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緑茶と缶コーヒー派が選ぶフレーバーティーの新市場、主役は中年男性

by 伊藤 大輝
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無糖化が変えたフレーバーティーの主戦場

フレーバーティーは長く、甘い果実味や華やかなパッケージで若い女性に訴求する飲料と見られてきました。ところが足元の売れ方を見ると、伸びているのは「香りを楽しみたい若年層」だけではありません。緑茶や缶コーヒーを日常的に買ってきた中年男性が、無糖や微糖のフレーバーティーに手を伸ばし始めています。

背景にあるのは、飲料市場の成熟です。矢野経済研究所によると、2024年度の国内飲料市場はメーカー出荷金額ベースで5兆2800億円、前年度比102.3%でした。ただし販売数量は前年度並みで、価格改定による金額成長の色合いが濃い市場です。量が大きく増えないなら、メーカーは既存カテゴリー内の奪い合いではなく、飲用シーンをずらして新しい接点を作る必要があります。

その有力な受け皿になっているのが、無糖化した紅茶と、果汁・柑橘・ハーブを組み合わせたフレーバーティーです。キリンビバレッジの「午後の紅茶 FRUITS & ICE TEA」は、2025年9月の発売から約4カ月で5000万本に達しました。同社は2025年10〜12月期の清涼飲料市場全体が購入規模で前年比約93%だった一方、フルーツティーカテゴリーは約135%に伸びたと説明しています。

この数字が示すのは、紅茶そのものの復権だけではありません。甘すぎる清涼飲料は避けたいが、水や緑茶だけでは物足りない。缶コーヒーの苦味やカフェイン感は重いが、午後に気分を切り替える飲料は欲しい。そうした隙間に、香りを機能として設計したフレーバーティーが入り込んでいます。

中年男性を引き寄せる味覚設計と容器戦略

甘さを抑えた香りの飲料化

フレーバーティーの変化は、単に香料を足した紅茶飲料という話ではありません。各社の新商品を追うと、味覚設計の中心が「甘いご褒美」から「後味の軽いリフレッシュ」へ移っています。ここが、缶コーヒーや緑茶を選んできた中年男性を取り込むうえで重要です。

キリンの「午後の紅茶 おいしい無糖」シリーズは、2025年3月のリニューアルで味覚とパッケージを刷新しました。紅茶飲料売上本数No.1ブランドを掲げる同社は、2024年の「午後の紅茶」ブランドが2年連続で販売数量5000万ケースを突破したと発表しています。新しい無糖シリーズでは、ダージリン茶葉を一部使い、香りのバランスとすっきりした後味を重視しました。

伊藤園も同じ方向を見ています。2025年6月発売の「TULLY’S &TEA Golden Leaf BLACK TEA」では、紅茶飲料市場でも無糖カテゴリーが伸びていることに加え、香りが特徴のお茶を求める人が増えていると説明しました。4種の茶葉をブレンドし、鹿児島紅茶葉を30%使った無糖アイスティーとして設計しています。

サントリーの「クラフトボス 世界のTEA」も、紅茶の枠を広げる代表例です。2025年秋のリニューアルでは、ディンブラ茶葉、ケニア茶葉、中国・武漢産ウーロン茶を組み合わせた「すっきり無糖」を展開しました。期間限定の「柚子ティーエード」では、紅茶と緑茶に柚子、オレンジ、はちみつを合わせています。香りは強いが飲み終わりは軽い、という設計思想です。

中年男性にとって、この「軽さ」は大きな意味を持ちます。甘い紅茶飲料は食事や仕事中に選びにくく、缶コーヒーは眠気覚ましにはよくても水分補給には濃く感じる場面があります。無糖または後味の軽いフレーバーティーは、嗜好品と止渇飲料の中間に置けます。香りで気分を切り替えながら、砂糖やミルクの重さを避けられる点が、従来の紅茶ユーザー以外にも届く理由です。

PETボトルが生んだ常飲シーン

味と同じくらい重要なのが容器です。フレーバーティーが伸びる条件は、カフェの一杯ではなく、オフィス、車内、昼食、帰宅後に繰り返し飲めることです。そのためには、再栓でき、容量を選べ、コンビニや自動販売機で買えるPETボトルが強い役割を持ちます。

アスマークの2024年調査では、普段から紅茶飲料を飲む20〜50代男女800人のうち、8割以上がペットボトルタイプの紅茶を購入していました。紅茶が飲みたくなる場面は「自宅にいる時」が約8割で最多です。紅茶は外出先だけの気分転換ではなく、常備・持ち帰り・ちょい飲みの飲料になっています。

キリンの無糖シリーズは、500ml、コンビニ限定600ml、自動販売機向け555ml、2L、ラベルレスケースなど、チャネル別に容量を細かく分けています。これは製造や物流の観点から見ると、単なるSKU拡張ではありません。購入場所ごとの飲用時間を想定し、職場で飲み切る人、自宅でストックする人、移動中に買う人を分けて捕まえる設計です。

ファミリーマートの「Afternoon Tea」監修シリーズも、フレーバーティーの裾野を広げています。2026年5月発表では、同シリーズが累計4億本を突破し、白桃香るルイボスティーを600ml、税込118円で展開しました。ノンカフェイン、無糖、白桃の香り、リサイクルPETという組み合わせは、甘い紅茶ではなく「手頃な香り付き無糖茶」として売り場に置けます。

この容器・容量・価格の組み合わせは、ものづくりの観点でも重要です。香りは開栓後に飛びやすく、紅茶は冷却時の濁りや渋みの制御が難しい素材です。大量生産では、茶葉抽出、香気成分、酸味、甘味、PETボトル越しの見え方を同時に安定させる必要があります。各社が「後味」「香り」「クリアさ」を繰り返し訴求するのは、フレーバーティーが感性商品であると同時に、抽出・充填・保存技術の競争領域でもあるからです。

緑茶・缶コーヒーから起きる需要シフト

緑茶ユーザーを動かす無糖の余白

フレーバーティーを考えるうえで、最初に比較すべき相手は既存の紅茶ではなく緑茶です。日本のPET飲料売り場では、緑茶、麦茶、ミネラルウォーター、コーヒーが日常飲料の大きな面を押さえています。紅茶は嗜好性が高い一方、食事に合わせにくい、甘い、若い女性向けというイメージを長く抱えてきました。

ただし茶系飲料の中でも、消費者は変化を求めています。矢野経済研究所は、2024年度の飲料市場でミネラルウォーターと茶系飲料が堅調に推移し、無糖・健康志向の定着と「濃い系」商品の拡大が茶系飲料の需要を支えたと分析しています。無糖茶の中でも、濃さや香りで差を出す動きが強まっているということです。

キリンの「生茶」リニューアルも象徴的です。2024年刷新後の生茶ブランドは年間販売数量が前年比112%となり、3000万ケースを突破しました。同社は無糖茶カテゴリー外からの新規顧客獲得や、20代から40代の支持拡大にも触れています。緑茶は成熟していますが、味覚やパッケージの刷新でまだユーザーを動かせるカテゴリーです。

この文脈で見ると、フレーバーティーは緑茶の代替ではなく、緑茶ユーザーのローテーション商品です。毎日緑茶を飲む人ほど、無糖であること、食事や仕事の邪魔をしないこと、口の中に甘さが残らないことを重視します。そこに柑橘、白桃、ルイボス、ウーロン茶ブレンドのような香りを加えれば、緑茶の安心感を保ったまま「少しだけ違う」選択肢になります。

サントリーが「柚子ティーエード」で紅茶と緑茶を組み合わせたことは、この境界の曖昧さをよく示しています。消費者は厳密に紅茶か緑茶かを選んでいるわけではありません。欲しいのは、甘すぎず、飲みやすく、気分が少し変わる茶系飲料です。中年男性が緑茶から流れるとすれば、その理由は緑茶への不満ではなく、同じ無糖圏内で気分転換の幅が増えたことにあります。

缶コーヒー常飲層の午後の選択肢

もう一つの流入元は缶コーヒーです。全日本コーヒー協会によると、日本の2025年のコーヒー消費量は39万7272トンで、前年比99.3%でした。国内でコーヒーは依然として巨大な嗜好飲料ですが、日常のすべての場面をコーヒーが担い続けるわけではありません。

缶コーヒーには、仕事中、運転中、休憩中に飲む男性的なイメージがあります。スチール缶リサイクル協会の調査ページでは、缶容器飲料の中でコーヒー飲料の存在感が大きく、男性の飲用率が女性より高いデータが示されています。一方で同協会の2024年調査ダイジェストは、コーヒー飲料でPETボトルのイメージが上昇し、スチール缶を逆転したとも説明しています。

つまり、コーヒー需要そのものは残りながら、容器と飲み方は変わっています。蓋が閉められるPETコーヒーは、缶コーヒーの一気飲み文化をほどきました。その延長線上で、無糖紅茶やフレーバーティーも「仕事中に少しずつ飲む」飲料として入りやすくなっています。

アスマーク調査は、この流れを補強します。普段から紅茶飲料を飲む人の6割以上が、コーヒー飲料の代わりに紅茶を飲むことがあると答えました。さらに、年代が上がるほどコーヒー代替として紅茶を選ぶ人が増える傾向も示されています。これは、紅茶が若い女性だけの嗜好品ではなく、コーヒーの重さを避けたい層の代替飲料になっていることを意味します。

ORICON NEWSの解説では、2022年度の清涼飲料水販売金額ベースでコーヒーが20%、茶系飲料が19.6%だったのに対し、紅茶は5.2%にとどまると紹介されています。紅茶は大きすぎないカテゴリーだからこそ、コーヒーから一部のシーンを取るだけでも伸びしろが生まれます。

ここで大事なのは、缶コーヒー離れを単純な「脱コーヒー」と見ないことです。朝の覚醒や短い休憩ではコーヒーが強いままです。変わっているのは、午後の水分補給、昼食後の口直し、会議前の気分転換といったシーンです。缶コーヒーを毎日買っていた中年男性が、週に数回だけ無糖レモンティーや香り付きルイボスに置き換える。その小さな行動変化が、フレーバーティー市場を押し上げます。

成長市場に残る技術・価格・棚割りの壁

フレーバーティーの成長には、いくつかの制約もあります。第一に、公開情報だけでは「最も楽しんでいる層」を断定しにくい点です。各社の出荷本数やカテゴリー成長率は確認できますが、性年代別の実購入者、購入頻度、リピート率は多くが非公開です。中年男性の存在感は、無糖紅茶の食中需要、コーヒー代替調査、缶コーヒー習慣から推論できますが、最終的にはID-POSや会員アプリの購買データで検証すべき論点です。

第二に、価格上昇への耐性です。矢野経済研究所は2025年度の飲料市場について、単価上昇により5兆3500億円を見込む一方、価格改定が需要抑制要因になる可能性を指摘しています。香りや茶葉にこだわるほど原価は上がりやすく、安さを重視する緑茶・水ユーザーとの競争も厳しくなります。

第三に、味の許容範囲です。フレーバーティーは香りが弱ければ印象に残らず、強すぎれば人工的に感じられます。無糖に寄せすぎると華やかさが薄れ、果汁感を強めすぎると甘い飲料に戻ります。紅茶ポリフェノール由来の渋み、柑橘の酸味、香気成分の揮発、PETボトル内での保存安定性をどう両立するかは、製造技術の差が出る領域です。

第四に、棚割りの問題です。キリンのフルーツティーは、果汁飲料の棚や自動販売機への導入で紅茶低関与層との接点を作ったと説明されています。これは有効ですが、置き場が果汁棚なのか紅茶棚なのか無糖茶棚なのかで、手に取る客層は変わります。中年男性を取り込むなら、華やかな紅茶棚だけでなく、弁当横、コーヒー横、無糖茶横での露出が必要です。

若い女性の需要が弱まったわけではありません。むしろフルーツティーでは大人の女性ユーザーの評価が強い商品もあります。重要なのは、既存の女性・若年層に加えて、緑茶や缶コーヒーの習慣を持つ男性が乗れる味と売り場を用意できるかです。フレーバーティーは、華やかな嗜好品から日常の工業製品へと重心を移している段階にあります。

メーカーが次に検証すべき購買データ

今後の焦点は、ヒット商品の出荷本数よりもリピート構造です。メーカーが見るべきなのは、性年代別の初回購入率、2回目購入率、購入時間帯、同時購入商品、直前まで買っていたカテゴリーです。緑茶から来たのか、缶コーヒーから来たのか、果汁飲料から来たのかで、次の商品設計は変わります。

中年男性を狙うなら、無糖、微香、食中、午後のリフレッシュ、600ml前後の飲み切りやすさが鍵になります。若年女性向けの華やかさだけを強めると、せっかく広がった新しい顧客を失いかねません。逆に、香りを抑えすぎれば緑茶との違いが消えます。

フレーバーティーの主役は、もはや「紅茶が好きな人」だけではありません。緑茶に飽きすぎず、コーヒーをやめきらず、それでも午後の一杯を少し軽くしたい人たちです。売り場でその層をどれだけ継続的に捕まえられるかが、次の飲料市場の成長余地を左右します。

参考資料:

伊
伊藤 大輝

テクノロジー・産業動向

製造業のDX・新素材開発からモビリティの未来まで、技術革新がもたらす産業構造の変化を現場視点で伝える。

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