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不登校支援は欠席日数から孤立ゼロへ葉山町の学びをつなぐ新戦略

by 小林 美咲
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欠席日数から孤立リスクへ移る不登校支援

不登校支援の焦点が、静かに変わり始めています。文部科学省の令和6年度調査では、小中学校の不登校児童生徒数は35万3970人となり、12年連続で過去最多を更新しました。一方で、増加率は前年度の15.9%から2.2%へ低下し、新規不登校児童生徒数も9年ぶりに減少しています。

この数字が示すのは、不登校を単純な「登校できるか、できないか」の問題として扱う限界です。神奈川県葉山町が掲げる「学びの場につながっていない児童生徒をゼロにする」という発想は、学校復帰だけを成果にしない支援へ踏み出す試みです。欠席を数えるだけでは見えない孤立、学びの継続、進路への安心をどう支えるのか。その転換点を読み解きます。

葉山町が掲げる実質的孤立ゼロの設計

「30日」の手前で拾う早期把握

不登校は一般に、心理的、情緒的、身体的、社会的な背景により年間30日以上欠席した状態を指します。この定義は全国比較には欠かせませんが、支援の現場では遅れて届く信号にもなります。29日目まで苦しんでいる子ども、登校はしているが教室に入れない子ども、学校外で学んでいても制度上は欠席扱いになりやすい子どもは、数字だけでは十分に見えません。

葉山町の資料では、令和5年度末時点で、学校やフリースクールなどの学びの場につながっていない児童生徒が小学校21人、中学校22人含まれていることが課題として示されました。重要なのは、この人数を「不登校の増減」としてではなく、「接点の未整備」として捉えた点です。欠席日数を減らす施策だけなら、登校した日数が増えれば成果になります。しかし、葉山町が見ようとしているのは、子どもが誰かに状況を知ってもらい、学びや相談の入口を持てているかです。

この考え方は、文部科学省が示す支援方針とも重なります。国は、不登校支援を「学校に登校する」という結果だけを目標にせず、本人が進路を主体的に捉え、社会的に自立することを目指す必要があるとしています。つまり、登校再開は大切な選択肢の一つですが、唯一の正解ではありません。

リソースルームを支援拠点にする校内改革

葉山町は令和7年度の施政方針で、すべての小中学校に設置されているリソースルームを「校内教育支援センター」として位置づける方針を示しました。教室に入りづらい児童生徒が、校内で落ち着いて過ごし、必要に応じて学習活動に取り組める場所へ育てる狙いです。

特徴的なのは、単なる別室登校の受け皿にとどめていないことです。教員免許を持つ専門的な相談員の配置、学習活動を評価へ反映する仕組み、教室と校内教育支援センターをオンラインでつなぐ環境づくりが打ち出されています。自宅や校内の別室にいても、リアルタイムの授業や学校との関係から完全に切り離されない設計です。

令和8年度の施政方針では、不登校児童生徒のフリースクール利用に係る支援制度の創設も掲げられました。ここから見えるのは、町が「学校内で戻す」だけでなく、「学校外で学ぶ費用や接点も支える」方向へ進んでいることです。小さな自治体だからこそ、学校、教育委員会、福祉、地域団体の距離を近く保ちやすい面があります。制度の網目を細かくし、子どものいる場所へ支援を近づける発想です。

学びの場を増やす校内外ネットワーク

ヤシの実と地域の居場所の役割分担

葉山町には、町立小中学校に在籍する子どもが学校に登校できないとき、基礎学力の補充やさまざまな活動を行う「葉山町教育支援教室(ヤシの実)」があります。通室する子どもへの支援だけでなく、不登校に悩む保護者の相談窓口にもなっています。

ただし、教育支援教室を用意すれば全員が通えるわけではありません。神奈川県の教育支援センター手引きも、県全体では不登校のうち実際に教育支援センターへ通所する児童生徒は一部にとどまり、訪問型支援やICT活用が求められると指摘しています。電話や手紙から始める段階的な関わり、学校との密な連携、フリースクールとの情報共有が必要です。

この点で、地域の居場所は重要な補助線になります。HAYAMA居場所プロジェクトは、学校に行っている子も行っていない子も来られる無料の居場所を地域の大人たちでつくる活動です。学習支援、読書、食事、おしゃべり、相談などを通じて、学校か家庭かという二択ではない時間を支えています。行政の教育支援教室が制度的な学びの場を担い、地域の居場所が日常の安心と交流を担う。この二層構造が孤立を防ぎます。

県域支援と進路情報の接続

不登校支援は義務教育の期間だけでは完結しません。中学生にとっては、高校進学、定時制、通信制、学び直し、就労支援につながる情報が早めに届くかどうかが、将来の選択肢を左右します。

神奈川県は、県内33市町が設置する教育支援センターへの専任教員配置、不登校相談会、進路情報説明会、メタバース相談会、学校とフリースクール等による相談会を案内しています。県の進路情報説明会では、参加者の声として、フリースクールや相談機関、高校の情報を一度に得られたことへの安心が紹介されています。

葉山町の取り組みも、この県域ネットワークと切り離して考えるべきではありません。町内で把握し、校内教育支援センターやヤシの実につなぎ、必要に応じて県の相談会やフリースクール、通信制高校の情報へ橋渡しする。こうした接続があるほど、保護者は「次に何を調べればよいか」という不安を減らせます。

キャリア教育の視点で見れば、不登校支援は欠席対策ではなく、進路形成支援です。自分に合う環境を知り、相談できる大人を持ち、学びの成果を認められる経験は、将来の働く力にもつながります。

全国展開で問われる人材と評価の持続性

葉山町型の支援を広げるうえで、最大の課題は人材です。校内教育支援センターを置いても、そこに継続して関わる相談員、教員、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーが不足すれば、場所だけが先行します。特に、本人と直接会えていないケースでは、家庭との連絡、学校内のケース会議、福祉部局との連携が必要になり、担任だけで抱えるには重すぎます。

もう一つの論点は評価です。令和6年8月の制度改正で、一定の要件を満たせば、不登校児童生徒が学校外や自宅で行った学習成果を成績評価に反映できることが明確化されました。これは大きな前進です。学校外で努力している子どもに「やっても評価されない」という無力感を抱かせにくくなります。

一方で、評価の運用には慎重さも必要です。学校の教育課程との関係、保護者や支援機関との連携、本人との継続的な関わりが求められます。単にプリントを提出させるだけでは、孤立の解消にはなりません。学びを評価する制度は、子どもを管理するためではなく、努力を認め、次の学びにつなげるために使う必要があります。

また、「つながる」ことが本人への過度な接触になってはいけません。休養が必要な時期の子どもには、すぐに学習や登校を迫らない距離感も支援です。孤立ゼロとは、常に誰かが監視する状態ではなく、必要なときに助けを求められる関係が切れていない状態です。

保護者と学校が今日確認したい接点

不登校支援で最初に確認したいのは、欠席日数ではなく接点です。本人が安心して話せる相手はいるか、学校外でも学びや活動の場所があるか、保護者が相談できる窓口を知っているか。この三つを点検するだけで、支援の入口は見えやすくなります。

学校側は、30日を待たずに変化を拾う仕組みを持つことが重要です。自治体側は、不登校人数の増減だけでなく、どの子も学校、教育支援教室、地域の居場所、フリースクール、相談機関のいずれかとつながっているかを成果指標にできます。

葉山町の発想転換は、不登校を「減らす対象」から、子どもが孤立しないよう環境を組み替える課題へ戻した点に価値があります。学校に行けない時期があっても、学びと人間関係まで失わなくてよい。その当たり前を制度にすることが、これからの不登校支援の中心になります。

参考資料:

小
小林 美咲

キャリア・教育

キャリア形成・教育改革・リスキリングなど、人と学びの接点を取材。変化する時代に求められる「働く力」を問い続ける。

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