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コンサル一強に変調、東大・京大生が選ぶ次世代の人気業界を読む

by 小林 美咲
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コンサル一強の終焉より選択軸の分散

東大・京大生のコンサル人気は、突然終わったわけではありません。2028年卒向け春期速報でも、コンサル・シンクタンクは上位10社のうち6社、上位50社のうち19社を占めました。一方、インフラ・交通、総合商社、不動産・建設へ関心が広がる動きも確認できます。

変わり始めたのは、コンサルという業界の人気以上に「最初の会社で何を得るか」という判断基準です。銀行や広告代理店からコンサルへ人気が移った過去の再現ではなく、安定した事業基盤、専門性、デジタル技術、若手の裁量を同時に求める分散型の企業選びが始まっています。

新卒プレミアムを支えた成長装置の変質

汎用スキルと転職可能性を買う合理性

「新卒プレミアム」とは、実務経験がなくても潜在能力を基準に採用され、まとまった研修や同期集団、幅広い仕事への入口を得られる日本特有の機会です。経験者採用では実績を求められる企業にも、新卒なら挑戦できます。この希少な機会を、どの会社に投じるかが初期キャリアを左右します。

コンサルティング会社は、その投資先として合理的でした。論点整理、データ分析、資料作成、経営層への説明など、業界を越えて通用しやすい仕事を若いうちから経験できます。短期間で複数業界を見ることができ、転職市場で説明しやすい職歴も得られるため、進路を決め切れない優秀層にとって「選択肢を先送りしながら市場価値を高める場所」になったのです。

選考が早く、ケース面接など対策方法が共有されやすい点も人気を支えました。大学の先輩が受け、後輩が同じ準備をする循環が生まれると、コンサルは企業群であると同時に、難関大学の学生にとって就活の標準コースになります。2027年卒の東大・京大生を対象にしたワンキャリア調査では、上位3社をコンサル・シンクタンクが占めました。

ただし、汎用スキルには裏面もあります。課題を整理して提案する能力が高まっても、商品をつくる、顧客を獲得する、工場やシステムを動かす、投資結果に責任を持つといった事業運営の経験は、配属先によって得にくい場合があります。転職可能性を高めるつもりが、特定領域の経験を積まないまま数年が過ぎるリスクです。

生成AIが細らせる若手の練習仕事

生成AIは、コンサルの価値をなくすのではなく、若手が仕事を覚える過程を変えます。BCGのコンサルタント758人が参加した実験では、AIを使った参加者は対象業務を平均25.1%速く終え、完了したタスクも12.2%多くなりました。一方、AIの能力範囲を外れた複雑な課題では、正答する確率がAIを使わない場合より19%低下しました。

調査、要約、分析のたたき台、資料構成は効率化できます。しかし、これらは従来、若手が情報の確かさや議論の組み立て方を学ぶ練習仕事でもありました。作業時間が短くなるほど、AIの誤りを見抜く業界知識、顧客との対話、現場で実行する能力を早期に求められます。「入れば鍛えられる」という自動的な成長モデルは成立しにくくなるでしょう。

もっとも、AIを理由にコンサル需要の消滅を予測するのは早計です。2026年8月のリクルートエージェントのデータでは、コンサルを含む「学術研究、専門・技術サービス業」の新規求人数の12カ月移動平均は前年同月比36.8%増でした。顧客企業がDXやAI導入を進めるほど、実装を支援する専門人材への需要も生まれます。

終わりつつあるのはコンサル採用ではなく、一般知識と長時間労働だけで価値を出す若手モデルです。今後はAIを使えることに加え、産業知識、データ、技術、組織変革のいずれかに軸を持つ人材が有利になります。

次の人気をつくる「攻めの安定」

メーカー・インフラへの評価回帰

次の人気先を一業界に絞るなら、実態を見誤ります。注目すべき共通項は、強い事業基盤を持ちながら、若手が変革に参加できる「攻めの安定」です。2027年卒の東大・京大生を対象にした春期調査では、上位20社に入ったメーカーが前年同期の4社から6社へ増え、メーカー志望者も約1.3倍になりました。

2028年卒向け春期速報でも、上位50社に入ったインフラ・交通企業は前年の2社から4社へ増えました。総合商社や不動産会社にも順位を上げた企業があります。コンサルから銀行や広告代理店へ単純に時計を戻すのではなく、メーカー、交通、商社、不動産など「自ら資産と事業を持つ会社」へ視野が広がっているのです。

全国の学生を対象とするマイナビの2027年卒調査でも、企業選択で「安定している会社」を挙げた割合が55.4%で最多でした。「給料の良い会社」は26.6%となり、「自分のやりたい仕事ができる会社」の25.5%を上回っています。一方、就職観では「楽しく働きたい」が40.2%で最多です。高収入だけでなく、持続可能な働き方を含む総合的な安定が求められています。

初任給の差も縮まりました。企業向け調査では、2027年卒採用で初任給を引き上げる予定の企業が55.4%に達しています。コンサルだけが高待遇を提示できる状況ではなくなり、事業会社でも処遇、専門職採用、若手登用を組み合わせて人材を獲得する競争が進んでいます。

業界名より強い「事業会社×デジタル」

人気の受け皿として最も裾野が広いのは、IT企業だけではなく、各産業のデジタル職です。2027年卒の志望業界調査では、選考を受ける予定の業界で「ソフトウエア・情報処理・ネット関連」が15.8%で首位でした。IPAの調査では、日本企業の8割超がDX推進人材の量的不足を訴えています。

ここから浮かぶ次世代の人気領域は、「事業会社×デジタル」の組み合わせです。具体的には、メーカーのAI・データ活用、金融のデジタルサービス、商社の事業開発、交通・エネルギーの需給最適化、不動産のスマートシティー関連などです。顧客への提案だけでなく、自社の意思決定、実装、運用、改善まで経験できる点に魅力があります。

経済産業省も、生成AIで必要な能力が速く変わるなか、学歴や在籍企業だけでなく保有スキルを基準に人材を育成・評価する方向を示しています。世界経済フォーラムの企業調査でも、AIとビッグデータに加え、分析的思考、創造性、柔軟性、リーダーシップの重要性が指摘されました。

つまり、次の勝ち筋は「コンサルか事業会社か」という二者択一ではありません。事業の現場を持ち、デジタル技術を使い、社内外の人を動かせる環境かどうかです。企業名より、配属職種と任される工程を具体的に確認する必要があります。

人気ランキングを読む際の三つの盲点

第一の盲点は、人気ランキングが入社実績ではないことです。ワンキャリアの調査は企業ページの「お気に入り数」が基礎であり、応募、内定、入社とは異なります。東京大学新聞が学部・研究科に確認した2025年度の就職実績では、学部生でベイカレント、大学院生でアクセンチュアが首位でした。コンサル離れを断定できる状況ではありません。

第二は、調査対象と時期の違いです。東大・京大生に限った調査と全国調査では順位が変わり、夏のインターン段階と本選考期でも関心先は動きます。求人情報を早く公開した企業ほど順位を上げやすいため、順位変動のすべてを価値観の変化とは解釈できません。

第三は、人気企業への入社をキャリアの成功と同一視する危険です。厚生労働省によると、2022年3月卒の大卒就職者のうち33.8%が3年以内に最初の勤務先を離れました。離職には前向きな転職も含まれますが、企業ブランドだけでは仕事との適合を保証できないことが分かります。

新卒カードで確認すべき四つの条件

新卒で選ぶべきなのは、ランキング上位の業界ではなく、自分の能力が蓄積される環境です。選考やOB・OG訪問では、次の四条件を確認すると判断しやすくなります。

  • 入社3年後に、社外でも説明できる専門性が残るか
  • 調査や提案だけでなく、実装と結果検証まで担当できるか
  • AIで定型業務が減った後も、若手を育てる仕組みがあるか
  • 給与、労働時間、勤務地を含めて学びを継続できるか

コンサルは今後も有力な選択肢です。ただし「優秀層が行くから」という理由だけでは、新卒プレミアムを託す根拠として不十分です。コンサル、メーカー、IT、インフラを同じ物差しで比較し、職種、育成、実装責任の三点を確かめることが、変化の速い時代の堅実なキャリア設計になります。

参考資料:

小
小林 美咲

キャリア・教育

キャリア形成・教育改革・リスキリングなど、人と学びの接点を取材。変化する時代に求められる「働く力」を問い続ける。

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