くせ毛を活かすCurly Me、27万個ヒットと急成長の核心
27万個が映す「くせ毛を活かす」需要の顕在化
くせ毛特化型ブランド「Curly Me(カーリーミー)」が、シリーズ累計販売数27万個、年商2.5億円を超える規模へ成長しました。2022年のスタートから数年で築いたこの実績は、単なる美容商品のヒットにとどまりません。「くせ毛は伸ばして抑えるもの」という前提を問い直し、地毛のカールを楽しむ市場を日本で可視化した点に意味があります。
矢野経済研究所によると、2024年度の国内ヘアケア市場は、毛髪業やヘアケア剤など4分野の合計で前年度比2.1%増の5367億円でした。巨大市場の中でCurly Meが見つけたのは、商品が少ないだけでなく、悩みを表現する言葉すら十分に共有されていなかった領域です。
本稿では、創業者のカーリーガールリン氏が当事者としての経験をどのように商品と事業へ変えたのかを分析します。さらに、くせ毛の構造や安全なケア、急成長するブランドが今後乗り越えるべき課題まで解説します。
当事者発信を商品と市場へ変えた成長設計
コンプレックスを課題発見へ変えた原体験
リン氏は日本で生まれ、カナダのトロントで育ちました。幼い頃からくせ毛を気にし、髪をまっすぐに整える生活を続けてきたと、複数のインタビューで明かしています。テレビや雑誌に登場する「美しい髪」が直毛に偏り、自分と似た髪を肯定的に見せる表現が少なかったことも、コンプレックスを深める要因でした。
転機は、くせ毛を矯正せず、本来のカールを整えるカーリーガールメソッドとの出会いです。リン氏は2019年ごろから地毛を活かすようになり、2020年には日本語でケア方法を伝えるSNS発信を始めました。2022年7月にはCurly Meを立ち上げ、勤務先の電通で仕事を続けながら商品開発と販売を進めました。
ここで重要なのは、縮毛矯正を否定する運動にしなかったことです。ストレートにする自由を残しつつ、従来は見つけにくかった「カールを活かす」という別の選択肢を提示しました。この姿勢は、直毛かくせ毛かを二者択一にせず、その日の気分や生活に合わせて髪型を選びたい人にも受け入れられやすい設計です。
全国の20~60代女性1000人を対象とした調査では、88%が髪に何らかの悩みを抱え、悩みのある880人のうち36.5%が「くせ毛・うねり」を挙げています。一方、ホットペッパービューティーアカデミーの2022年調査では、15~19歳女性の縮毛矯正利用率が24.6%に達しました。直毛に整えたい需要が根強いからこそ、別の選択肢を求める人も市場から見えにくい状態にあったと考えられます。
広告費よりコミュニティーを選んだ販路構築
Curly Meの成長を支えたのは、完成した商品を一方的に宣伝する方法ではありません。リン氏はスタイリングの手順、自身の失敗、髪質による仕上がりの違いを継続的に発信し、視聴者から寄せられる疑問や要望を商品づくりへ戻しました。広告会社で培った企画や表現の技術が、当事者としての実感と結び付いた格好です。
くせ毛向け商品は、容器を見ただけでは使い方が伝わりにくい難点があります。濡らす水分量、クリームやジェルを使う順番、揉み込み方、乾かし方によって結果が変わるためです。そこで、販売前から動画や投稿で「使いこなすための知識」を提供しました。情報を試して変化を実感した人が、次の利用者へ方法を伝える循環が生まれています。
日本流通産業新聞の取材では、販売開始から3年で広告費をかけずに売上高2億円へ到達し、2026年10月期は3億円を見込むと報じられました。自社ECとAmazonがそれぞれ売上の約4割を占め、営業担当がいない段階でも、顧客の紹介などを通じて約85の美容室に取り扱いが広がったといいます。
これは「創業者の知名度で商品を売った」という説明だけでは捉えきれません。くせ毛に悩んできた人が、自分の経験を共有できる場と共通言語を先につくったことが強みです。顧客は商品の購入者であると同時に、新しい髪の価値観を広げる参加者にもなりました。
販路はオンラインから実店舗へも広がっています。2026年夏には、@cosme STOREの7店舗で期間限定販売され、香りや質感を購入前に試せる機会が設けられました。ECは小さな需要を全国から集めるのに適していますが、初めて使う剤形には体験の場も必要です。オンラインのコミュニティーと店頭体験を組み合わせることが、次の顧客層を開く鍵になります。
ただし、Curly Meは非上場企業であり、公開されている売上高や販売数は会社発表や取材に基づく数字です。利益率、返品率、商品別の継続購入率までは開示されていません。急成長を評価する際には、売上規模と収益性を分けて見る必要があります。
カールを整える技術と健康面から見たケア
くせ毛の形状と乾燥・切れ毛の個人差
くせ毛は、単に「水分が足りない髪」ではありません。毛包で毛がつくられる過程や毛髪内部の細胞配置、断面形状など、複数の要因が曲がり方に関係します。カーリーヘアに関する研究レビューも、毛髪の湾曲を生物学、形状、力学の異なる層から捉える必要性を指摘しています。
2023年に発表された毛髪分類のレビューでは、直毛ほど断面が円形で面積が大きく、カールが強い毛ほど楕円形で小さくなる傾向が報告されました。ただし、人種だけで髪の性質を分類する従来の方法では、集団内の多様なカールや太さを十分に表せないとも論じられています。
くせの強さだけで必要なケアを決めることはできません。毛の太さ、カラーや縮毛矯正の履歴、頭皮の皮脂量、生活環境によって、乾燥や切れやすさは変わります。カールした毛は絡まりやすく、結び目や摩擦が損傷につながる場合もあるため、強く引っ張るブラッシングには注意が必要です。
米国皮膚科学会は、カーリー毛は乾燥や切れ毛が起きやすいとして、保湿、濡れた状態での優しいもつれ取り、紫外線や摩擦への対策を勧めています。ただし、洗髪頻度などの適切な習慣は、カールの強さや頭皮の状態によって異なります。
水分・保湿・ジェルを組み合わせる実践法
Curly Meの代表商品であるオリジナルスタイリングジェルは、180グラム入りで税込み2880円です。公式表示によると、カラギーナンやキサンタンガム、シア脂、コメヌカ油、ホホバ種子油、スクワランなどが配合されています。
使い方の基本は、髪を十分に濡らし、必要に応じてクリームなどで整えてから、地肌を避けてジェルをなじませる方法です。毛先を下から上へ優しく揉み込み、自然乾燥か弱い風で乾かします。乾燥後にできた硬い被膜をほぐすと、束になったカールを保ちながら自然な手触りへ近づけられます。
ジェルが髪質そのものを治療したり、毛根の形を変えたりするわけではありません。水分を含んだ毛を同じ方向の束にまとめ、乾くまで形を支えるスタイリング技術です。一本ずつ不規則に広がった状態より光をそろえて反射しやすくなるため、見た目のツヤも出しやすくなります。
初めて試す場合は、次のように工程を分けると調整しやすくなります。
- 髪全体を水で濡らし、指か目の粗いくしで優しくもつれを解きます。
- 乾燥しやすい部分を中心に、コンディショナーやクリームを少量なじませます。
- ジェルを手のひらに広げ、頭皮を避けながら毛束を包みます。
- 毛先を下から上へ揉み、弱風のドライヤーか自然乾燥で形を固定します。
- 完全に乾いた後、硬さが気になる部分を手で軽くほぐします。
最初から複数の商品を大量に使うと、どの工程が仕上がりに影響したのか分からなくなります。水分量、使用量、乾燥方法を一つずつ変え、写真やメモで比較する方法が現実的です。細い髪では重い油分でカールが伸び、太く乾燥した髪では軽い処方だけでは保湿が足りないこともあります。
また、ジェルやオイルが頭皮や毛髪に蓄積すると、べたつきや洗いにくさを感じる場合があります。米国皮膚科学会は、スタイリング剤を頻繁に使う人には、必要に応じて洗浄力のあるシャンプーを先に使う方法も示しています。「特定成分を完全に避ける」というルールより、自分の頭皮と仕上がりを観察する姿勢が大切です。
急成長の先にある再現性と安全性の壁
最大の経営課題は、創業者への強い信頼を、組織と商品全体の信頼へ移せるかどうかです。市場が広がれば、リン氏の発信を知らない顧客も増えます。美容師への教育、髪質別の使用量表示、相談対応、返品や肌トラブルの集計など、誰が説明しても品質を再現できる仕組みが必要です。
商品面では、シリコーンや鉱物油、サルフェートなどを使わない「フリー処方」が特徴として掲げられています。しかし、特定成分を含まないことは、すべての人への安全性や優位性を自動的に意味しません。植物由来成分や天然精油、香料、防腐剤でも、人によって刺激やアレルギーが起こる可能性があります。
ヘアケア製品による接触皮膚炎のレビューでは、香料、防腐剤、界面活性剤、乳化剤などが原因候補として挙げられています。また、米食品医薬品局も、天然やオーガニックという由来だけで安全性を判断しないよう注意を促しています。
新しい商品は、まず少量から説明どおりに使うことが基本です。かゆみ、赤み、腫れ、強い刺激、顔や首まで広がる発疹が出た場合は使用を中止し、症状が続くときは皮膚科を受診してください。洗髪を極端に減らした結果、頭皮に炎症やフケが出る場合も、自己流を続けずケア方法を見直す必要があります。
読者が選択肢を増やすための確認軸
Curly Meの成長が示したのは、くせ毛を「直すべき欠点」ではなく、整え方を学べる髪質として捉える人が増えたことです。商品より先に当事者の経験を共有し、方法を伝え、顧客と一緒にカテゴリーを育てた点が、27万個という販売実績につながりました。
読者が製品を選ぶ際は、目指す仕上がり、髪の太さと乾燥度、頭皮の状態、毎朝かけられる時間を確認することが出発点です。成分の多さや「フリー」の数だけで比べず、少量で試し、刺激と仕上がりを観察してください。
くせ毛を活かすことも、縮毛矯正を選ぶことも、何もしない日をつくることもできます。重要なのは、社会や広告が決めた一つの正解ではなく、自分の健康と暮らしに合う選択肢を持つことです。
参考資料:
- Curly Meについて
- Curly Me オリジナルスタイリングジェル
- 悩み続けたくせ毛、生かす製品で起業
- 天パやクセ毛の人が、自分の髪を愛せる社会へ
- Curly Me、広告費ゼロで売上2億円
- 「くせ毛」を活かすカーリーミーから新作アウトバストリートメント
- Curly Meが@cosme STORE7店舗に登場
- 米国皮膚科学会によるカーリーヘアのケア方法
- The what, why and how of curly hair: a review
- How different is human hair?
- ヘアケア市場に関する調査を実施
- 縮毛矯正の人気が復活、その背景
- ヘアケアに関する調査結果
- Potential for Allergic Contact Dermatitis in Hair Care
- FDAによる化粧品の安全な使用方法
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