多摩の廃墟モール「クロスガーデン多摩」衰退の全貌
クロスガーデン多摩18年衰退の背景
東京都多摩市の多摩センター駅前は、サンリオピューロランドで知られる人気エリアです。駅前のパルテノン大通り沿いには「ココリア多摩センター」や「丘の上プラザ」など活気ある商業施設が並んでいます。しかし、そこからわずかに離れた場所に、空きテナントが目立ち「廃墟モール」とも呼ばれる商業施設が存在します。
それが「クロスガーデン多摩」です。2008年の開業からわずか18年で、3階フロアの半分近くが空き区画となり、2026年2月には最後の砦ともいえるスーパー「フーディアム」も閉店しました。なぜ、同じ多摩センターエリアでありながら、ここまで明暗が分かれてしまったのでしょうか。本記事では、その衰退の要因と今後の見通しを解説します。
クロスガーデン多摩とは何だったのか
2008年開業のオープンモール型商業施設
クロスガーデン多摩は、2008年4月25日にオリックス不動産が開発・運営するショッピングセンターとしてオープンしました。東京都多摩市落合の未利用丘陵地に建設された、地上3階・地下1階のオープンモール型施設です。「ネイバーフッド型ショッピングセンター(NSC)」と呼ばれる、近隣住民の日常利用を想定した業態でした。
開業時の核テナントは、ダイエーが運営する新業態スーパー「フーディアム多摩センター」(同業態の本格展開1号店)と、家電量販店のヤマダ電機でした。食品・日用品と家電という日常的な買い物ニーズを押さえ、地域密着型の商業施設として船出したのです。
土地はURの定期借地権
重要なポイントとして、クロスガーデン多摩の土地はUR都市機構(旧都市再生機構)が所有しており、事業用定期借地権が設定されています。つまり、契約期間が満了すれば建物を取り壊して土地を返却する必要があるのです。この定期借地権の存在が、施設の将来に大きな影を落としています。
衰退を加速させた3つの要因
要因1:駅からの導線の悪さ
クロスガーデン多摩の最大の弱点は、多摩センター駅からの導線にあります。駅前のメインストリートであるパルテノン大通り沿いには、ココリア多摩センターや丘の上プラザといった大型商業施設が建ち並んでいます。クロスガーデン多摩は、それらの施設の裏手に位置しており、特にココリア多摩センターの背後に隠れるような立地です。
地元住民でなければ存在に気づきにくく、駅前の自然な人の流れから外れています。商業施設にとって「人が自然に集まる動線上にあるかどうか」は死活問題であり、この立地のハンデは開業当初から抱えていた構造的な課題でした。
要因2:核テナントの相次ぐ流出
立地が不利な分、集客力のある核テナントの存在が不可欠でした。しかし、2020年代に入り、主要テナントの流出が相次ぎます。
まず、ヤマダ電機の撤退後に入居していた家電量販店のノジマが、2022年に駅に近い「丘の上プラザ」へ移転しました。続いて2023年には、衣料品チェーンのGU(ジーユー)が「ココリア多摩センター」へ移転。いずれも、より集客力の高い駅前施設への流出です。
そして2026年2月、開業以来18年間にわたって1階の大部分を占めていたスーパーマーケット「フーディアム多摩センター」が閉店しました。閉店理由は「定期借地権の契約満了」とされています。ダイエーの新業態として本格展開の1号店という象徴的な店舗でしたが、施設全体の先行きが不透明ななかで営業継続は困難と判断されたとみられます。
要因3:多摩センター駅前の競争激化
多摩センター駅前には、商業施設が密集しています。約120の専門店が入居し売り場面積約6万2,000平方メートルを誇る「ココリア多摩センター」は、もともと百貨店「多摩そごう」の建物を利用した多摩センター最大級の商業施設です。「丘の上プラザ」にはイトーヨーカドーが入居し、そのほか「丘の上パティオ」「マグレブ」なども駅前に展開しています。
これほどの商業施設がひしめくなかで、駅から離れたクロスガーデン多摩が集客力を維持するのは容易ではありません。多摩ニュータウン全体の人口が2025年頃にピークを迎え、今後は減少に転じるとの推計もあり、限られたパイの奪い合いはさらに厳しくなると予想されます。
多摩ニュータウンが抱える構造的課題
人口減少と高齢化の波
クロスガーデン多摩の衰退は、多摩ニュータウン全体が直面する問題の縮図でもあります。東京都の推計によると、多摩市域の人口は2050年には2010年比で約27%減少する見通しです。特に初期入居地区である諏訪・永山地区では32%もの人口減少が予想されています。
生産年齢人口(15〜64歳)は平成7年をピークに減少が続いており、高齢化率は2050年に35%に達すると見込まれています。商業施設を支える消費者層の縮小は避けられない状況です。
近隣センターの役割変化
多摩ニュータウンでは、かつて日常の買い物拠点として機能していた「近隣センター」の役割が変化しています。自動車利用の普及やネット通販の台頭により、小規模な商業拠点の存在意義が薄れてきました。クロスガーデン多摩のような中規模施設も、大型駅前施設とネット通販の板挟みにあっている構図です。
今後の展望:再開発の可能性と多摩センターの未来
クロスガーデン多摩の跡地利用
定期借地権の契約満了が迫るなか、クロスガーデン多摩の跡地利用に注目が集まっています。地域では食品スーパー「ロピア」の進出を期待する声もありますが、建物自体の存続性を考えると、すぐに新たなスーパーが入居する可能性は低いとみられます。
専門家の間では、跡地は単一の商業施設ではなく、分譲マンションを中心とした複合型開発が有力視されています。低層階に生活支援型の小規模商業施設や、図書館分館・地域ケアプラザといった公共・福祉機能を備える形が想定されます。
多摩センター駅前の再整備
一方で、多摩センター駅前エリア全体では前向きな動きもあります。京王電鉄は、旧京王プラザホテル多摩の建て替え計画を発表しており、2028年度の竣工・開業を目指しています。商業機能を強化して新たなファミリー層・若年層を呼び込み、多摩センター駅周辺の活性化を図る狙いです。
老朽化した団地の建て替えによる多世代共生の取り組みも進められており、多摩ニュータウン全体の再生に向けた動きは少しずつ具体化しています。
定期借地権と人口減少が迫る複合開発
クロスガーデン多摩の衰退は、駅からの導線の悪さ、核テナントの相次ぐ流出、そして周辺商業施設との競争激化という3つの要因が重なった結果です。加えて、定期借地権という制度上の制約が、テナントの長期的な出店意欲を削いでしまった面もあります。
この事例は、郊外型商業施設が成功するためには、立地の優位性と核テナントの安定的な確保がいかに重要かを示しています。多摩ニュータウンの人口減少・高齢化という構造的課題を踏まえると、跡地の複合型開発や駅前再整備といった、街全体のグランドデザインを見据えた取り組みが求められます。多摩センターの未来を左右する重要な局面が続きそうです。
参考資料:
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