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中国半導体の国産化が加速、日本の装置メーカーに迫る転機

by 伊藤 大輝
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中国装置国産化と日本勢の対応期限

中国の半導体国産化が新たな段階に入っています。米国による輸出規制の強化を背景に、中国は製造装置の自給体制構築を国家戦略として加速させています。世界の半導体製造装置メーカー上位20社に中国企業が3社入り、その存在感は急速に高まっています。

一方、日本の半導体製造装置メーカーにとって中国は最大の輸出先です。中国市場の変化は、日本企業の業績と戦略に直結する問題です。本記事では、中国の国産化の現状と、日本メーカーに残された対応期間について分析します。

中国が製造装置の国産化を急ぐ背景

米国の輸出規制がもたらした危機感

米国は2022年以降、中国への半導体製造装置の輸出規制を段階的に強化してきました。日本とオランダも2023年に規制に加わり、先端装置の対中輸出に制限がかかっています。

この規制により、中国の半導体メーカーは最先端の製造装置を海外から調達することが困難になりました。中芯国際集成電路製造(SMIC)は、規制前に確保した装置の一部についてサポート部品を調達できず、使用できない状態にあると報告しています。こうした経験が、国産化への強い動機となっています。

第15次5カ年計画の始動

中国共産党がまとめた第15次5カ年計画では、半導体の国産化が最重要項目の一つに位置づけられています。特に、これまで海外依存度が高かった露光装置、EDA(電子回路の設計自動化)ツール、先端材料の国産化が明記されています。

目標は、米国の制裁に左右されない独自のサプライチェーンを構築することです。半導体メーカーは新規増産時に50%以上の国産装置を導入することが求められており、2027年には成熟プロセスにおける装置国産化率70%という野心的な目標が設定されています。

7兆円規模の半導体ファンド

この計画を資金面で支えるのが、「国家集成電路産業投資基金三期」です。総額約7兆円規模のこのファンドは、特に製造装置と材料への投資に重点を置いています。

過去の一期・二期ファンドが主にファウンドリ(受託製造)やメモリ企業への投資に注力したのに対し、三期ファンドは装置・材料のサプライチェーン強化を明確な目的としています。国家を挙げた資金投入により、中国の装置メーカーは研究開発と生産能力の両面で急速な成長を遂げています。

台頭する中国の装置メーカー

NAURAの急成長

中国の半導体製造装置市場を牽引するのが、北方華創科技集団(NAURA)です。NAURAの2024年12月期の売上高は約298億元に達し、米中摩擦が始まった2018年12月期の約9倍にまで成長しました。この規模は日本最大手の東京エレクトロンの約4分の1に相当します。

NAURAは洗浄、エッチング、熱処理などの分野で強みを持ち、PVD(物理気相蒸着)装置では中国市場の3割近いシェアを獲得しています。これはアプライドマテリアルズに次ぐ規模であり、グローバル大手と直接競合する段階に入っています。

AMECとその他の新興勢力

中微半導体設備(AMEC)もエッチング装置を中心に成長を続けています。SMICやYMTC(長江存儲科技)など、中国を代表する半導体メーカーとの取引実績を持ち、国内市場での地位を固めています。

2021年からの3年間で、中国の主要装置メーカーの売上規模は1.5倍から2倍に拡大しました。世界の装置メーカー上位20社に中国企業が3社入ったことは、2022年の1社から大きく躍進したことを意味します。

国産化率の現状と課題

中国の半導体製造装置の国産化率は現在2割から3割程度とされています。成熟プロセス向けの装置では国産化が進んでいますが、先端プロセスに不可欠な露光装置については、ASMLの技術レベルには遠く及ばない状況です。

EUV(極端紫外線)露光装置はもちろん、ArF液浸露光装置の完全な国産化にも至っておらず、最先端半導体の製造には依然として海外装置への依存が続いています。この技術ギャップが、日本を含む海外メーカーにとっての「猶予期間」を生んでいます。

日本の装置メーカーが直面する構造変化

中国市場依存のリスク

日本の半導体製造装置メーカーにとって、中国は最大の市場です。東京エレクトロンは2024年4〜12月期に中国向け売上高比率が4割を超えていましたが、2026年3月期には3割台半ばに低下する見通しを示しています。

この減少は輸出規制の影響だけでなく、中国企業が国産装置への切り替えを進めていることも要因です。中国の装置メーカーが成熟プロセス向けで実力をつけるにつれ、日本メーカーのシェアは構造的に縮小していく可能性があります。

成熟プロセスと先端プロセスの二極化

中国の国産化が進んでいるのは、主に成熟プロセス(28nm以上)向けの装置です。洗浄、エッチング、熱処理といった工程では、中国製装置が実用レベルに達しつつあります。

一方、先端プロセス(7nm以下)向けの装置では、日本メーカーの技術優位は依然として大きいです。東京エレクトロンの塗布・現像装置やSCREENの洗浄装置は、先端半導体の量産に不可欠な存在です。日本メーカーの戦略としては、先端領域での技術リードを維持・拡大することが最優先課題です。

5年という時間軸の意味

業界関係者の間では、中国が成熟プロセス向け装置の大部分を国産化するまでの猶予は5年程度との見方が広がっています。これは、2027年の国産化率70%目標と整合する時間軸です。

ただし、先端プロセス向け装置の国産化にはさらに長い時間がかかると見られています。露光装置の技術ギャップは10年以上とも言われ、この分野では日本メーカーの優位性が当面続く可能性が高いです。問題は、成熟プロセス向け市場の喪失を先端領域の成長で補えるかどうかです。

対中協調と顧客多角化の地政学リスク

競争か協調かの選択

日本の装置メーカーは、中国市場との関係で難しい判断を迫られています。輸出規制に従いながらも、規制対象外の製品では中国市場を維持したいというジレンマがあります。

一部のメーカーには、中国企業との技術提携や合弁事業を検討する動きもあると報じられています。完全なデカップリングが現実的でない以上、競争と協調のバランスをどう取るかが経営の焦点になります。

地政学リスクへの備え

半導体製造装置は地政学的な戦略物資となっており、今後も規制の強化や緩和が繰り返される可能性があります。特定の市場への過度な依存を避け、米国、欧州、東南アジアなど顧客基盤の多角化が不可欠です。

TSMCの日本進出やインテルの設備投資計画など、中国以外での半導体投資も活発化しています。こうした新たな需要を確実に取り込むことが、日本メーカーの成長戦略の柱となるでしょう。

NAURA台頭後の5年戦略転換

中国の半導体製造装置の国産化は、7兆円ファンドと国家計画に支えられ、着実に進展しています。成熟プロセス向けではNAURAやAMECが実力をつけ、日本メーカーのシェアを侵食し始めています。

日本の装置メーカーに求められるのは、先端プロセスでの技術優位を磨き続けることと、顧客基盤の多角化です。猶予とされる5年は、戦略転換のための貴重な時間です。この期間をどう活用するかが、日本の半導体産業の未来を左右するでしょう。

参考資料:

伊藤 大輝

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