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千葉・旭サンモールはなぜ衰退したか、二桁成長から廃墟化の顛末

by 佐藤 理恵
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旭サンモールを「廃墟」と呼ぶ前の事実確認

千葉県旭市のショッピングセンター「サンモール」は、空き区画や老朽化した設備が目立つ一方、営業を停止した廃墟ではありません。2026年時点でもベイシア、クリエイトエス・ディー、ダイソー、映画館、ゲームセンター、医療機関などが営業しています。

それでも「廃墟モール」の印象が生まれるのは、かつての施設規模に対して店舗の密度が低下し、にぎわいが館内全体へ広がっていないためです。開発会社の破綻、広域型モールとの競争、核テナント撤退が重なった結果であり、単なる人口減少だけでは説明できません。

サンモールの歩みは、成長期の売上だけを基準に大型投資へ進む危険性と、地方商業施設に必要な財務余力を示す事例です。

増床投資が財務余力を奪った成長モデルの限界

二桁成長を支えた郊外型商圏の形成

サンモールは1982年4月、旭市に本社を置く大新産業によって開業しました。核店舗は扇屋ジャスコで、地域の専門店を集めた郊外型ショッピングセンターとして成長しました。

開業後は売上が毎年二桁で伸びたとされ、1993年4月には大幅な増床へ踏み切ります。国道沿いの立地と広い駐車場を武器に、旭市だけでなく、東側の銚子市などを含む広域商圏を取り込む戦略でした。

ここで重要なのは、成長期の売上増加と、施設オーナーに残るキャッシュが同じではないことです。モールの売上が増えても、開発会社が受け取るのは賃料や管理収入です。増床に伴う借入金、金利、修繕費、共用部の維持費が増えれば、表面的な売上成長と財務余力は反対方向へ動く場合があります。

大新産業はショッピングセンターだけでなく、1990年にビジネスホテルと健康ランドも開業しました。複数の不動産事業を同時に広げたことで、資産規模とともに固定費や資金需要も膨らんだと考えられます。

収入43%減と47億円の負債が示す構造

帝国データバンクによると、大新産業の年収入高は1995年6月期に約22億3000万円へ達しました。しかし、テナント売上の低迷に伴って賃料の引き下げを迫られ、2000年6月期には約12億6400万円まで減少しています。

減少額は約9億6600万円、率にして約43.3%です。5年間の年平均減少率に直すと約10.7%となり、好調期とは逆方向の二桁ペースで収入が縮んだ計算です。賃料収入が下がっても、借入金の元本や利息、建物の維持費は同じ割合では減りません。

大新産業は2000年ごろにホテル、2001年6月にサンモールを売却しましたが、借入金の金利負担を吸収できず、2002年に破産しました。負債総額は約47億4000万円でした。これを2000年6月期の年収入高と単純比較すると約3.75倍です。

この倍率は有利子負債比率や債務償還年数そのものではありません。詳細な貸借対照表やキャッシュフロー計算書が公開されていないためです。それでも、収益力の低下に対して負債が重かったことは読み取れます。

売上高と賃料収入を分ける会計視点

「毎年二桁成長していたのになぜ倒産したのか」という疑問への答えは、成長率だけで投資余力を判断できない点にあります。見るべきなのは、テナント売上ではなく、賃料収入から運営費を差し引いた純営業収益と、そこから元利払いを行えるかどうかです。

売上歩合賃料を採用していれば、テナント売上の減少はオーナー収入へ直接響きます。固定賃料でも、退店を防ぐために減額へ応じれば収益は下がります。一方、増床で生じた借入金や大型設備の保守費は長期間残ります。

サンモールの失敗は、増床そのものが誤りだったと断定できるものではありません。問題は、景気後退や競争激化が起きたときに、賃料減額と金利負担を同時に吸収できる財務上の余白が小さかったことです。

競合出店と核テナント撤退が崩した集客循環

広域集客を狙ったシネコン投資の明暗

大新産業による売却後、2006年にはパシフィカ・モールズが設立した特別目的会社が、信託受益権の仕組みを通じてサンモールを取得しました。当時の施設は延床面積4万8110平方メートル、賃貸可能面積3万620平方メートル、専門店70店超と説明されています。

不動産の保有主体を特別目的会社へ分ける手法は、施設の資産価値と運営業務を切り分け、資金調達を組み替えやすくします。開発会社が破綻してもモール自体が営業を続けられたのは、不動産と企業が必ずしも同じ寿命を持たないためです。

2008年には6スクリーン、759席のサンモールシネマが開業しました。開業時には年間30万人の利用を見込み、映画を目的とする来館者を飲食や買い物へ回遊させる狙いがありました。現在も映画館が営業していることから、地域の娯楽拠点をつくる投資には一定の持続性があったと評価できます。

ただし、映画館の集客だけで全館の物販区画を埋めることは困難です。映画の上映時間に合わせた来館は目的性が強く、他のフロアに魅力がなければ、そのまま退館されます。体験型テナントは重要ですが、空き区画を自動的に解消する万能策ではありません。

大型モールと近隣型施設による二重の圧力

2010年にはイオンモール銚子が開業しました。総賃貸面積は約3万1000平方メートル、駐車台数は約3200台で、サンモールと同等以上の商業床に、より大規模な駐車場と多様な専門店を備えています。

サンモールが増床時に取り込もうとした銚子方面の消費者にとって、より近い大型モールが誕生したことになります。衣料品、娯楽、外食をまとめて楽しむ広域需要で、サンモールは強い競争にさらされました。

さらに2022年4月、約1.1キロ離れた場所にイオンタウン旭が開業しました。同施設はイオンスタイル旭中央を核店舗とし、旭市の公共施設「おひさまテラス」、医療、介護、無印良品などを組み合わせています。

イオン側は開業時、サンモール内のイオン旭店、イオン銚子店、イオンスタイル旭中央の3店舗で異なる需要に応える方針を示していました。しかし、イオン旭店は2023年2月に閉店します。1982年の開業以来、約41年間にわたり営業した核店舗の撤退でした。

新旧店舗の共存方針が短期間で変更された事実は、人口が縮小する商圏で複数の総合スーパーを維持する難しさを示します。新しい施設は省エネ性能や売場効率で優位に立ちやすく、行政施設や病院との連携によって、買い物以外の来館動機もつくれます。

ベイシア入居が生んだ再生余地と残存課題

サンモールは核店舗撤退後も営業を続け、2024年9月には「ベイシア Foods Park 旭サンモール店」が開業しました。食品スーパーという日常的な来店動機を回復できた点は大きな前進です。

現在の公式ショップガイドには、ベイシアに加えてドラッグストア、100円ショップ、衣料品店、書店、クリニック、調剤薬局、整骨院、美容室、映画館、ゲームセンターなどが掲載されています。物販だけでなく、医療やサービスを取り込む方向性が見えます。

一方、2008年に約75店とされた時期と比べると、館内全体の店舗密度は低下しています。特に大規模な上層階は、来館者を垂直移動させる強い目的がなければ空洞化しやすい構造です。食品スーパーの集客を、映画、飲食、医療、地域サービスへつなぐ動線設計が再生の焦点になります。

千葉県への届出では、2024年12月に建物設置者が三菱UFJ信託銀行からサバンナ合同会社へ承継されたことも確認できます。ただし、これは建物設置者の変更であり、日常の施設運営主体や再開発方針が直ちに変わったことを意味しません。所有、運営、テナント営業を区別して見る必要があります。

再生を阻む人口縮小と老朽化コストの重圧

旭市の住民基本台帳人口は2025年10月時点で6万1207人となり、前年から926人、率にして1.49%減少しました。65歳以上は2万276人で全体の約33.1%、15歳未満は6180人で約10.1%です。衣料品や娯楽を大量に消費する若い家族層の自然増だけに期待する戦略は成り立ちにくくなっています。

一方、2021年の市内小売業は525事業所、年間商品販売額716億9800万円でした。地域の購買需要が消滅したわけではなく、複数の商業施設やロードサイド店へ分散していると見るべきです。

旭駅の1日平均乗車人員は2024年度に1583人です。サンモールは駅から徒歩圏にありますが、公式駐車場は1600台を備えています。鉄道より自動車利用を前提とする施設であり、集客圏の広さと競合店までの運転距離が業績を左右します。

今後の最大のリスクは、空き区画だけではありません。開業から40年以上が経過した建物では、空調、昇降機、防水、受変電設備などの更新が集中します。賃料を下げてテナントを誘致できても、修繕費を賄えなければ資産価値は低下します。短期の満床化より、更新投資を含めた長期収支の設計が欠かせません。

地方モール再生で注視すべき三つの指標

サンモールの再生可能性を判断するには、来館者数だけでなく、賃貸可能面積に対する稼働率、運営費控除後の純営業収益、今後必要になる設備更新額の三つを継続的に見る必要があります。大型テナントの入居で一時的に人が増えても、賃料条件や改装負担によって施設側の収益が残らない場合があるためです。

再生策としては、上層階を従来型の物販で埋め戻すより、医療、教育、行政窓口、子育て支援、屋内運動施設など、ネット通販では代替しにくい用途への転換が現実的です。ベイシアと映画館が生む来館を、日常サービスへ接続する設計も重要になります。

読者や地域事業者は「空き店舗が何区画あるか」だけでなく、誰が建物を所有し、誰が運営し、修繕費を誰が負担するのかを確認すべきです。サンモールの顛末が示す教訓は、売上成長よりも、需要減少に耐えられる財務構造と用途転換の余地こそが地方モールの寿命を決めるという点です。

参考資料:

佐
佐藤 理恵

企業分析・M&A

会計士としての経験を活かし、企業の財務構造やM&A戦略を深掘り。数字の裏にある経営者の意思決定を読み解く。

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