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専業主婦志向が薄れる令和婚活で女性年収公開が武器に変わる結婚条件

by 小林 美咲
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専業主婦前提が崩れる婚活市場の現在地

婚活市場で、女性の年収を控えめに見せたほうがよいという助言は、急速に古くなっています。かつては「男性が稼ぎ、女性が家庭を支える」という役割分担が結婚の標準像として語られました。しかし、現在の結婚希望者が向き合っているのは、物価上昇、住宅費、教育費、老後資金を夫婦でどう支えるかという現実です。

専業主婦を望む男性が少数派になった背景には、単なる価値観の変化だけでなく、家計とキャリアの構造変化があります。女性の収入や雇用の安定性は、男性にとっても将来設計の重要な判断材料になりました。本稿では、公的統計と婚活関連調査をもとに、令和の婚活で「年収を隠す」ことがなぜ不利に働きやすいのかを読み解きます。

婚活は、恋愛感情だけでなく、生活の共同運営者を探すプロセスでもあります。特に30代前後の結婚希望者にとって、結婚後の数年は転職、出産、住宅購入、親の介護準備が重なりやすい時期です。相手の年収を知ることは値踏みではなく、リスクをどう分担するかを考えるための基礎情報になっています。

共働き志向を押し上げる家計と雇用の変化

共働き世帯が標準になった統計上の事実

共働きは、もはや特殊な選択ではありません。JILPTが総務省「労働力調査(詳細集計)」をもとに整理したデータでは、2024年平均で共働き世帯は1,300万世帯、専業主婦世帯は508万世帯でした。共働き世帯は前年から22万世帯増え、専業主婦世帯は9万世帯減っています。

内閣府の令和7年版男女共同参画白書も、2024年時点で共働き世帯数が専業主婦世帯数の3倍以上になったと説明しています。白書は、妻がフルタイムで働く共働き世帯も増加傾向にあると指摘します。結婚後に片方の収入へ全面的に依存する家計モデルは、統計上も多数派ではなくなりました。

この変化は、婚活で重視される条件にも直結します。オーネットが2026年5月に公表した25~34歳の独身男女611人調査では、結婚した場合の基本的な働き方として「共働きを希望」が全体79.8%、男性86.3%、女性74.5%でした。一方で「片働き」を希望する割合は全体14.0%、男性7.6%、女性19.3%にとどまっています。

婚活アプリ「ブライダルネット」の調査でも、男性の理想の働き方は「夫婦がフルタイムで働く」が51.9%で最多でした。「夫がフルタイム、妻がパートで働く」も38.4%あり、妻が専業主婦になる形は6.3%でした。男性側の希望を見ても、結婚後に女性が何らかの形で働き続ける前提が濃くなっています。

家計不安の中身を見ると、共働き志向がさらに理解しやすくなります。オーネット調査では、結婚後の家計で不安に感じることとして「物価上昇への対応」が全体54.5%で最多でした。次いで「子育て費用」が37.7%、「住宅購入費用」が29.8%、「老後資金」が28.8%です。収入不足という一言ではなく、長期に続く支出増への警戒が結婚観を変えています。

この状況では、専業主婦志向は「好き嫌い」の問題だけでは済みません。片働きを選ぶには、失業や病気で主収入が途切れた場合の備え、子どもが生まれた後の教育費、復職する場合のスキル維持まで見通す必要があります。結婚前の話し合いで女性の収入や職歴が見えないと、男性側も家計の耐久力を判断しにくくなります。

若い世代が描く両立型ライフコース

若年層の意識も同じ方向に動いています。国立社会保障・人口問題研究所の第16回出生動向基本調査では、18~34歳の未婚者について、女性の理想像でも男性が将来のパートナーに望む像でも「仕事と子育ての両立」が初めて最多になりました。男性がパートナーに望むライフコースでは、両立コースが39.4%、再就職コースが29.0%、専業主婦コースが6.8%です。

同調査は、結婚相手の条件として男性が女性の経済力を重視または考慮する割合が48.2%に上昇したことも示しています。前回調査の41.9%から伸びており、女性の収入は「気にしないもの」から「生活設計に関係するもの」へ位置づけが変わりました。

学生段階の意識にも変化が表れています。マイナビの2027年卒大学生調査では、結婚後の仕事について「夫婦共働きが望ましい」が全体70.9%、男子68.1%、女子74.3%でした。男子の共働き希望割合は過去最高とされ、専業主婦志向は若い男性の多数派ではありません。

ここで重要なのは、共働き志向が必ずしも「女性にフルタイム勤務を強制する価値観」ではない点です。現実の希望は、フルタイム、パート、育休、時短、再就職、リスキリングを組み合わせる柔軟なものです。ただし、婚活段階では「働く意思」「働き続ける見通し」「家計を話し合う姿勢」が、相手に安心感を与える材料になっています。

キャリア形成の観点では、共働き希望は「今の勤務先に残り続けること」と同義ではありません。結婚後の転居や育児で働き方を変えるとしても、専門性、資格、語学、デジタルスキル、営業経験、マネジメント経験などは再就職や副業の土台になります。婚活で伝えるべきなのは、現在の肩書だけでなく、生活環境が変わっても収入を作る力です。

年収公開が信頼材料へ変わる婚活の評価軸

男性側にも広がる女性の経済力への関心

女性の高年収が婚活で不利になるという見方は、少なくとも一枚岩ではありません。IBJが2026年に公表した成婚データ分析では、女性の年収公開者の成婚率は非公開者の1.8倍とされています。同社は、2025年に成婚したカップルの約8割が世帯年収1,000万円以上だったとも説明しています。

この数字を過度に一般化することはできません。IBJのデータは結婚相談所ネットワークで成婚した会員の活動実績であり、すべての婚活層を代表するものではないからです。それでも、結婚相談所という結婚意思の高い市場で、女性の年収公開が不利ではなく、むしろ優位性として働いている点は注目に値します。

理由は明確です。片方の収入だけで高い生活水準や将来資金を支えることが難しくなったためです。国税庁の令和6年分民間給与実態統計調査では、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は全体478万円、男性587万円、女性333万円でした。男女差はなお大きいものの、男性一人の平均給与だけで住宅、教育、老後まで見通すのは容易ではありません。

過去の婚活調査にも、男性側が女性の収入を忌避しない傾向は見られます。IBJが2016年に公表した調査では、男性の76%が「自分より年収が上の女性は恋愛対象になる」と回答しました。年収より相性や人柄を重視する、仕事ができることも魅力だといった意見も紹介されています。令和の婚活では、この傾向に家計防衛の要素が加わっています。

年収を隠すリスクと伝え方の設計

年収公開が重要になるのは、単に金額を競うためではありません。結婚は生活費、住居、子育て、親の介護、病気や失業時の備えを共有する契約でもあります。相手が知りたいのは「いくら稼いでいるか」だけでなく、「収入をどう使い、どう守り、今後どう伸ばすつもりか」です。

オーネット調査では、結婚前に確認したいお金の情報として、生活費の分担イメージ、貯金額、借入やローンの有無などが重視されていました。結婚後の家計管理でも、完全共有や完全別財布より、生活費だけ共有する「一部共有型」が全体49.4%で最多です。収入額そのものより、共有できる範囲とルールの合意が問われています。

マッチングアプリ側の調査を見ると、年収条件の使い方には男女差も残っています。Omiai Report lightの2022年版では、相手探しで年収を条件に入れて検索した男性は全体の2.4%にとどまりました。一方、女性は年収500万円以上を条件にする割合が全年代平均23.6%、30歳以上では年収800万円以上の割合が28.0%とされています。

ネクストレベルのマッチングアプリ利用経験者調査でも、年収条件を設定している男性では「300~399万円」が最多で、200~499万円の合計が83.8%でした。女性は「自分より高ければいくらでもOK」が26.3%で、男性より希望額に幅が出ています。つまり、男性は女性の収入額を細かく条件検索しない傾向がありつつ、結婚生活の設計段階では女性の収入や働き方を無視できなくなっています。

年収を隠すことのリスクは、金額そのものよりも、生活設計を話し合う意思が見えにくくなる点にあります。高年収の女性が不利になるのではなく、収入、支出、貯蓄、働き方の希望を曖昧にしたまま相手に判断を迫ることが不利になりやすいのです。公開する場合も、額だけを示すのではなく、転職予定、育児期の働き方、学び直し、貯蓄方針まで含めて伝えるほうが、キャリア情報として機能します。

一方で、年収を過度に盛ることも逆効果です。プロフィール上の年収が実態とずれていれば、交際が進んだ段階で信頼を損ないます。幅のある年収レンジを選ぶサービスでは、前年実績、賞与の変動、残業代の有無、副業収入の扱いを自分の言葉で補足すると誤解を減らせます。婚活での年収開示は、見栄を張るためではなく、相手と同じ家計表を見られる関係を作るためのものです。

特に高年収の女性は、相手を萎縮させないために低く見せるより、働き方の価値観をセットで伝えるほうが建設的です。たとえば「仕事は続けたいが、育児期は時短も検討する」「住宅費は収入比で無理なく決めたい」「資格取得に毎年投資している」といった情報は、年収額だけでは見えない生活姿勢を示します。

共働き婚に残る家事負担と地域格差の課題

共働きが標準化しても、家事と育児の負担が自動的に均等になるわけではありません。出生動向基本調査では、女性が男性の家事・育児能力や姿勢を重視または考慮する割合が70.2%まで上昇しました。女性が男性の収入だけでなく、家庭内で実際に協働できるかを見ていることがわかります。

内閣府の令和7年版男女共同参画白書は、都市では家庭でも仕事でも活躍できる「令和モデル」が浸透しつつある一方、地方では「男性は仕事、女性は家庭」という「昭和モデル」が残るとの指摘を紹介しています。若い女性が地方から都市へ転出する背景にも、仕事の選択肢や収入面、性別役割分担意識への違和感があると整理しています。

この点は婚活でも見落とせません。共働きを希望する男性が増えても、家事や育児を「手伝う」感覚のままでは、女性側に二重負担が発生します。女性が年収を公開するなら、男性側も家事、育児、介護、転勤、親族との距離、育休取得の考え方を公開する必要があります。収入の透明化だけでは、対等な結婚には届きません。

また、キャリアの継続には制度と職場環境が不可欠です。育休や時短勤務を使えるか、復職後に賃金や職務が大きく下がらないか、保育サービスを利用できるかによって、共働きの実現可能性は変わります。婚活で「正社員かどうか」だけを見ても、働き続けられる条件を見誤る可能性があります。

男性側にも同じ視点が必要です。共働きを望むなら、相手の収入を期待するだけでなく、自分の長時間労働をどう見直すか、育休や看護休暇を取れる職場か、急な保育園対応を分担できるかを説明する責任があります。共働き婚の成否は、二人の年収合計ではなく、時間と責任をどれだけ共有できるかで決まります。

地方での婚活では、さらに仕事の選択肢が論点になります。希望する職種が少ない地域へ移る場合、女性が正社員を維持できない可能性もあります。逆に都市部では、保育園、通勤時間、住宅費が負担になります。年収公開と同時に、居住地、転勤、リモートワーク、親族サポートの有無を話し合うことが、現実的な共働き設計につながります。

結婚前に確認したい家計とキャリアの対話項目

令和の婚活では、年収公開は自己アピールというより、将来設計の入口です。確認すべき項目は、現在の年収、雇用形態、貯蓄、借入、生活費の分担、育児期の働き方、転職や学び直しの計画、親への援助、住まいの希望です。これらを早い段階で話せる相手ほど、結婚後の不安を減らしやすくなります。

専業主婦を希望すること自体が悪いわけではありません。介護、育児、健康、地域事情によって、片働きが合理的な時期もあります。ただし、それを望むなら、期間、家計の成り立ち、再就職の可能性、年金や資産形成への影響を具体的に話し合う必要があります。結婚は「選ばれる条件」だけでなく、互いの人生を設計する実務です。

女性の年収は、隠すべき弱点ではなく、キャリアを積み上げてきた事実です。男性の収入も、女性の収入も、単独で相手を測る数字ではありません。二人でどのように働き、学び、支え合うかを説明する材料です。婚活で問われているのは、年収の高さそのものより、生活とキャリアを共同編集する力だといえます。

そのため、プロフィール作成では年収欄だけに頼らず、仕事への向き合い方を短く具体的に書くことが有効です。安定志向なのか、成長志向なのか、育児期に何を優先したいのかを明確にすると、同じ価値観の相手と出会いやすくなります。令和の婚活で選ばれるのは、収入を隠して無難に見せる人ではなく、将来の変化を一緒に設計できる人です。

参考資料:

小林 美咲

キャリア・教育

キャリア形成・教育改革・リスキリングなど、人と学びの接点を取材。変化する時代に求められる「働く力」を問い続ける。

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