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ダイレクトカーズ新作DN-75が放つ個性派キャンパー戦略の正体

by 伊藤 大輝
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17万3000台市場で際立つDN-75戦略

ダイレクトカーズの2026年新作群が目を引くのは、単に新型車が多いからではありません。各モデルが性能や装備だけでなく、見た目の世界観まで明確に切り分けられているからです。砂漠を連想させるサンドベージュ、角張ったシェル、観音開きドア、あるいは街中でも扱いやすい軽ベースのキャブコンなど、同社は「どんな旅をしたい人向けの車か」を外観の段階で伝えようとしています。

背景には、国内キャンピングカー市場の裾野拡大があります。日本RV協会によると、2025年の国内保有台数は17万3000台と過去最高でした。一方で生産台数は7727台、販売総額は約917億円と、ベース車不足の影響で供給は伸び切れていません。こうした市場では、台数勝負だけではなく、限られた供給の中でどれだけ強い個性を作れるかが重要になります。以下では、ダイレクトカーズの新作群の中心にあるDN-75を軸に、その個性の正体を整理します。

DN-75を核にしたブランド再編

KATANA表記からDN-75表記への移行

2026年1月18日のプレスリリースで、ダイレクトカーズは新型カムロードベース車を「KATANA」として発表しました。そこで示された仕様は、トヨタ・カムロードがベース、サンドベージュのラプター塗装とチップ塗装、4WDの3000ディーゼル、車体寸法4860×1870×2760mm、観音開きドアや折り畳み式2段ベッド、家庭用エアコンや大容量バッテリーを備えるというものです。

その後、2026年4月6日時点で筆者が確認した公式販売ページでは、極めて近い思想と仕様を持つ車両が「DN-75」として掲載されています。公式サイト上のDN-75は、同じくカムロードベースで、4WDディーゼルターボ、リア観音扉、家庭用エアコン、冷蔵庫50Lと冷凍庫50L、FFヒーターなどを標準装備し、価格は1398万円です。KATANAとDN-75の名称関係について会社の明示説明は確認できませんでしたが、発表時の仕様と現行販売ページの内容が強く連続しているため、商品整理または名称再編が進んだ可能性が高いとみられます。

ここで重要なのは、名前よりも設計思想です。DN-75は、従来の「豪華装備を積んだキャブコン」という説明よりも、「上質な空間を荒野にも持ち込む」というイメージで売られています。ダイレクトカーズは、車両そのものを移動式住宅ではなく、移動できる世界観として提示し始めています。

砂漠色と高装備が作る記号性

DN-75の強烈な個性は、性能と意匠が一体化している点にあります。外観ではサンドベージュ塗装、チッピング仕上げ、スコップや外部タンク類、観音開きのリア扉が、いかにも遠出や長期滞在を想起させます。見た目だけなら演出にも見えますが、実際に標準装備はかなり本格的です。300Ahリチウム電池、2000Wインバーター、家庭用エアコン、32インチテレビ、FFヒーター、20L給排水タンク、冷蔵庫と冷凍庫の分離配置まで備えています。

つまりDN-75は、オフロード風の外装だけをまとった雰囲気商品ではありません。過酷な環境を思わせるデザインと、長く滞在できる電装・空調・収納を組み合わせることで、見た目と実用が噛み合っています。2023年にハイラックスベースのBR75を出した時点で、ダイレクトカーズは「SUVアドベンチャーキャンパー」という強い記号を打ち出していました。DN-75はその流れを、より高価格帯かつ高級志向のキャブコンへ押し広げたモデルと見ると理解しやすいです。

個性の強さを支える商品ポートフォリオ

Dune RoverとPLATの役割分担

面白いのは、ダイレクトカーズがDN-75だけで勝負していないことです。同社の2026年ラインアップでは、軽トラックベースのDune Roverが598万円、同じくハイゼットトラックベースのPLATが439万円で並びます。Dune Roverは、発表時には「KATANA mini」と案内された車両で、公式販売ページでは2WDガソリン、100Ahリチウム電池、35L冷蔵庫、電動ステップなどを備える軽キャブコンとして整理されています。コの字ソファを中心に、限られた車内でも居住性を確保した設計が特徴です。

一方のPLATは、同じ軽ベースでも雰囲気がまったく違います。レスポンスや発表資料では、幾何学ラインをまとった都会的デザイン、8ナンバー登録、リアハッチを開けて外とつながる構成、マグネット式キッチンウォールや引き出し式テーブルなどが強調されています。DN-75が「荒野へ行くラグジュアリー」だとすれば、PLATは「日常の延長として使うキャブコン」です。価格差も大きく、ダイレクトカーズは旅の濃さと予算感に応じて、世界観を段階的に用意しています。

Nomadoaによる世界観の拡張

さらに同社は、初の軽キャントレーラーNomadoaを269万円で投入しました。公式サイトでは、NomadoaはDN-75シリーズの思想を受け継ぐと明記され、スクエアな外装、収納ボックス、引き出し式テーブル、ポップアップルーフ、家庭用クーラー対応などを備えています。プレスリリースでは小型バイクの積載まで想定されており、車内で完結するキャンピングカーというより、旅の拠点を牽いて行く道具に近い発想です。

ここから見えるのは、同社が「サイズ違いの商品群」を作っているのではなく、「旅のスタイル別ブランド群」を作っているということです。市場全体では保有台数が増えている一方で、供給制約も強い以上、どのメーカーでも大量生産で差をつけにくい局面です。だからこそダイレクトカーズは、DN-75のような高額で象徴性の強い旗艦車、Dune RoverやPLATのような入り口商品、Nomadoaのような周辺拡張を組み合わせ、ファンを面で囲い込もうとしているように見えます。

1398万円DN-75と供給制約の課題

もっとも、個性の強さがそのまま市場の広さに直結するとは限りません。DN-75は1398万円という価格帯で、一般的な車中泊入門層には明らかに高額です。Dune RoverやPLATも、軽ベースとはいえ約439万〜598万円であり、趣味車としては簡単に手が出る水準ではありません。加えて、日本RV協会の年次報告では2025年の生産台数減少の主要因としてベース車不足が挙げられており、人気が出ても供給が追いつかないリスクは残ります。

ただし見方を変えると、そこが同社の勝ち筋でもあります。大量販売が難しい環境では、価格競争より「この会社でなければ買えない見た目と物語」を作る方が強いからです。2026年1月の発表群を見る限り、ダイレクトカーズは軽キャン、キャブコン、トレーラーを別々のカテゴリとして売るのではなく、デザイン言語で横断するブランドへ進もうとしています。今後は、この世界観が内装の使い勝手やアフターサービスまで一貫して支持されるかが焦点になります。

DN-75を核に広がる移動できる世界観

ダイレクトカーズ新作キャンパーの個性が強く見える理由は、派手な見た目だけではありません。DN-75を核に、砂漠色の外装、観音開きのリア、長期滞在を支える電装、軽ベースのDune Rover、都市型のPLAT、トレーラーのNomadoaまで、旅のスタイルごとに明確な物語を設計しているからです。

キャンピングカー市場が拡大する一方で、供給制約も強い現在、メーカーには単なる装備競争以上の提案力が求められます。ダイレクトカーズはその答えとして、車を「移動できる部屋」ではなく「移動できる世界観」として売ろうとしているように見えます。個性の強さとは、まさにその設計思想の強さです。

参考資料:

伊藤 大輝

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