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ランボルギーニが雪上で見せた驚きの走破性能とは

by 伊藤 大輝
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はじめに

スーパーカーといえば、晴天のサーキットや美しい海岸線を疾走する姿を思い浮かべる方が多いでしょう。しかしランボルギーニは、雪と氷に覆われた冬の北海道で最新モデルの実力を試すという大胆な試みを行いました。2026年2月に開催された「テメラリオ・BULL RUN at 北海道」では、920馬力のスーパースポーツ「テメラリオ」と800馬力のスーパーSUV「ウルスSE」が、雪上という過酷な条件下でその真価を発揮しています。

両モデルに共通するのは、ランボルギーニが「HPEV(ハイパフォーマンス・エレクトリファイド・ビークル)」と呼ぶプラグインハイブリッド技術です。電動化によって得られたのは、単なる燃費改善ではなく、低摩擦路面での圧倒的な制御性能でした。本記事では、両モデルの雪上性能と最新PHEV技術の実力を詳しく解説します。

テメラリオの雪上性能を支える3モーターPHEV

920馬力を生み出すパワートレインの構造

テメラリオは、ウラカンの後継モデルとして2024年に発表されたランボルギーニHPEVの第2弾です。ランボルギーニが独自開発した排気量4.0リッターのV型8気筒ツインターボエンジンは、単体で800馬力を発生し、レッドゾーンは1万回転に達します。ランボルギーニとしては初めて1万回転超の回転域を実現したエンジンとされています。

このエンジンに加え、フロントに2基、リアに1基の計3基の電気モーターを搭載しています。リアモーターは150馬力、フロントの2基は合計で190馬力を出力し、システム総合で920馬力・730Nmという圧倒的なスペックを実現しました。0-100km/h加速は2.7秒、最高速度は343km/hに達します。

電動AWDがもたらす雪道での安定性

テメラリオの雪上性能の鍵を握るのが、3モーターによる電動AWDシステムです。通常の機械式AWDとは異なり、電気モーターによってフロントとリアのトルク配分をリアルタイムで制御します。ブレーキを使ってトルクを制御する従来方式ではなく、モーターの出力そのものを統合して四輪の駆動力を最適化する仕組みです。

北海道での試乗では、新千歳空港近くの「ポルトム・インターナショナル」を起点に、支笏湖や室蘭方面を往復する約200kmのコースが設定されました。雪に覆われた一般道と高速道路を組み合わせたルートで、テメラリオは低摩擦路面でも高い安定性を発揮したと報告されています。複数のメディアが、3モーター式AWDの素性が最も端的に表れるのが雪道のような低μ路であると評価しています。

13種類の走行モードによる柔軟な対応

テメラリオには、チッタ(市街地)、ストラーダ(一般道)、スポーツ、コルサ(サーキット)、コルサESCオフの5つの基本走行モードが用意されています。さらに、これらをエネルギーモードと組み合わせることで、最大13通りのドライビングエクスペリエンスを選択できます。

ストラーダモードでは、フロントのe-アクスルがオンデマンドでAWDを提供し、トルクベクタリングとアクティブエアロダイナミクスが高速走行時の安定性を確保します。雪道ではこのモードが特に有効に機能し、920馬力という途方もないパワーを安全に路面へ伝達できるとされています。

ウルスSEの雪上対応力と専用モード

スーパーSUVのPHEVシステム

ウルスSEは、ランボルギーニ初のプラグインハイブリッドSUVです。4.0リッターV8ツインターボエンジン(620馬力)に192馬力のモーターを組み合わせ、システム総合で800馬力・950Nmを発生します。0-100km/h加速は3.4秒、最高速度は312km/hと、SUVとは思えない動力性能を誇ります。

25.9kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、EVモードでの航続距離は60km以上を確保しています。バッテリーはラゲッジの床下と電子制御リアデファレンシャルの間に配置され、低重心化に貢献しています。

10種類の走行モードと「ネーヴェ」モード

ウルスSEの大きな特徴が、10種類にも及ぶ走行モードです。オンロード向けのストラーダ、スポーツ、コルサに加え、EVドライブ、ハイブリッド、パフォーマンス、リチャージという電動関連モードを装備しています。

特に注目すべきは、オフロード向けのテラ(ダート)、サッビア(砂地)、そしてネーヴェ(雪)という3つの専用モードです。ネーヴェモードは、雪上・氷上走行に最適化されたトラクション制御とトルク配分を提供します。電動トルクベクタリングシステムにより、フロントとリアのアクスル間で駆動トルクを可変かつ連続的に配分し、滑りやすい路面でも高い安定性を実現しています。

SUVならではの実用性と走破性

ウルスSEは、テメラリオと比較して車高が高く、悪路走破性に優れています。オフロードでのドリフト走行にも対応できる性能を持ち、PHEVシステムの導入によってむしろ走行性能が向上したと評価されています。雪道においては、SUVとしての基本的な走破性に加え、電動化による緻密なトルク制御が組み合わさることで、従来モデルを上回る安心感をドライバーに提供します。

ランボルギーニのPHEV戦略と雪上テストの意義

電動化がスーパーカーにもたらす新しい価値

ランボルギーニがフラグシップの「レヴエルト」に続き、テメラリオとウルスSEという主力モデルをすべてPHEV化した背景には、環境規制への対応だけでなく、電動化による走行性能の質的向上があります。モーターによる瞬時のトルク制御は、エンジンだけでは実現できない精密な駆動力配分を可能にしました。

雪上という過酷な環境でのテストは、この新技術の実力を最も明確に示す場といえます。路面のグリップが著しく低下する条件下では、わずかなトルク制御の遅れが挙動の乱れに直結します。電動モーターによるミリ秒単位の制御が、920馬力や800馬力という大出力を安全に路面へ伝える上で不可欠な役割を果たしています。

日本市場への意気込み

テメラリオの日本での販売価格は約4,200万円、ウルスSEは約3,150万円からとされています。北海道での雪上試乗イベント開催は、日本市場を重視するランボルギーニの姿勢の表れでもあります。四季のある日本において、スーパーカーが冬場でも安心して乗れることを実証する意味は大きいといえるでしょう。

注意点・今後の展望

スーパーカーの雪上性能が向上したとはいえ、いくつかの注意点があります。まず、テメラリオにはウルスSEのようなネーヴェ(雪)専用モードは設定されていません。13種類の走行モードはエネルギーモードとの組み合わせであり、雪道に特化した制御ではない点は理解しておく必要があります。

また、PHEV化による車両重量の増加は避けられません。テメラリオのバッテリー容量は3.8kWhと比較的小さく抑えられていますが、3基のモーターとバッテリーの追加による重量増は、雪道でのブレーキング時にマイナスに作用する可能性もあります。

今後の展望としては、ランボルギーニに限らず、スーパーカーメーカー各社がPHEVや完全電動モデルで冬季テストを実施する動きが加速するとみられます。電動化技術の進化により、スーパーカーの使用領域がサーキットや晴天時のドライブから、四季を通じた日常使用へと広がっていく可能性を秘めています。

まとめ

ランボルギーニのテメラリオとウルスSEは、雪上という過酷な環境で最新PHEV技術の実力を証明しました。テメラリオの3モーター式電動AWDは、920馬力を雪道でも安定して伝達する制御能力を示し、ウルスSEはネーヴェモードを含む10種類の走行モードで多様な路面条件に対応します。

電動化はスーパーカーの走行性能を単に速くするだけでなく、あらゆる路面条件での安全性と制御性を飛躍的に向上させています。冬の北海道での試乗イベントは、スーパーカーの新たな可能性を示す象徴的な取り組みといえるでしょう。スーパーカーの購入を検討されている方は、PHEV技術がもたらす冬季走行の安心感にも注目してみてはいかがでしょうか。

参考資料:

伊藤 大輝

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