Great Pivot: Why Jim Rogers is Abandoning Wall Street for Uzbekistan
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