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高市政権は秋までか 永田町で茂木首班構想が浮上するその背景と条件

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はじめに

高市早苗政権は、直近の世論調査だけを見ればなお強い政権です。JNN調査では2026年2月に69.9%、3月に71.8%、4月に71.5%と、内閣支持率は70%前後で高止まりしています。普通に考えれば、こうした数字のもとで「次の首相」論が広がるのは不自然にも見えます。

それでも永田町で茂木敏充氏の名が浮上しやすいのは、支持率と政権の安定が同じではないからです。高市政権は自民党と日本維新の会の連立を土台にしていますが、参議院ではなお過半数に届いていません。しかも2026年度の暫定予算は3月30日に参院本会議で可決されたものの、これは裏を返せば、通常の政権運営が常に交渉と調整を必要とする構造だということでもあります。本記事では、公開情報だけを使いながら、高市政権の実力と限界、そしてなぜ茂木氏が「首班候補」として語られるのかを整理します。

高支持率でも残る政権運営の不安定性

世論の追い風と高市政権の強み

まず確認しておきたいのは、高市政権が直ちに行き詰まっているわけではないことです。JNN調査では2月の69.9%から3月71.8%、4月71.5%と推移しており、2月の落ち込みからは持ち直した形です。4月調査の不支持率も23.7%にとどまっており、世論レベルでは大きな危機局面とは言いにくい状況です。

政策面でも、高市首相は2026年2月20日の施政方針演説で、自民党の政権公約と日本維新の会との「連立政権合意書」を実現すると明言しました。これは単なる理念表明ではなく、政権の推進力を連立の実行力で示そうとする姿勢です。2025年10月の連立合意でも、物価高対策や税制、政治改革、安全保障など幅広い項目で協力する枠組みが確認されており、高市政権は発足時点から「単独色の強い政権」ではなく、連立で前に進める政権として設計されてきました。

このため、表面だけを見ると「高支持率」「政策の前進」「連立の明文化」という三つの追い風がそろっています。茂木首班構想が語られるとしても、それは高市政権がただちに崩れるからではなく、別のレベルで不安定さを抱えているからだと考えるべきです。

参院過半数割れと暫定予算成立の重み

その不安定さが最も見えやすいのが、参議院の議席構成です。参院の会派別所属議員数一覧によると、2026年1月23日時点で自民党・無所属の会は101議席、日本維新の会は19議席です。連立与党として単純合算すると120議席となり、総定数248の過半数125に5議席届きません。ここは重要で、衆院で政権を握っていても、参院で法案や予算を安定的に通すには、毎回ほかの会派や無所属議員を含めた調整が必要になるということです。これは公開資料から導ける事実ベースの推計です。

実際、3月30日の参院本会議では2026年度の一般会計・特別会計・政府関係機関の各暫定予算が、賛成230、反対11で可決されました。可決自体は政権にとって前向きな材料ですが、同時に本予算ではなく「暫定予算」である点を見落とせません。政権が通常どおりの年度運営に入る前に、まずは財政空白を回避するための幅広い合意を優先しなければならなかったということです。

高市首相自身の施政方針演説でも、維新との合意に加え「政策実現に御協力をいただける野党の皆様とも、是非、力を合わせて取り組んでいきたい」と述べています。これは包摂的な姿勢の表明ですが、別の言い方をすれば、それだけ政権運営が固定多数では完結しないという現実の反映でもあります。永田町で後継論が消えないのは、支持率よりも、この参院構造のほうが政局を左右しやすいからです。

なぜ茂木氏の名が浮上しやすいのか

経済と外交を担える実務型カード

では、なぜ数ある政治家の中で茂木敏充氏なのか。第一に、現在の役職と経歴が「危機管理型のつなぎ役」や「実務型の首班候補」として理解されやすいからです。自民党の議員プロフィールでは、茂木氏の現在の主な役職は外務大臣とされ、過去には党幹事長、政務調査会長、経済再生担当相、経済産業相などを歴任しています。党運営、経済政策、外交の三つをまたいで経験している人物は自民党内でも限られます。

しかも茂木氏は、2026年2月20日の外交演説で「高市内閣の掲げる『責任ある日本外交』」を推進すると明確に位置付けつつ、日米同盟の強化、経済安全保障、対中対応、グローバルサウス連携まで幅広い論点を扱っています。高市首相が掲げる保守色や積極財政路線とはやや異なる語り口であっても、政権の継続性を保ちながら対外関係を管理できる人物として映りやすいわけです。

この種の「実務型イメージ」は、人気投票よりも、政権が難局に入った場面で効いてきます。支持率が高くても、参院での法案処理や外交日程、経済対策の調整が詰まったとき、党内では理念型のリーダーより、交渉型のリーダーを求める声が出やすくなります。茂木氏の名前が消えない背景には、この役割期待があります。

連立拡張と党内再編の受け皿期待

第二に、茂木氏はもともと「連立の枠組みを広げる」「結果を出す」という自己像を前面に出してきた政治家です。2025年9月の自民党総裁選での所見発表演説要旨でも、茂木氏は自らの強みを「経済と外交」と説明し、政権基盤を固めるために政策一致する政党との連立の枠組みを広げる考えを示していました。この主張は、2026年春の時点で見ると、かなり現実味を持って響きます。

というのも、高市政権が参院で過半数を持たない以上、今後もその都度、法案ごとの協力相手を探す必要があるからです。こうした局面では、理念の明確さよりも、党内外で落としどころを作れるかどうかが重視されます。茂木氏は党幹事長経験者であり、しかも現在は外相として政権の中枢にいるため、首相交代が起きても「政権の断絶」より「調整能力の補強」と受け止められやすい位置にいます。

永田町で言う「首班構想」は、必ずしも本人の人気や世論の圧倒的後押しだけで決まるものではありません。むしろ、政権がどこでつまずく可能性があり、そのとき誰なら与党内外が最も受け入れやすいかという計算で動きます。その意味で茂木氏は、高市政権が続く場合の重要閣僚であると同時に、もし交代論が出た場合の受け皿としても置きやすい存在です。

注意点・展望

ここで注意したいのは、「高市氏は秋まで」という見方を、そのまま制度上の既定路線と受け取らないことです。自民党党則では総裁の任期は3年ですが、任期中に総裁が欠けた場合に選ばれた後任総裁の任期は「前任者の残任期」と定められています。さらに、石破茂氏は2024年9月27日の任期満了に伴う総裁選で選出され、2025年9月には石破氏の後任を決める総裁選が「党則第6条2項」に基づく欠員時の手続きで行われたことも党の発表で確認できます。したがって、少なくとも党則上、「今秋に自動的に高市体制が終わる」とまでは言えません。

つまり、今後の焦点は任期ではなく政治判断です。第一に、本予算や重要法案をどこまで安定して成立させられるか。第二に、維新との連立が単なる政策協力を超えて政権基盤として機能し続けるか。第三に、高市首相が高支持率を保ったまま、党内の不安や人事不満を抑え込めるか。この三点が崩れたとき、茂木氏のような実務型カードは一気に現実味を帯びます。逆にいえば、これらが維持される限り、「茂木首班構想」はあくまで備えのシナリオにとどまる可能性が高いです。

まとめ

高市政権をめぐる情勢は、支持率だけ見れば安定しています。JNN調査で70%前後の支持を維持し、連立合意も明文化され、首相自身も政策実行への意思を繰り返し示しています。表向きには、すぐに後継論が必要な政権には見えません。

それでも茂木首班構想が語られるのは、参院過半数割れという制度的な弱さが残っているからです。暫定予算の成立は危機回避に成功した証拠である一方、安定多数に基づく通常運転とは違うことも示しました。茂木氏は外相、元幹事長、元政調会長として、経済と外交、党内調整をまたげる数少ない人材です。今後の政局を読むうえでは、「高市氏の人気」だけでなく、「参院で何をどう通せるか」を見ることが、茂木待望論の真偽を見分ける最短ルートになります。

参考資料:

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