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商業施設に麻雀教室が急増する理由と背景

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はじめに

近年、イトーヨーカドーやマルイ、ドン・キホーテといった大型商業施設のフロアに、これまでとは異質なテナントが入居するケースが目立っています。その代表格が「麻雀教室」です。かつて麻雀といえば雑居ビルの薄暗い雀荘をイメージする人も多かったのですが、いまや明るいショッピングセンターの一角で、シニア層から若い女性まで幅広い層が卓を囲む光景が当たり前になりつつあります。

この現象の背景には、麻雀そのもののイメージ転換、商業施設が抱える空きテナント問題、そして高齢化社会における健康ニーズという複数の要因が絡み合っています。本記事では、商業施設に麻雀教室が増えている理由とその社会的背景を詳しく解説します。

「健康麻雀」が変えた麻雀のイメージ

賭けない・飲まない・吸わないの3原則

商業施設に出店している麻雀教室の多くは、「健康麻雀」と呼ばれるスタイルを採用しています。健康麻雀とは「賭けない」「お酒を飲まない」「タバコを吸わない」という3つのルールを徹底した麻雀のことです。従来の雀荘が持っていたギャンブルや喫煙のイメージを払拭し、純粋に頭脳ゲームとして麻雀を楽しむことを目的としています。

この健康麻雀は、特にシニア層の間で急速に支持を広げています。麻雀は手牌の組み合わせを考える戦略性、相手の捨て牌から意図を読む推理力、点数計算に使う計算力など、複合的な脳の働きを必要とします。こうした特性から、認知症予防や脳の活性化に効果があるとして、医療・介護の分野からも注目されています。

Mリーグが生んだ新世代の麻雀ファン

麻雀の裾野を大きく広げたもう一つの要因が、2018年に発足したプロ麻雀リーグ「Mリーグ」です。サイバーエージェントやKONAMI、セガサミーといった大手企業がチームオーナーとなり、トップレベルのプロ雀士が真剣勝負を繰り広げるリーグ戦は、ABEMAでの配信を通じて多くの視聴者を獲得しました。

2025-26シーズンでは試合数が拡大され、2卓同時開催も導入されるなど、コンテンツとしての成長が続いています。「観る雀」という言葉が定着し、これまで麻雀に縁がなかった若者や女性にもファン層が拡大しました。オンライン麻雀ゲーム「雀魂(じゃんたま)」の登録者数は1,000万人を突破し、大学の麻雀サークルの参加者もコロナ前の約2.5倍に増加するなど、麻雀人口そのものが大幅に増えています。

商業施設が麻雀教室を歓迎する理由

深刻化する空きテナント問題

商業施設が麻雀教室を積極的にテナントとして迎え入れる背景には、小売業界の構造変化があります。EC(ネット通販)の拡大や消費者の購買行動の変化により、従来型の物販テナントだけでは集客力を維持できなくなっています。

特にイトーヨーカドーは、セブン&アイ・ホールディングスの経営方針のもと、2025年度までに33店舗を閉店して93店舗体制に縮小する計画を進めてきました。閉店に至らない店舗でも上層階の空きフロアが課題となっており、従来のアパレルや雑貨店に代わる新たなテナントの確保が急務です。

「コト消費」へのシフト

こうした中で注目されているのが、体験型・滞在型のテナントです。物を買う「モノ消費」から、体験を楽しむ「コト消費」への移行が進む中、カルチャー教室やフィットネス、エンターテインメント施設といった業態が商業施設のテナントとして存在感を高めています。

麻雀教室はこのトレンドに合致する業態です。定期的に通う会員制のビジネスモデルであるため、安定した来館者を確保できます。さらに、教室の前後に買い物や食事をする「ついで消費」も見込めることから、施設全体の回遊性を高める効果も期待されています。

先駆者「みんなの麻雀」の成功事例

商業施設内の健康麻雀教室として注目を集めているのが、NSGグループの株式会社チアリーが運営する「みんなの麻雀」です。2019年にイトーヨーカドー綾瀬店6階に1号店をオープンし、2022年にはイトーヨーカドー幕張店2階にも出店しました。

「日本一初心者と女性に優しい教室」を掲げ、明るくフレンドリーな雰囲気を重視した運営が特徴です。ショッピングセンター内という立地により「入りやすさ」「安心感」が確保され、従来の雀荘には足を運ばなかった層の取り込みに成功しています。2022年からはキッズ教室も開始し、オンライン教室の展開も行うなど、ビジネスモデルの幅を広げています。

注意点・今後の展望

収益モデルの持続性

麻雀教室は受講料ベースのビジネスモデルであるため、一定数の会員を維持できるかが成否の鍵を握ります。地域の人口構成やアクセスの良さなど、出店立地の見極めが重要です。また、講師の質やカリキュラムの充実度が会員の継続率に直結するため、人材確保も課題となります。

他業態との競合と共存

商業施設の空きテナント対策としては、麻雀教室のほかにもフィットネスジム、ヨガスタジオ、eスポーツ施設、コワーキングスペースなど、さまざまな業態が台頭しています。今後は単なる麻雀教室にとどまらず、カフェ併設やイベントスペースとの融合など、複合的な体験を提供する業態への進化も考えられます。

高齢化社会での役割拡大

認知症ケア支援サービスの市場規模は、2016年の約230億円から2025年には約679億円に拡大すると推計されています。健康麻雀はこの市場の一角を担う存在として、今後も成長が見込まれます。介護予防の観点から自治体との連携や、デイサービスとの融合といった展開も広がりつつあり、社会インフラとしての位置づけが強まる可能性があります。

まとめ

商業施設に麻雀教室が増えている現象は、一見すると奇妙に映るかもしれません。しかしその背景には、Mリーグによる麻雀のイメージ刷新、健康麻雀というクリーンな業態の確立、商業施設の空きテナント問題、そして高齢化社会における認知症予防ニーズという、複数の社会的トレンドの交差があります。

今後も高齢者人口の増加とともに、「地域のコミュニティスペース」としての健康麻雀教室の需要は拡大していくと考えられます。商業施設を訪れた際に麻雀教室を見かけたら、それは時代の変化を映す一つの象徴として注目してみてはいかがでしょうか。

参考資料:

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