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ソニー・ホンダEV「アフィーラ」開発断念、ホンダ戦略転換が直撃

by 佐藤 理恵
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AFEELA 1開発断念とホンダ戦略転換

ソニーグループとホンダの合弁会社であるソニー・ホンダモビリティ(SHM)は2026年3月25日、EVブランド「AFEELA(アフィーラ)」の第1弾モデル「AFEELA 1」および第2弾モデルの開発と発売を中止すると発表しました。2020年のCESでソニーがコンセプトカー「VISION-S」を披露してから約6年、期待を集めた異業種タッグによるEVプロジェクトが幕を閉じることになります。

直接の引き金となったのは、ホンダが3月12日に発表した四輪電動化戦略の抜本的な見直しです。米国の関税政策やEV需要の減速を背景に、ホンダは北米向けEV3車種の開発中止と最大2.5兆円規模の損失計上を決定しました。この記事では、アフィーラ開発断念に至った経緯と、自動車業界全体への影響を詳しく解説します。

AFEELA誕生から開発中止までの経緯

VISION-Sからアフィーラへ

ソニーは2020年1月、米ラスベガスで開催されたCES 2020でコンセプトEV「VISION-S」を発表しました。33個のセンサーを搭載し、エンターテインメント技術とモビリティの融合を掲げたこの試作車は、大きな注目を集めました。しかし当時、ソニー単独での自動車市場参入は現実的ではないとされていました。

転機となったのは2021年、ホンダ側から合弁会社設立が持ちかけられたことです。2022年にソニー・ホンダモビリティが正式に設立され、2023年1月のCES 2023で新ブランド「AFEELA」が発表されました。ソニーのエンターテインメント技術とホンダの自動車製造ノウハウを掛け合わせた「新しい移動体験」をコンセプトに掲げ、業界内外から期待が寄せられました。

発売直前での中止決定

AFEELA 1は北米での価格が8万9,900ドル(約1,400万円)からに設定され、2026年中に米国での納車開始、2027年前半に国内販売が予定されていました。2026年1月のCES 2026では第2弾となるSUVモデルも発表されたばかりでした。

しかし、わずか2カ月後の3月25日、全モデルの開発・発売中止が発表されます。SHMは中止の理由として、「Hondaからの提供を前提としていた技術やアセットの活用が困難な状況となった」と説明しています。すでに米国で受け付けていた予約金は全額返金される方針です。

ホンダのEV戦略転換が与えた決定的影響

最大2.5兆円の損失計上

ホンダは2026年3月12日、四輪電動化戦略の大幅な見直しを発表しました。北米で生産予定だったEV3車種「Honda 0 SUV」「Honda 0 Saloon」「Acura RSX」の開発・発売を中止し、2026年3月期と2027年3月期にかけて最大2兆5,000億円の損失を計上する見通しを示しました。

この戦略転換の背景には、複数の要因が重なっています。米国政府によるEV購入税額控除の廃止や排出規制の緩和、輸入関税の引き上げといった政策変更が、EV事業の収益性を大きく悪化させました。加えて、中国メーカーとの価格競争の激化や、アジア市場におけるホンダ車の競争力低下も深刻な課題となっていました。

ハイブリッド回帰と新たな成長戦略

ホンダは今後、次世代ハイブリッド車を収益の柱として位置づける方針を明確にしました。日本と米国の主要市場に加え、成長が見込まれるインド市場でのラインアップ拡充とコスト競争力の強化を進めます。2040年までに「脱ガソリン」を目指すとしていた従来の目標も修正される見通しです。

三部敏宏社長は「断腸の思い」と述べ、役員報酬の一部返上も発表しました。しかし、この決断はホンダ単体の問題にとどまらず、SHMという合弁事業にも連鎖的な影響を及ぼすことになりました。

EV市場の逆風と自動車業界への影響

米国EV市場の減速

ホンダの戦略転換は、米国を中心としたEV市場の環境変化を如実に反映しています。トランプ政権によるEV優遇策の撤廃や関税政策の強化は、自動車メーカーのEV投資計画に大きな見直しを迫りました。EV需要の伸び悩みは世界的な傾向であり、多くのメーカーがハイブリッド車への回帰を模索している状況です。

異業種連携の難しさ

ソニーとホンダの協業は、テクノロジー企業と自動車メーカーの異業種連携モデルとして注目されていました。しかし今回の事例は、パートナー企業の戦略変更が合弁事業全体の存続を左右するリスクを浮き彫りにしました。自動車産業は莫大な設備投資と長期的な開発期間を必要とするため、事業環境の変化に対する脆弱性が課題として残ります。

SHM再協議と日本メーカーのEV対応

SHMの今後

ソニー・ホンダモビリティの今後の方向性については、ソニーグループ、ホンダ、SHMの3社で協議が進められます。EV開発は中止されましたが、ソニーが培ったセンシング技術やエンターテインメント技術の活用先は依然として存在します。自動運転やコネクテッドカー分野での技術提供など、異なる形での事業継続の可能性も考えられます。

日本の自動車産業への示唆

今回の出来事は、EV化への移行が直線的には進まないことを改めて示しました。各国の政策動向や市場環境に応じた柔軟な戦略が求められる中、ハイブリッド技術で優位性を持つ日本メーカーにとっては追い風となる側面もあります。一方で、中長期的にはEVシフトの大きな流れは変わらないとの見方も根強く、技術開発への投資をどう持続するかが問われています。

AFEELA断念が示すEV戦略判断の重み

ソニー・ホンダモビリティによるEV「AFEELA」の開発断念は、ホンダのEV戦略見直しが直接の原因です。米国の政策変更やEV市場の減速という外部環境の激変が、発売目前の製品を白紙に戻す結果となりました。

今後はSHMの事業方針について3社間での協議が行われます。異業種連携によるEV開発という壮大な構想は頓挫しましたが、両社が蓄積した技術や知見が今後どのような形で活かされるのか、引き続き注目されます。自動車業界全体がEVとハイブリッドの最適なバランスを模索する中、この事例は戦略判断の重要性を改めて示す象徴的な出来事となりました。

参考資料:

佐藤 理恵

企業分析・M&A

会計士としての経験を活かし、企業の財務構造やM&A戦略を深掘り。数字の裏にある経営者の意思決定を読み解く。

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