クロスガーデン多摩が廃墟化した3つの要因と教訓
はじめに
東京都多摩市にある大型商業施設「クロスガーデン多摩」が、いま「廃墟モール」と呼ばれるほどの深刻な衰退に直面しています。2008年の開業からわずか18年で、3階フロアはほぼ全区画が空き店舗となり、施設全体が閑散とした状態に陥っています。
こうした郊外型ショッピングモールの衰退は、日本各地で発生している構造的な問題です。なぜクロスガーデン多摩はここまで苦境に追い込まれたのでしょうか。本記事では、競合施設の存在、アクセスの悪さ、核テナントの撤退という3つの要因を中心に、その衰退劇の顛末を解説します。郊外型商業施設が抱える課題と、再生に向けた可能性についても考察していきます。
クロスガーデン多摩とは何だったのか
オープンモール型の新しい試み
クロスガーデン多摩は、オリックス不動産が開発・運営する「クロスガーデン」ブランドのショッピングセンターです。2008年4月25日、多摩ニュータウンの一角にある未利用の丘陵地にオープンしました。地上3階・地下1階の建物で、屋外通路を中心としたオープンモール型の設計が特徴です。
核テナントには、ダイエーが新業態として展開した食品スーパー「フーディアム」の本格展開1号店が入居しました。そのほか、家電量販店のノジマやファストファッションのGU、家具のROOM DECOかねたやなど、日常生活に密着したテナントが並ぶ「ネイバーフッド型ショッピングセンター(NSC)」として開業しています。
土地はURからの定期借地
重要なポイントとして、クロスガーデン多摩が立地する土地は、UR都市機構(旧・都市再生機構)が所有しています。2005年7月に事業用定期借地権として分譲が行われ、20年間の契約期間が設定されました。この定期借地契約の存在が、後のテナント撤退の引き金ともなっています。
衰退を招いた3つの要因
要因1:駅チカ競合施設の圧倒的優位
クロスガーデン多摩にとって最大の逆風となったのが、駅前に位置する競合施設「ココリア多摩センター」の存在です。ココリア多摩センターは多摩センター駅から直結に近いアクセスを誇り、約110店舗を擁する大型商業施設です。
ココリア多摩センターには、無印良品、ユニクロ、GU、ニトリ、丸善といった人気テナントが集結しています。特に注目すべきは、もともとクロスガーデン多摩に入居していたノジマやGUが、ココリア多摩センターに移転した点です。駅に近いほうが集客力で有利であることは明らかで、テナント側もより好立地の施設を選んだ形です。
この「テナント引き抜き」により、クロスガーデン多摩は集客の核を失いました。同じ多摩センターエリアにありながら、駅からの距離がテナント誘致力に決定的な差を生んでいます。
要因2:「絶妙に悪い」アクセス
クロスガーデン多摩は多摩センター駅から徒歩約10分の位置にあります。「徒歩10分」と聞くと大した距離ではないように思えますが、これが商業施設としては致命的な弱点となっています。
駅前にはココリア多摩センターや丘の上プラザなど複数の商業施設が集積しており、大半の買い物客はわざわざ駅から離れたクロスガーデン多摩まで足を延ばす必要がありません。さらに、駅側から見るとココリア多摩センターの後ろに隠れる位置関係にあり、地元住民でなければ存在に気づきにくいという視認性の問題も抱えています。
車でのアクセスも万全とは言えません。駐車場料金の改定が利用者の不満を招いているという指摘もあり、郊外型モールとしての利便性が十分に確保されていない状況です。徒歩でも車でも「行きにくい」施設は、集客力の維持が困難です。
要因3:核テナントの連鎖的撤退
クロスガーデン多摩の衰退を決定づけたのが、核テナントの相次ぐ撤退です。前述のノジマやGUの移転に加え、最大の衝撃は核テナントであるフーディアム多摩センター店の閉店です。
フーディアムは2008年の開業以来、約18年にわたってクロスガーデン多摩の1階で営業を続けてきた、まさに施設の「顔」でした。しかし2026年2月に閉店が決定。ダイエーが運営するこのスーパーの撤退は、施設の集客力に致命的な打撃を与えました。
この撤退の背景には、UR都市機構との定期借地契約の満了が迫っているという事情があります。20年契約で2005年に締結された借地権は、契約更新の見通しが立たない中で、長期的な営業継続の判断が難しくなっていたと考えられます。核テナントが撤退すると、残存テナントの集客力も低下し、さらなる撤退を招く「負のスパイラル」に陥ります。
なお、フーディアム閉店後も、モスバーガーやQBハウスなど一部店舗は営業を継続しています。しかし3階は屋内のほぼ全区画が空き店舗となり、外壁は色あせ、柵は錆び、「廃墟」と形容される状態になっています。
他施設の事例から見る再生の可能性
ピエリ守山の「明るい廃墟」からの復活
郊外型モールの衰退は全国で見られる現象ですが、再生に成功した事例もあります。その代表例が、滋賀県守山市の「ピエリ守山」です。
ピエリ守山は2008年の開業直後にリーマンショックに見舞われ、さらに近隣にイオンモール草津が開業したことで、約200店舗からわずか3店舗まで激減しました。「明るい廃墟」というネット上の呼び名が話題になったほどです。
しかし2014年に大規模リニューアルを実施。琵琶湖畔という立地を活かした温浴施設やアウトドア施設を導入し、H&MやZARAなど県内初の海外ブランドを誘致することで、100店舗以上の規模まで復活を遂げました。「競合にない独自の魅力」を打ち出したことが再生のカギとなっています。
クロスガーデン多摩に再生の道はあるか
ピエリ守山の事例は、立地の特性を活かした差別化戦略が有効であることを示しています。しかしクロスガーデン多摩の場合、定期借地権の契約満了という根本的な制約があります。
仮に土地利用の継続が可能になったとしても、駅前の競合施設に対抗するには、商業機能だけでない付加価値の創出が求められます。全国的に「パブリックモール」化、すなわち行政サービスや医療、子育て支援などの公共的機能を組み込んだ施設への転換が注目されています。
注意点・展望
郊外型商業施設の衰退は、単なる個別の経営問題ではありません。日本全体が直面する構造的な課題と密接に関連しています。
人口減少と高齢化により、かつてニュータウンに流入した子育て世代が高齢化し、商圏人口が縮小しています。多摩ニュータウンもまさにその典型で、開発から40年以上が経過した現在、団地の老朽化と住民の高齢化が同時に進行しています。
さらに、EC(電子商取引)の普及や若者の車離れにより、わざわざ郊外のモールまで足を運ぶ必然性が薄れています。今後は全国各地で同様の「デッドモール」が増加する可能性があり、土地利用の転換や施設のコンバージョン(用途変更)が重要なテーマになってきます。
まとめ
クロスガーデン多摩の衰退は、競合施設の台頭、アクセスの悪さ、核テナントの連鎖的撤退という3つの要因が複合的に作用した結果です。その根底には、定期借地権の契約満了や多摩ニュータウンの高齢化といった構造的な問題が横たわっています。
郊外型モールの今後を考えるうえで、この事例は重要な教訓を提供しています。商業施設の成否は立地とアクセスに大きく依存すること、核テナントの撤退が致命的な連鎖を引き起こすこと、そして定期借地権という時限的な枠組みの中での長期経営の難しさです。私たちの身近にあるショッピングモールの未来を考えるきっかけとして、クロスガーデン多摩の事例を注視していく価値があります。
参考資料:
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