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シャオミが日本で店舗数アップル超えを狙う戦略

by 伊藤 大輝
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はじめに

中国発のテクノロジー企業シャオミ(Xiaomi)が、日本国内での直営店舗展開を急速に拡大しています。2025年3月に日本初の実店舗「Xiaomi Store」をオープンしてからわずか1年で、店舗数は10店舗に到達しました。2026年中にはアップルが日本国内で展開するApple Store(11店舗)を超える見通しです。

スマートフォンメーカーとして知られるシャオミですが、その店舗戦略にはスマホ販売にとどまらない大きな狙いがあります。本記事では、シャオミが日本市場で急速に店舗網を拡大する理由と、その背景にあるビジネスモデルの転換について解説します。

シャオミの日本店舗展開の軌跡

1年で10店舗を達成した出店スピード

シャオミは2025年3月22日、埼玉県さいたま市のイオンモール浦和美園店内に日本初の直営店「Xiaomi Store」をオープンしました。その後、首都圏を中心に出店を加速し、2025年末までに東京23区内、千葉県、埼玉県に計6店舗を展開しています。

2026年に入ると、関西圏への本格進出を開始しました。3月7日にイオンモール鶴見緑地店(大阪府)、3月14日にイオンモール伊丹店(兵庫県)、3月28日にイオンモール堺鉄砲町店(大阪府)と立て続けにオープンしています。さらに4月4日にはららぽーと甲子園店(兵庫県西宮市)の開業も予定されており、関西だけで一気に4店舗を展開する計画です。

Apple Storeとの店舗数比較

日本国内のApple Storeは現在11店舗で、ここ数年大きな変動はありません。一方でシャオミは2026年中に追加出店を予定しており、名古屋など中部圏への進出も計画されています。年内にApple Storeの店舗数を上回ることはほぼ確実な状況です。

スマートフォンメーカーの独立した直営店舗数で日本最大になるという事実は、日本の小売業界において大きなインパクトを持ちます。

スマホメーカーからライフスタイルブランドへの転換

200製品以上を展示する体験型店舗

シャオミストアの特徴は、スマートフォンやタブレットだけを並べた店舗ではないという点です。各店舗では200製品以上が展示・販売されており、空気清浄機、ロボット掃除機、エアフライヤーなどの生活家電から、サングラス、ウォーターボトル、電気シェーバー、デスクライトといった日用品・小物家電まで幅広いラインナップを揃えています。

これはApple Storeがデジタル製品に特化しているのとは対照的です。シャオミは「ライフスタイル家電ブランド」としてのポジショニングを明確にしており、来店者がスマホの購入を目的としていなくても、日用品や生活雑貨を手に取れる場を提供しています。

「人・車・家」をつなぐエコシステム構想

シャオミのグローバル戦略の柱となっているのが、「人・車・家」をつなぐエコシステム構想です。スマートフォンを中心に、IoT家電、ウェアラブルデバイス、そしてEV(電気自動車)までを一つのプラットフォームでつなぐという壮大なビジョンを掲げています。

シャオミの盧偉氷総裁は、今後5年間で海外に1万店の直営店を開設すると表明しています。日本での急速な出店は、このグローバル戦略の一環として位置づけられています。

日本のスマホ市場で急成長するシャオミ

シェア急上昇の背景

シャオミは日本のスマートフォン市場でも存在感を急速に高めています。2024年4〜6月期の国内スマホ出荷台数は前年同期比約5.6倍の約49万台に達し、市場シェアは1%から7%へと急上昇しました。調査機関によってはApple、シャープに次ぐ3位に入ったとの分析もあります。

この急成長を牽引したのが、低価格帯モデル「Redmi 12 5G」です。2023年12月にKDDI、2024年4月にソフトバンクと大手キャリアでの取り扱いが始まり、コストパフォーマンスを重視するユーザー層を一気に取り込みました。

独自のビジネスモデル

シャオミの特徴的なビジネスモデルは、ハードウェアの利益率を極めて低く抑える点にあります。端末販売そのもので大きな利益を追求するのではなく、広告収入やアプリストア、動画配信などのインターネットサービスで収益を上げる構造です。この仕組みにより、高性能な製品を競合他社よりも安価に提供できるのが強みです。

直営店舗の拡大は、このエコシステムへの入り口を増やす意味を持ちます。実際に製品を手に取って体験してもらうことで、シャオミの製品群への接点を広げる狙いがあります。

注意点・展望

EV参入の可能性

シャオミは2024年3月に中国で電気自動車「SU7」を発売し、累計30万台以上を販売する大ヒットを記録しています。2025年9月には日本でSU7を初展示し、日本市場への投入にも意欲を示しました。ただし、充電インフラの整備状況や日本の車両安全基準への対応など課題も多く、具体的な日本発売時期は未定です。

将来的にEVが日本市場に投入されれば、シャオミストアがショールームとしての役割も担う可能性があります。店舗網の拡大は、EV事業を見据えた布石とも考えられます。

日本市場での課題

急速な店舗拡大には、アフターサービス体制の整備が不可欠です。シャオミは2026年に秋葉原にサポートセンターを新設するなど、修理対応の拠点づくりも進めています。日本の消費者が求めるサービス品質を維持しながら拡大を続けられるかが、今後の成長の鍵となるでしょう。

まとめ

シャオミが日本で店舗数アップル超えを目指す背景には、単なるスマホメーカーからライフスタイルブランドへの転換という明確な戦略があります。200以上の製品を揃えた体験型店舗を全国に展開し、「人・車・家」をつなぐエコシステムの入り口として位置づけています。

コストパフォーマンスの高い製品ラインナップと急成長するスマホシェア、そしてEV市場への参入計画を踏まえると、シャオミの日本での存在感は今後さらに高まることが予想されます。日本の消費者にとっては、高品質な製品を手頃な価格で手に入れる選択肢が広がることを意味しています。

参考資料:

伊藤 大輝

テクノロジー・産業動向

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