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新幹線・特急・私鉄のトイレ事情を徹底比較

by 伊藤 大輝
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はじめに

大型連休や長期休暇の旅行シーズン、新幹線や特急列車での長距離移動で意外と気になるのが車内トイレの存在です。乗車時間が数時間に及ぶこともある長距離列車では、トイレがどの車両にあるのか、いくつ設置されているのかは切実な問題といえます。

実は、新幹線とJR在来線特急、そして私鉄特急では、トイレの設置基準や充実度に大きな開きがあります。「2両に1か所」がスタンダードな路線もあれば、8両編成に2か所しかない列車も存在します。本記事では、全国の主要な新幹線・特急列車を対象に、トイレの配置パターンと設備の充実度を比較調査しました。座席選びの参考にしていただけるはずです。

新幹線のトイレ配置──「奇数号車の法則」

東海道・山陽新幹線は16両中8両にトイレ完備

国内で最も利用者が多い東海道・山陽新幹線のN700系・N700S系(16両編成)は、奇数号車にトイレが設置されるという明快なルールを採用しています。具体的には1・3・5・7・9・11・13・15号車の計8両にトイレがあり、各車両に男女兼用個室と女性専用個室の2基、加えて男性用小便器1基の構成です。

つまり「2両に1両」の割合でトイレ付き車両が配置されており、どの座席に座っても1両分移動すればトイレにたどり着ける設計になっています。さらに11号車には車椅子対応の多目的トイレが設置されており、バリアフリー面でも配慮がなされています。

山陽新幹線区間で運行される8両編成の場合でも、奇数号車(1・3・5・7号車)にトイレが配置され、2両に1両の原則は維持されています。

北陸・上越新幹線も2両に1か所が基本

E7系・W7系で運行される北陸新幹線「かがやき」「はくたか」や上越新幹線「とき」も12両編成で、奇数号車の金沢・新潟寄り端部にトイレが設置されています。各トイレは洋式2基(うち1基は女性専用)と男性用小便器1基、洗面台2基(うち1基は女性専用)という構成です。

7号車と11号車には車椅子対応の多機能トイレが設けられ、7号車には多機能室も併設されています。なお、11号車・12号車のトイレはグリーン車またはグランクラスの利用者向けとなっているため、普通車利用の場合は注意が必要です。

東北新幹線は編成パターンで配置が変わる

E5系「はやぶさ」は10両編成で、1・3・5・7・9号車にトイレが配置されています。5号車と9号車には車椅子対応の大型トイレが設けられています。秋田新幹線「こまち」のE6系と併結して17両編成になる場合もありますが、それぞれの編成でトイレ配置の基本原則は変わりません。

JR在来線特急のトイレ事情

充実度が高いE353系「あずさ」

中央本線の特急「あずさ」「かいじ」に使用されるE353系は、トイレ配置の充実度が高い車両のひとつです。基本編成の9両では4・6・8・9・11号車にトイレが設置されており、12両編成(付属編成を含む)ではさらに増えます。2号車と9号車にはバリアフリー対応の大型トイレが備わっています。

新宿から松本まで約2時間40分の長丁場ですが、ほぼ2両に1か所のペースでトイレがあるため安心して乗車できます。

E657系「ひたち」「ときわ」も手厚い配置

常磐線の特急「ひたち」「ときわ」で使用されるE657系は10両編成で、奇数号車(1・3・5・7・9号車)にトイレが設置されています。5号車には車椅子対応の多機能トイレがあり、品川・東京から仙台まで最大約4時間半の長距離運行にもしっかり対応する配置です。

JR西日本「サンダーバード」のコンパクトな配置

関西と北陸を結ぶ特急「サンダーバード」は、北陸新幹線の敦賀延伸に伴い運行区間が大阪〜敦賀に短縮されました。681系・683系の9両編成で運行され、女性専用トイレ、男性専用トイレ、多目的トイレが配備されています。乗車時間が短くなったとはいえ、トイレ設備は引き続き維持されています。

私鉄特急──路線によって差が大きい

近鉄特急は「2両に1か所」を堅持

大阪〜名古屋・伊勢志摩を結ぶ近鉄特急は、私鉄特急の中でもトイレ配置が充実しています。近鉄の特急車両では、1号車と2号車の間、3号車と4号車の間というように、2両おきにトイレが設置されるのが基本パターンです。

2020年にデビューしたフラッグシップ車両「ひのとり」は、6両編成の場合4号車、8両編成の場合6号車に多目的トイレと男性用小便器が集約されています。大阪難波〜近鉄名古屋間の約2時間の乗車に対応する設計です。アーバンライナーも同様に複数箇所にトイレが設けられています。

近鉄は大阪線・名古屋線系統で片道100kmを超える伊勢方面への運行があるため、急行列車のクロスシート車にもトイレを設置するなど、長距離利用者への配慮が行き届いています。

東武スペーシアXは6両編成に2か所

東京から日光・鬼怒川温泉へ向かう東武鉄道の新型特急「スペーシアX」は、6両編成に2か所のトイレを配置しています。具体的には2号車に共用トイレと男性用トイレ、5号車にバリアフリートイレと共用トイレ・男性用トイレが設けられています。

浅草から東武日光まで約1時間50分の乗車時間を考えると、3両に1か所のペースは十分な水準といえます。コックピットラウンジやカフェカウンターなど観光列車としての設備を充実させつつ、トイレ配置にも配慮したバランスのよい設計です。

小田急ロマンスカーGSEは7両編成に3か所

箱根方面への観光需要を担う小田急ロマンスカーGSE(70000形)は、7両編成に対して2・4・6号車の3か所にトイレが設置されています。4号車には「ゆったりトイレ」と呼ばれる車椅子対応の大型トイレがあり、ウォシュレットやおむつ替え台を完備しています。

約2両に1か所の割合であり、JR新幹線に匹敵する配置水準です。展望席で人気の同車両ですが、トイレ面でも安心感があります。

西武ラビューは8両編成に2か所

西武鉄道の特急「ラビュー」(001系)は、建築家・妹島和世氏がデザイン監修を手がけた斬新な外観で知られる8両編成の特急車両です。トイレは1号車と5号車の2か所に設置されており、1号車のトイレは車椅子対応の多機能トイレとなっています。

池袋から西武秩父まで約77分の乗車時間に対して、4両に1か所の配置はやや少ない印象です。8号車付近に座った場合、最寄りの5号車まで3両分移動する必要があります。乗車前にトイレの位置を確認しておくことをおすすめします。

進化する車内トイレの技術と設備

垂れ流しから真空式へ──150年の技術革新

日本の鉄道トイレは150年以上の歴史の中で劇的な進化を遂げてきました。明治時代の鉄道開業当初はトイレ自体がなく、その後導入された初期のトイレは汚物を線路上にそのまま排出する「開放式」でした。

1960年代に入ると循環式トイレが登場します。洗浄水に脱臭剤・消毒液を混ぜておき、フィルターで汚物と洗浄水を分離して再利用するという仕組みです。新幹線では1969年度末までに全車両が循環式に移行しました。

現在主流となっている「真空式」トイレは、1992年にJR九州の特急「つばめ」で日本初導入されました。排水管を真空状態にして汚物を吸引する方式で、1回の洗浄に必要な水量はわずか約200ミリリットルです。1996年には東海道・山陽新幹線700系に採用され、以降は日本の鉄道トイレの標準となっています。

温水洗浄便座とバリアフリー対応の拡大

設備面でも進化は著しいです。東海道新幹線では、2014年以降に製造されたN700A系から温水洗浄便座(ウォシュレット)の設置が始まりました。最新のN700S系では全洋式トイレにウォシュレットが標準装備されています。

バリアフリー対応も大きく前進しています。2000年の交通バリアフリー法制定を契機に、車椅子のまま入って方向転換できる広さの多目的トイレが新型車両には必ず設置されるようになりました。オストメイト対応設備、ベビーベッド、ベビーチェアなどを備えた多機能トイレも標準的な装備となっています。

なお、2021年に国土交通省は「多目的トイレ」の名称を「バリアフリートイレ」に変更するよう通達を行い、本来の利用者が使いやすい環境づくりを進めています。

注意点・今後の展望

乗車前に知っておきたいポイント

長距離列車でトイレに困らないためには、いくつかのポイントを押さえておくことが大切です。まず、トイレ付き車両の近くの座席を選ぶという基本戦略があります。多くの列車では奇数号車にトイレがあるため、偶数号車でも奇数号車寄りの席を選べば移動距離を短縮できます。

また、大型連休などの混雑時期はトイレの利用者も増えます。特に新幹線の多目的トイレは個室が広いため長時間利用する方もおり、混雑しやすい傾向があります。時間に余裕を持って利用するのが賢明です。

バリアフリー法改正と今後の動向

鉄道車両のバリアフリー化は今後さらに加速する見通しです。車椅子スペースの拡充やトイレのユニバーサルデザイン化が進むとともに、より清潔で快適な車内トイレ環境が整備されていくでしょう。

観光列車や豪華列車では、トイレ設備自体を「おもてなし」の一部と位置づける動きもあります。JR九州の「36ぷらす3」をはじめとするD&S列車(デザイン&ストーリー列車)では、内装デザインに統一感を持たせた高品質なトイレ空間が提供されています。

まとめ

新幹線から私鉄特急まで、トイレの設置基準を比較すると「2両に1か所」が多数派であることがわかりました。東海道・山陽新幹線や北陸新幹線、E353系「あずさ」、近鉄特急などは手厚い配置を維持しています。一方で、西武ラビューのように8両編成に2か所という列車も存在し、路線や車両によって充実度には差があります。

技術面では真空式トイレや温水洗浄便座の普及、バリアフリー対応の拡充など、快適性は確実に向上しています。大型連休の旅行を計画する際は、乗車する列車のトイレ配置を事前に確認し、可能であればトイレ付き車両の近くの座席を選ぶのがおすすめです。

参考資料:

伊藤 大輝

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