高年収男性でも結婚が難しい理由と年齢別恋愛獲得格差の残酷実態
高年収神話が揺らぐ婚活市場の現在地
「男性は年収が高ければ、年齢が上がっても結婚できる」という見方は、婚活の場で根強く残っています。確かに経済的な安定は、結婚生活を考えるうえで重要な条件です。住居、出産、育児、老後資金まで見通すなら、収入を無視した関係設計は現実的ではありません。
しかし、統計を重ねると、年収だけで恋愛や結婚の獲得機会が増えるわけではないことが見えてきます。2025年の人口動態統計月報年計では、婚姻件数は48万9119組と前年より増えた一方、出生数は67万1236人、合計特殊出生率は1.14まで低下しました。結婚そのものが希少化し、相手選びの条件も多層化しています。
本稿では、恋人や婚約者を得る機会を便宜的に「恋愛獲得」と呼びます。年齢、年収、交際経験、生活力、将来設計を切り分け、なぜ高年収だけでは婚活の決定打になりにくいのかを読み解きます。
年収だけでは恋人が増えない統計的背景
初婚年齢と年齢差が示す現実
厚生労働省の2025年概数では、平均初婚年齢は夫31.0歳、妻29.7歳です。夫の方がやや年上という構図は残っていますが、平均で見れば大きな年齢差婚が標準ではありません。さらに、人口動態統計の年齢差別婚姻表は、初婚同士の組み合わせが年齢の近い層に集中しやすいことを示しています。
この事実は、婚活でよく語られる「男性は何歳でも若い女性を選べる」という前提とずれています。年齢が上がるほど同年代の未婚者数は減り、希望する相手の年齢層との生活段階の差も広がります。年収が高くても、相手が求める結婚時期、出産希望、住む場所、働き方と合わなければ、候補者として残りにくくなります。
とくに子どもを望む場合、年齢は男女双方にとって生活設計上の要素になります。妊娠や出産は女性だけの問題ではなく、男性側の健康、育児参加、教育費を支える期間、親の介護時期とも関係します。高年収は安心材料ですが、将来を一緒に運営できるかという問いを消すものではありません。
交際相手の有無に表れる機会格差
国立社会保障・人口問題研究所の第16回出生動向基本調査では、18〜34歳の未婚者のうち「いずれ結婚するつもり」と答えた割合は男性81.4%、女性84.3%でした。結婚願望は多数派ですが、実際に恋人または婚約者がいる割合は男性21.1%、女性27.8%にとどまります。
さらに注目すべきは、異性の交際相手を持たない未婚者の多さです。18〜34歳の未婚男性では72.2%、女性では64.2%が、異性の友人、恋人、婚約者のいずれも持たない状態でした。その中で、特に異性との交際を望んでいない人も増え、未婚者全体では男性33.5%、女性34.1%に達しています。
つまり婚活市場の課題は、年収が高い男性を女性が選ぶかどうか以前に、そもそも恋愛関係に入る人の母数が縮んでいる点にあります。恋愛獲得数は、収入条件だけでなく、交際を望む人の数、出会いの場、対話の継続、相互の年齢希望によって決まります。高年収でも、恋愛に参加する相手側の意欲が低ければ、機会は増えません。
所得は入口でも決定打ではない理由
国税庁の2024年分民間給与実態統計調査では、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は478万円、男性は587万円、女性は333万円でした。男性では年間給与400万円超500万円以下の層が最も多く、493万人、構成比16.9%です。収入は確かに個人差が大きく、婚活プロフィールでも目につきやすい項目です。
ただし、収入は「入口の足切り」にはなっても、「この人と暮らしたい」という判断を単独で作るわけではありません。出生動向基本調査では、結婚相手の条件として、人柄、仕事への理解、家事・育児の能力や姿勢が重視されています。男性側も妻となる相手に経済力を求める傾向を強め、2021年には48.2%が重視または考慮すると回答しました。
これは、結婚が片方の稼ぎに依存する制度から、二人で生活を組み立てる関係へ移っていることを示します。高年収男性が有利になる場面はありますが、年齢差が大きく、生活力や対話力が見えず、家事・育児を相手任せにする印象があれば、所得の強みは相殺されます。
女性の条件変化が映す共同生活力の重要性
経済力から生活運営力への重心移動
婚活で年収が語られやすいのは、結婚が生活共同体だからです。家賃、教育費、医療費、介護費は気持ちだけでは賄えません。特に物価上昇が続く中で、経済的な安定を求めること自体は合理的です。
一方で、女性が男性に求める条件は、年収一本ではありません。出生動向基本調査では、夫となる相手の「家事・育児の能力や姿勢」を重視する女性が1997年の43.6%から2021年には70.2%に上昇しました。相手の容姿を重視または考慮する女性も、1992年の67.6%から2021年には81.3%へ増えています。
この変化は、外見偏重というより、日常生活を共にする相手への総合評価が細かくなった結果です。共働きが前提になれば、家事、育児、健康管理、親族対応、感情労働をどう分担するかが問われます。年収の高さは重要でも、「忙しいから家庭のことはできない」という姿勢が見えた瞬間、共同生活のリスクとして受け止められます。
アプリ時代に可視化された信頼のコスト
出会いの場も変化しています。出生動向基本調査では、恋人または婚約者のいる未婚者のうち、相手と「ネットで」知り合った割合は男性11.9%、女性17.9%でした。2018年後半から2021年前半に結婚した初婚同士の夫婦では、SNSやマッチングアプリなどのインターネットサービスを通じた出会いが13.6%を占めています。
オンラインの出会いでは、年齢、年収、写真、職業が先に表示されます。条件で検索できるため、高年収は注目を集めやすくなります。しかし同時に、プロフィールの信頼性も問われます。ITmediaが報じたタップルの年収証明機能では、同社調査で相手の年収を重視するユーザーが男性24.7%、女性74.0%、年収の偽装を懸念する人が男性37.0%、女性74.3%だったとされています。
この数字は、年収が重要であるほど、その真偽や背景も見られることを意味します。年収証明、独身証明、本人確認が広がるのは、条件検索の時代に「信頼」が希少資源になっているからです。高収入を掲げるほど、なぜ未婚なのか、結婚後の役割分担をどう考えるのか、生活の透明性が相手の関心になります。
健康と将来設計をめぐる年齢要因
年齢が婚活に影響するのは、若さを価値化する単純な話ではありません。生活リズム、体力、健康習慣、親の介護、退職までの年数など、結婚後の現実に直結する要素が増えるためです。医療や栄養の観点から見ても、睡眠、飲酒、体重管理、慢性疾患リスクは、長期のパートナーシップの安心感に関わります。
たとえば40代以降の男性が子どもを望む場合、教育費のピークと自身の定年時期が重なりやすくなります。相手が若いほど、妊娠・出産期、乳幼児期、キャリア形成期をどう支えるかが具体的な論点になります。年収が高い人ほど解決できる問題もありますが、時間、体力、ケアの分担はお金だけでは代替できません。
また、年齢差が大きい関係では、価値観の違いも表面化しやすくなります。仕事観、家族観、ジェンダー観、消費感覚、デジタルサービスの使い方がずれると、交際初期の会話で違和感が生まれます。恋愛獲得数を増やすには、年収を示すより先に、相手の生活段階を理解する姿勢が必要です。
少子化対策を年収論に閉じ込める危うさ
少子化を「若者の収入が低いから結婚できない」という一因だけで説明するのは不十分です。2025年の出生数は67万1236人で過去最少水準となり、合計特殊出生率も1.14に下がりました。一方で婚姻件数は48万9119組と前年から増えています。結婚数が少し戻っても、出生数がすぐ回復するわけではありません。
結婚意思の低下、交際相手を持たない人の増加、子どもを持つ希望数の減少、共働き前提の生活不安が重なっています。出生動向基本調査では、結婚意思のある未婚男女の平均希望子ども数も男性1.82人、女性1.79人まで下がりました。女性では初めて2人を下回っています。
政策としては、所得支援だけでなく、長時間労働の是正、住宅費負担の軽減、育児休業の実効性、男性の家事・育児参加、地域の孤立対策が欠かせません。個人の婚活でも同じです。年収を上げる努力は大切ですが、それだけを自分の市場価値とみなすと、相手が見ている不安に届きません。
特に高年収の中高年男性は、経済力を「相手に与えるもの」として語るほど、関係が上下に見えやすくなります。現代の結婚で求められるのは、支配でも保護でもなく、生活を共同で調整する力です。年齢を重ねた人ほど、健康管理、感情の安定、家事の自立、相手のキャリア尊重が強い説得材料になります。
婚活で見直すべき三つの実践基準
高年収男性が結婚しにくいのではありません。問題は、年収を唯一の武器として扱い、年齢差や生活力の課題を過小評価することです。統計が示すのは、恋愛獲得の機会が縮み、相手条件が多面化し、結婚が共同生活の設計力を問うものへ変わった現実です。
見直すべき基準は三つあります。第一に、希望年齢を現実の初婚年齢や生活段階に合わせて調整することです。第二に、収入だけでなく、家事、健康、対話、育児参加の具体像を示すことです。第三に、相手を条件の集合ではなく、時間を共に使う生活者として見ることです。
婚活で必要なのは、若さや年収をめぐる一発逆転の発想ではありません。自分がどのような暮らしを作れるのかを、相手が安心して想像できる形で伝えることです。その意味で、年齢と年収の掛け算よりも、信頼と共同生活力の積み上げこそが、これからの恋愛獲得数を左右します。
参考資料:
- 令和7(2025)年人口動態統計月報年計(概数)の概況|厚生労働省
- 令和7(2025)年人口動態統計月報年計(概数)結果の概要|厚生労働省
- 令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況|厚生労働省
- 夫・妻の平均婚姻年齢の年次推移|厚生労働省
- 初婚夫妻の年齢差別婚姻件数|e-Stat
- 第16回出生動向基本調査|国立社会保障・人口問題研究所
- 第16回出生動向基本調査 調査結果のポイント
- 第16回出生動向基本調査 独身者調査の結果
- 第16回出生動向基本調査 グラフデータ
- 第16回出生動向基本調査 単純集計表
- 令和6年分 民間給与実態統計調査|国税庁
- 第2節 結婚と家族を取り巻く状況|内閣府男女共同参画局
- 令和5年度 こども政策の推進に関する意識調査|こども家庭庁
- マッチングアプリ「タップル」に年収証明機能|ITmedia NEWS
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