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日産が国内シェア1割割れ、減損リスクの深刻度

by 佐藤 理恵
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日産10%割れと5,000億円減損危機

日産自動車の国内販売シェアが、2025年に初めて10%を下回りました。かつて国内第2位の自動車メーカーとして存在感を示していた日産ですが、新型車不足や競争激化により販売台数は過去最低水準に落ち込んでいます。

さらに深刻なのは、販売不振の裏に潜む「減損の爆弾」です。年間500万台の生産を前提に計上してきた資産価値と、実際の販売台数335万台との間に大きな乖離が生じており、5,000億円超の減損損失が経営の重荷となっています。本記事では、日産の経営危機の実態と再建への道筋を検証します。

国内シェア10%割れの衝撃

過去最低を記録した販売台数

日本経済新聞の報道によると、日産の2025年の国内新車販売台数(軽自動車含む)は前年比15%減の約40万3,000台となり、1993年以降で過去最低を記録しました。国内市場全体に占めるシェアは初めて1割を切り、トヨタ、スズキ、ホンダ、ダイハツに次ぐ5位に甘んじています。

月別データを見ると、2025年7月度の登録車シェアは8.3%、軽自動車を含めても8.9%まで低下しています。かつて「技術の日産」として高いブランド力を誇った同社の凋落ぶりは、業界関係者にとっても衝撃的な数字です。

新型車不足が招いた顧客離れ

販売不振の最大の要因は、魅力的な新型車の投入が遅れたことです。Bloombergの報道では、日産の日本市場での顧客離れは深刻で、ブランド回復には相当な時間を要するとされています。

競合他社がハイブリッド車やEVの新モデルを次々と投入する中、日産の国内ラインナップは更新が遅れ、消費者の選択肢から外れる状況が続きました。年内発売予定の大型ミニバン「エルグランド」などが巻き返しの切り札として期待されていますが、販売回復には時間がかかる見通しです。

5,000億円超の減損損失が示す構造問題

過大な生産能力と現実のギャップ

日産が抱える最大のリスクは、過大な生産能力に基づく資産評価です。これまで日産は「年間500万台の生産」を前提に工場や生産設備の資産価値を算定してきました。しかし実際の販売台数は335万台にとどまり、約165万台分の生産能力が遊休状態となっています。

この乖離を解消するため、日産は北米・欧州・日本の工場や生産設備について5,000億円超の減損損失を計上しました。さらにサプライヤーへの補償や早期退職金など、追加のリストラ費用として600億円超が見込まれています。

2026年3月期は6,500億円の純損失見通し

2025年度上期の業績は営業損失277億円、当期純損失2,219億円と中間期として5年ぶりの赤字を記録しました。通期では純損失が6,500億円に達する見通しで、過去最大規模の赤字となります。

2025年3月期の決算でも最終赤字は7,500億円に達し、無配に転落しています。二期連続の巨額赤字は、日産の財務基盤を大きく毀損しています。

エスピノーサ社長の再建計画「Re:Nissan」

2万人削減と7工場閉鎖

2025年5月、エスピノーサ社長は新たな経営再建計画を発表しました。自動車工場7拠点の閉鎖に加え、国内外で約1万人の追加人員削減を実施します。これまでの計画と合わせると、全従業員の約15%にあたる2万人規模のリストラとなります。

タイでの生産ライン統合やアルゼンチンでの生産縮小なども含まれ、2026年度末までに5,000億円のコスト削減を目指しています。エスピノーサ社長は「資金調達のためのパートナーは必要ない。新リストラ案で再建可能だ」と述べ、自力再建への自信を示しています。

ホンダとの統合破談と今後の可能性

日産とホンダは共同持ち株会社の設立による経営統合を協議していましたが、2025年に破談となりました。統合の背景には米テスラや中国メーカーなど新興勢力への危機感がありましたが、経営不振の日産を抱えるリスクをホンダ側が懸念したとされています。

一方、ホンダ自身もEV戦略の見直しで最大2.5兆円の損失を計上し、上場以来初の最終赤字に転落する見通しです。両社とも厳しい局面にあり、将来的な再統合の可能性を指摘する声もあります。

Re:Nissan黒字化とEV競争の正念場

日産の再建にはいくつかの懸念が残ります。まず、2026年度末までの営業利益とフリーキャッシュフローの黒字化という目標が達成可能かどうかです。国内シェアの回復には新型車の投入が不可欠ですが、開発投資と同時にコスト削減を進めるという相反する課題に直面しています。

さらに、世界的なEVシフトの中で、日産は「リーフ」で先行した技術的優位を失いつつあります。中国BYDやテスラとの競争は激化の一途をたどり、生き残りのためには抜本的な戦略転換が求められます。

エスピノーサ社長が掲げる「Re:Nissan」計画の成否は、今後1年半が正念場です。この期間に業績を回復できなければ、さらなる資本提携や統合の議論が避けられない状況となるでしょう。

新型車投入とコスト削減で測る日産再建

日産自動車は国内シェア10%割れという歴史的な低迷に直面しています。5,000億円超の減損損失と2万人規模のリストラは、過大な生産能力を抱えた構造問題の表れです。エスピノーサ社長の再建計画が軌道に乗るかどうか、新型車の投入効果とコスト削減の進捗を注視する必要があります。

日産の動向は、日本の自動車産業全体の将来を占う試金石ともいえます。今後の決算発表や新型車の投入スケジュールに注目していきましょう。

参考資料:

佐藤 理恵

企業分析・M&A

会計士としての経験を活かし、企業の財務構造やM&A戦略を深掘り。数字の裏にある経営者の意思決定を読み解く。

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