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バークシャー後に浮上する長期保有型の日本株10銘柄候補を読む

by 高橋 翔平
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バークシャーの日本株買いが第2幕に入る理由

バークシャー・ハサウェイの日本株投資は、5大総合商社で終わった話ではありません。2026年からグレッグ・アベル氏がCEOを務める体制に移り、投資判断の継続性と変化の両方が問われています。バークシャーの2025年年次報告では、同社が三菱商事、伊藤忠商事、三井物産、丸紅、住友商事を長期価値創造の重要な投資先として扱っていることが確認できます。

焦点は、次にどの日本株を買うかという単純な当て物ではありません。円建てで資金を調達し、理解しやすい事業を長く保有し、経営陣と利害をそろえられるかが本質です。本稿では、バークシャーの開示資料、日本企業の最新IR、東京海上ホールディングスとの提携報道をもとに、次の候補として見られやすい10銘柄を整理します。

商社と東京海上に共通する買収条件

円建て調達と配当収入の好相性

バークシャーの日本株投資を読むうえで、最初に見るべきは為替ではなく資金構造です。同社の2025年年次報告によれば、5大商社の保有比率は三菱商事10.8%、伊藤忠商事10.1%、三井物産10.4%、丸紅9.8%、住友商事9.7%です。5社合計の市場価値は2025年末時点で353億6800万ドル、同年の受取配当は8億6200万ドルでした。

同時に、バークシャーは日本で投資額の原価におおむね見合う円建て借り入れを行い、平均コストは1.2%、加重平均残存期間は約5.75年と説明しています。つまり、単に日本株が安いから買ったのではなく、円の低コスト資金と安定配当を組み合わせる設計です。この構造に合う銘柄は、配当の継続性、資本規律、財務の強さを備えている必要があります。

アベル体制で強まる事業理解の重み

アベル氏のCEO初年度の書簡では、バークシャーの投資条件として、理解できる事業、持続的な競争優位、長期の経済性、信頼できる経営陣、少数の高確信アイデアへの集中が改めて示されました。現金と米国債の保有額が3700億ドルを超える一方、同社は待つことを投資撤退とは見ていません。むしろ、条件に合う大型案件を待つ余力を保っている状態です。

東京海上ホールディングスについては、米メディアが2026年3月に、バークシャー傘下のNational Indemnityによる約2.5%出資と再保険・M&A面での提携を報じました。これは商社株とは違い、バークシャー自身が強みを持つ保険領域に近い投資です。東京海上は世界57カ国・地域に拠点を持つグローバル保険グループであり、少数株投資でも事業面の接点を説明しやすい点が特徴です。

この2つの事例から見える条件は明確です。第1に、バークシャーの規模でも意味がある時価総額と流動性です。第2に、配当や自社株買いを通じて株主還元を継続できる収益力です。第3に、単なる割安株ではなく、保険、インフラ、金融、産業材など、バークシャーが事業の中身を理解しやすい領域であることです。

次の候補に浮かぶ10銘柄の評価軸

金融と市場インフラの有力候補

金融セクターでまず浮かぶのは、三菱UFJフィナンシャル・グループと三井住友フィナンシャルグループです。MUFGは2026年3月期の純利益が2兆4272億円、ROEが11.3%となり、2027年3月期には純利益2兆7000億円、ROE約12%を目標にしています。金利上昇局面で国内預貸利ざやが改善しやすく、モルガン・スタンレーとの関係を含む国際展開もあります。

SMFGも同じく候補性が高い企業です。2026年3月期の純利益は1兆5830億円、ROEは10.4%で、2027年3月期は純利益1兆7000億円を目標にしています。同社は円金利が25ベーシスポイント上昇した場合、初年度の資金利益押し上げ効果を1100億円と試算しています。バークシャーが銀行を好むかは規制資本や景気循環で慎重に見るべきですが、規模、収益性、還元余地の面では候補から外しにくい銘柄です。

ORIXは金融、リース、不動産、再生可能エネルギー、投資を横断する企業で、商社に近い資本配分型の性格があります。2026年3月期の純利益は4473億円で、3期連続の過去最高益、ROEは10.4%でした。1500億円の自社株買いを完了し、資本効率を意識した運営を続けています。バークシャーにとっては事業の幅が広すぎる反面、投資会社的な資本循環を理解しやすい点が強みです。

日本取引所グループは、東京証券取引所、大阪取引所、東京商品取引所、日本証券クリアリング機構などを抱える市場インフラ企業です。取引量と上場企業の資本市場利用に収益が連動するため、景気感応度はありますが、代替困難な「通行料型」の事業です。バークシャーが好む独占的・寡占的インフラの発想に近く、日本企業の資本効率改善が続くほど中長期の恩恵を受けやすい銘柄です。

通信インフラと製造業の本命候補

通信ではNTTとKDDIが有力です。NTTは2026年3月期の営業収益が14兆4091億円、営業利益が1兆7062億円、NTT帰属利益が1兆370億円でした。2026年度は営業収益15兆600億円を見込み、2030年度にEBITDA4兆円を目指します。さらに2026年度は1株配当を5.4円へ増配し、最大2000億円の自社株買いを掲げています。通信網、データセンター、AIインフラを併せ持つ点は、長期保有の説明がしやすい領域です。

KDDIは2026年3月期の営業収益が6兆719億円、基礎的な営業利益が1兆1643億円、親会社所有者帰属利益が7567億円でした。モバイル収入の増加に加え、金融とDX領域が二桁成長した点が目立ちます。通信会社としての安定収益を土台に、ローソンや金融サービスを組み合わせる生活圏ビジネスへ広げているため、単なる高配当ディフェンシブ株ではなく、国内消費インフラとして評価できます。

製造業では、最初にToyota Motorが挙がります。2026年3月期の売上収益は50兆6849億円、営業利益は3兆7662億円、親会社所有者帰属利益は3兆8480億円でした。米国関税の影響を受けながらも、トヨタ・レクサスの販売は1047万7000台、電動車は504万台でした。2026年3月期の年間配当は95円、2027年3月期は100円予想で、安定増配方針を掲げています。規模が大きすぎるため買い増しの余地は限られますが、世界的なブランド、販売網、財務体力はバークシャー好みです。

Hitachiは、かつての総合電機からデジタル、送配電、鉄道、産業システムへ事業を絞った企業です。2026年3月期は売上収益10兆5867億円、調整後EBITA1兆3114億円、日立株主帰属利益8023億円で、調整後EBITA、純利益、コアフリーキャッシュフローが過去最高でした。2027年3月期は売上収益11兆1000億円、純利益8500億円を見込みます。Power GridsやLumadaの成長は、インフラとソフトウェアの複合事業として評価できます。

Shin-Etsu Chemicalは、塩化ビニル、半導体シリコン、機能材料を持つ化学大手です。半導体サイクルの影響は受けますが、素材の参入障壁と財務規律は強く、長期保有型の候補に入りやすい企業です。バークシャーが半導体そのものではなく、不可欠な素材と高い利益率を持つ企業を選ぶなら、装置・デバイスよりも理解しやすい対象になります。ただし、需給サイクルと為替影響を受けるため、買い時の見極めは重要です。

Daikin Industriesは、空調とフッ素化学を軸に世界展開する企業です。2026年3月期は売上高5兆150億円、営業利益4150億円で、売上と営業利益が過去最高となりました。2027年3月期は売上高5兆1500億円、営業利益4360億円を見込みます。中期戦略「FUSION 30」では2029年3月期に営業利益率10%、ROE12%を目標にしています。猛暑、建物の省エネ、データセンター冷却という構造需要を考えると、短期景気より長期の空調需要を買う銘柄です。

候補銘柄注目理由主な確認点
Toyota Motor世界ブランドと販売網、安定増配方針関税、EV競争、認証問題の再発防止
MUFG国内金利上昇の受益、国際金融網与信費用、政策保有株の処理
SMFG高ROE化と国内預貸利ざや改善海外リスク、株主還元の持続性
NTT通信網とAI・データセンター基盤規制、設備投資負担、政府保有株
KDDI通信と金融・小売の生活圏化競争政策、グループガバナンス
Hitachi送配電、鉄道、DXの社会インフラ大型案件の採算、M&A価格
Shin-Etsu Chemical高シェア素材と財務規律半導体サイクル、塩ビ市況
Daikin Industries空調の世界需要と省エネ需要原材料、為替、北米住宅市況
ORIX資本循環と多角化金融の経験値投資損失、事業ポートフォリオの複雑さ
Japan Exchange Group代替困難な市場インフラ取引量依存、制度変更リスク

この表で重要なのは、候補を時価総額順に並べないことです。バークシャーの投資は、規模だけでなく「保有した後に説明し続けられるか」が問われます。ToyotaやNTTは説明しやすい一方、すでに多くの投資家が品質を評価しており、期待値が株価に織り込まれやすい銘柄です。MUFGやSMFGは金利上昇の追い風がありますが、景気後退時には与信費用が一気に増える可能性があります。ORIXやJPXはユニークですが、事業の複雑さや買付可能な株数が制約になります。したがって、本命度は企業の格ではなく、価格、保有可能額、株主還元、提携余地を同時に満たす順で変わります。

円高と割高化で変わる候補銘柄の優先順位

バークシャーが実際に買うかどうかは、候補企業の質だけでは決まりません。最大の変数は価格です。5大商社投資は、円建て調達コストが低く、配当利回りと成長余地を同時に説明できたことが大きな強みでした。すでに日本株全体の評価が上がった局面では、同じ条件を満たす企業は限られます。

金融株は金利上昇の恩恵を受けますが、与信費用の増加や海外不動産・企業金融の悪化には注意が必要です。通信株は安定していますが、規制と設備投資の重さがあります。製造業はグローバルで稼げる一方、円高、関税、地政学、需要循環の影響を受けます。JPXのような市場インフラ株は魅力的ですが、流動性や保有比率の制約から、バークシャー級の資金を入れにくい可能性があります。

もう1つの論点は、アベル体制での「提携価値」です。東京海上のように、再保険やM&Aでバークシャー側の事業と接点がある投資は説明しやすい一方、単なる金融投資は市場に割高感が出ると見送りやすくなります。したがって、次の本命は、安い大型株ではなく、事業上の接点と資本配分の規律を同時に語れる企業になるはずです。

個人投資家が確認すべき3つの指標

個人投資家は、バークシャーが買うという期待だけで銘柄を選ぶべきではありません。まず確認すべきは、10年単位で事業が残る理由です。通信網、金融仲介、空調、送配電、市場インフラのように、社会の基本機能に近い事業ほど長期保有の根拠を作りやすくなります。

次に、配当と自社株買いが利益成長に見合っているかを見ます。還元が大きくても、借入や資産売却に依存していれば持続性は弱くなります。最後に、円建てで見た投資利回りです。バークシャーは円で調達し、円の配当を受ける構造を作りました。個人投資家も、株価上昇期待だけでなく、配当、利益成長、財務の余裕を同じ表で比較する姿勢が必要です。

今回の10銘柄は、バークシャーの購入を予言するリストではありません。むしろ、バークシャーならどの条件を厳しく見るかを使って、日本の大型株を再点検するための物差しです。候補を追うよりも、候補に残る理由を検証することが、長期投資では最も再現性の高い作業になります。

参考資料:

高橋 翔平

株式・投資戦略

株式市場の構造変化と投資戦略を、個人投資家の視点から分析。企業の財務データを読み解き、マーケットの本質に迫る。

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