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韓国現代自動車がVWを利益で抜いた理由とAIロボ戦略の勝算を読む

by 伊藤 大輝
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利益でVWを抜いた韓国勢の意味

世界の自動車産業で、販売台数だけでは企業の強さを測れない局面が鮮明になっています。現代自動車とKiaを中心とする韓国・現代自動車グループは、販売規模ではトヨタ、フォルクスワーゲンに続く位置にありますが、利益面では欧州最大手のフォルクスワーゲンを上回る水準に浮上しました。

2025年の現代自動車の営業利益は11.47兆ウォン、Kiaは9.08兆ウォンでした。単純合算では20.5兆ウォン規模です。一方、フォルクスワーゲンの2025年営業利益は89億ユーロまで落ち込みました。トヨタは2026年3月期に3.77兆円の営業利益を確保しており、依然として収益力の首位に立っていますが、現代自動車グループの存在感は明らかに変わりました。

この変化は、単なる「韓国車が売れた」という話ではありません。高採算車種へのシフト、ハイブリッドを含む柔軟な電動化、北米での生産現地化、さらにロボタクシーやAIロボティクスまで含めた事業領域の拡張が重なっています。ものづくりの観点から見ると、現代自動車グループの躍進は、設計・生産・ソフトウェア・データを一体で動かす企業体質への転換です。

高収益を支えたSUVとハイブリッド

数量より単価を優先した商品構成

現代自動車グループの収益改善で最も重要なのは、販売台数をひたすら追うのではなく、利益率の高い商品構成に寄せたことです。現代自動車の2025年世界販売は413万8389台で、前年からほぼ横ばいでした。それでも売上高は186.3兆ウォンと過去最高を更新しました。販売台数が伸び悩んでも売上が増えるのは、平均販売価格と車種構成が改善しているためです。

Kiaも同じ構図です。2025年の世界販売は313万5873台で、売上高は114.1兆ウォンに達しました。営業利益率は8%で、量販ブランドとしては高い水準です。合計販売台数は約727万台で、フォルクスワーゲンの約900万台には届きません。それでも営業利益で上回ったことは、現代自動車グループが「台数の会社」から「稼ぐ車種を持つ会社」へ変わったことを示します。

収益の柱はSUV、ハイブリッド、プレミアムブランドです。北米ではTucson、Santa Fe、Palisade、TellurideといったSUVの存在感が大きく、KiaはSportage HybridやCarnival Hybridなどでハイブリッド需要を取り込みました。現代自動車の発表でも、2025年第4四半期の過去最高売上は、ハイブリッドやGenesis車など高付加価値モデルが支えたと説明されています。

量販ブランドで営業利益率を保つ設計力

現代自動車とKiaの強さは、プレミアム専業ではなく量販ブランドで利益率を高めている点にあります。Kiaは2024年に営業利益率11.8%という非常に高い水準を記録しました。2025年は関税やインセンティブ増加の影響で8%に下がりましたが、それでも欧州勢の多くを上回る水準です。

この背景には、車台・パワートレイン・電子制御の共通化があります。Hyundai、Kia、Genesisはブランドの見せ方を分けながら、基盤技術をグループで共有できます。E-GMPのようなEV専用基盤だけでなく、ハイブリッドシステムや内燃機関車の改良でも横展開が効きます。開発費と部品調達を分散できるため、販売価格を過度に上げずに利益を残しやすい構造です。

もう一つの特徴は、EV一本足にしなかったことです。世界のEV需要は伸びていますが、地域差が大きく、充電網や補助金、金利の影響を強く受けます。現代自動車は2025年に電動車を96万1812台販売し、そのうちハイブリッドが63万4990台を占めました。EVの開発を止めずに、需要が厚いハイブリッドで利益を確保する。この現実的な電動化が、収益を下支えしています。

フォルクスワーゲンとの違いもここにあります。VWは売上高では3219億ユーロを維持しましたが、2025年の営業利益率は2.8%に低下しました。中国市場の競争激化、Porsche関連の費用、米国関税、欧州での構造改革が重なり、巨大な販売網とブランド数が必ずしも利益に結びつかない状態です。現代自動車グループは規模で劣る分、商品構成と地域配分を素早く動かし、利益率を守ってきました。

米国現地化とAIモビリティの拡張戦略

HMGMAが担う関税時代の生産基盤

現代自動車グループの次の成長を考えるうえで、米国ジョージア州のHyundai Motor Group Metaplant Americaは象徴的な拠点です。同工場はHyundai、Kia、Genesis向けの電動車・ハイブリッド車を生産する中核で、グループは年産能力を50万台まで広げる計画を示しています。米国では2025年から2028年にかけて210億ドル規模の投資も発表しており、うち90億ドルを自動車生産能力の拡大に充てる計画です。

この投資は、単なる「現地で車を作る」以上の意味を持ちます。米国市場は現代自動車グループにとって収益性の高い地域であり、関税や原産地規則の影響を受けやすい地域でもあります。輸出に依存すれば、為替や通商政策が利益を直撃します。現地生産を増やすことは、政治リスクへの対応であり、販売店への供給安定策でもあります。

2026年4〜6月期には、その難しさも表れました。現代自動車は四半期売上高49.22兆ウォンと過去最高を記録した一方、営業利益は前年同期比20.8%減の2.85兆ウォンでした。Kiaも同四半期に販売台数と売上高で過去最高を更新しましたが、営業利益は2.63兆ウォンで前年同期比4.9%減です。売れる車を持っていても、関税、原材料、インセンティブ、供給制約が利益を削ります。だからこそ、現地化と部品供給網の再設計が重要になります。

ロボタクシー事業で狙う車両供給の標準化

現代自動車グループの成長戦略は、完成車販売だけに閉じていません。2024年の「Hyundai Way」では、2033年までに120.5兆ウォンを投じ、EV、ハイブリッド、電池、自動運転、エネルギー領域を強化する方針を示しました。特に注目すべきは、自動運転ソフトウェア企業に車両を供給する「AVファウンドリー」の考え方です。

Waymoとの提携では、ジョージア州HMGMAで組み立てるIONIQ 5にWaymoの自動運転技術を統合し、Waymo One向けに複数年で供給する計画です。UberとMotionalも2026年3月、ラスベガスでIONIQ 5ベースのロボタクシーサービスを開始しました。Motionalは現代自動車グループが過半を保有する自動運転企業であり、実車、製造、サービス実証を結ぶ役割を担います。

この動きは、スマートフォンにおける端末メーカーとOS企業の関係に近い構造を自動車で作る試みです。自動運転の勝者がどのソフトウェア企業になるかはまだ読めません。しかし、ロボタクシーに必要なEVプラットフォーム、安全冗長性、生産品質、整備網を提供できるメーカーは限られます。現代自動車は、WaymoやMotionalのような相手と組むことで、ソフトウェア競争に直接勝たなくても、自動運転時代の車両供給者として収益機会を広げようとしています。

Atlas導入が映す工場DXの核心

AIロボティクスも、現代自動車グループの戦略で外せない領域です。Boston Dynamicsは2026年、HMGMA内にRobotics Metaplant Application Centerを開設し、ヒューマノイドロボットAtlasを自動車製造工程へ組み込む訓練を始めました。最初は部品の順序立てや物流作業が中心で、2030年には部品組み付けなど、より複雑な工程への展開を見込んでいます。

これは未来感のある宣伝ではなく、製造現場の現実的な課題への対応です。自動車工場では、人手不足、作業負荷、安全、品質ばらつきが常に問題になります。従来の産業用ロボットは固定工程には強い一方、多品種少量や人の動きに合わせた柔軟作業は苦手でした。ヒューマノイド型や移動ロボットが実用域に入れば、ライン設計そのものが変わります。

現代自動車グループは、自社工場をAIロボットの実験場にできます。完成車メーカーとして量産現場を持ち、Boston Dynamicsとしてロボット技術を持ち、42dotなどを通じて自動運転AIも育てる。この組み合わせは、単に車を作る企業から、現実空間でAIを動かす企業への転換を意味します。ロボタクシーも工場ロボットも、センサー、制御、学習データ、量産品質という共通の技術基盤に支えられています。

関税と中国勢が試す利益率の持続力

現代自動車グループの躍進には、過信できない要素もあります。第一のリスクは通商政策です。2025年以降、米国関税の影響は現代自動車とKiaの利益を明確に圧迫しました。現地生産を増やしても、部品や電池材料、完成車の流れが完全に国内で閉じるわけではありません。生産移管には時間がかかり、設備投資の負担も先行します。

第二のリスクは中国勢の台頭です。BYDをはじめとする中国メーカーは、EVだけでなくPHEVや低価格モデルでも世界市場へ攻勢を強めています。現代自動車グループが強いSUVや小型EVの領域は、中国勢にとっても狙いやすい市場です。価格競争が深まれば、現在の高い利益率は下押しされます。

第三のリスクは、技術投資の回収期間です。ロボタクシー、自動運転AI、ヒューマノイドロボットは、短期で営業利益に直結する事業ではありません。むしろ研究開発費と設備投資を増やす要因です。現代自動車グループの強みは、足元のSUV・ハイブリッドで稼ぎながら未来投資を続けられる点にありますが、そのバランスが崩れれば利益率はすぐに揺らぎます。

投資家が注視すべき次の成長指標

現代自動車グループを見る際は、販売台数ランキングだけで判断しないことが重要です。注目すべき指標は、HyundaiとKiaの合算営業利益率、北米での現地生産比率、ハイブリッドとEVの販売構成、Genesisの伸び、HMGMAの稼働率、そしてWaymo・Motional向け車両供給の実績です。

特に2026年以降は、関税影響を吸収しながら営業利益率を再び高められるかが焦点になります。Kiaは2026年営業利益10.2兆ウォンを目標に掲げ、現代自動車も6.3〜7.3%の営業利益率を見込んでいます。ここを達成できれば、2025年の「VW超え」は一過性ではなく、構造的な収益力として評価されます。

現代自動車グループの躍進は、安価な韓国車という古いイメージの延長ではありません。商品企画、製造、電動化、ソフトウェア、ロボティクスを同時に組み替える産業戦略です。トヨタを追い、VWを利益で上回った意味は、次世代の自動車メーカーが「車を売る会社」から「移動と現場を知能化する会社」へ変わりつつあることにあります。

参考資料:

伊
伊藤 大輝

テクノロジー・産業動向

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