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レーシングカーとクラシックカーが持つ投資的価値の実態

by 高橋 翔平
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セナF1エンジン約3700万円落札の衝撃

クラシックカーやレーシングカーが「投資対象」として注目を集めています。2025年8月、ホンダ・レーシング(HRC)がアイルトン・セナの使用したF1エンジンをオークションに出品し、約3,700万円で落札されたことは大きな話題となりました。クラシックカー市場は世界的に拡大を続けており、実物資産としての魅力が改めて見直されています。

本記事では、HRCのメモラビリア事業の事例を起点に、クラシックカー投資の現状と将来性、そして注意すべきリスクについて解説します。自動車を「走る資産」として捉える視点から、この市場の全体像をお伝えします。

HRCメモラビリア事業とセナのF1エンジン落札

「走る芸術品」を販売する新事業

ホンダのレース活動を担うHRC(ホンダ・レーシング・コーポレーション)は、2025年4月に「メモラビリア・ビジネス」という新規事業を発表しました。これは、ホンダが長年のモータースポーツ活動で蓄積してきたF1エンジンやレーシングパーツを、美術品のようなコレクションとして販売するものです。

第一弾として注目されたのが、1990年F1シーズンでアイルトン・セナが使用したHonda V10エンジン「RA100E」(V805号機)の出品です。このエンジンは、マクラーレン・ホンダMP4/5Bに搭載され、1990年の日本GP(鈴鹿)のウォームアップと最終戦オーストラリアGP(アデレード)で実際に使用された個体です。セナが駆った最後のホンダV10ユニットという歴史的価値を持っています。

約3,700万円での落札

2025年8月15日、米国カリフォルニア州カーメルで開催された「ボナムス・クエイル・オークション」において、このエンジンは手数料込みで254,500ドル(約3,720万円)で落札されました。事前の予想落札価格は80,000〜120,000ドルとされていたため、予想を大きく上回る結果となっています。

出品されたエンジンは、HRCの熟練メカニックによって分解・整備され、専用ディスプレイケースに収納された状態で提供されました。HRCのオリジナル証明書が付属しており、来歴の確かさが保証されています。このほか、HRCはカムカバーやピストン、コネクティングロッドなどの個別パーツも販売しており、数千円から購入できる商品も用意されています。

クラシックカー投資の市場規模と成長性

拡大を続ける世界市場

クラシックカー市場は、世界的に堅調な成長を見せています。ある調査によれば、2020年時点で約309億ドル(約3兆3,000億円)だった市場規模は、2024年には約397億ドル(約4兆2,000億円)に拡大しました。2032年までには約778億ドル(約8兆5,000億円)に達するとの予測もあります。

この成長の背景には、富裕層のポートフォリオ多様化のニーズや、自動車文化への関心の高まりがあります。特に、電動化の進展によってガソリンエンジン車そのものが希少性を増すという見方も、市場を後押ししています。

日本の注目車種と価格帯

日本国内でも、クラシックカーへの投資関心は高まっています。特に人気の高い車種としては、トヨタ2000GT(推定相場:約8,000万〜1億円)、日産スカイラインGT-R(通称ハコスカ、約1,000万〜2,500万円)、ポルシェ911の空冷モデル(約1,000万〜3,000万円)などが挙げられます。

これらの車種は国際的なオークションでも高値を記録しており、特にトヨタ2000GTは日本車としては最高クラスの評価を受けています。国産クラシックカーの中古相場は幅広く、100万〜600万円前後から購入できる車種も存在します。

クラシックカー投資のメリットとリスク

3つの投資メリット

クラシックカー投資には、金融商品にはない独自の魅力があります。

第一に、インフレへの耐性です。物価上昇局面では実物資産の価値が相対的に高まる傾向があり、クラシックカーもその恩恵を受けやすいとされています。

第二に、分散投資としての効果があります。クラシックカーの価格は株式市場との相関性が低く、独自の需給バランスで動くため、ポートフォリオの安定化に寄与する可能性があります。

第三に、趣味と投資の両立ができる点です。美術品やワインと同様に、所有する喜びを感じながら資産形成が期待できるという特徴は、他の投資商品にはない魅力です。

見逃せないリスクと注意点

一方で、クラシックカー投資には重大なリスクも存在します。

流動性の低さは最大の課題です。クラシックカー市場は非常にニッチであり、売却したいタイミングで買い手が見つかるとは限りません。現金化までに数カ月から年単位の時間がかかることも珍しくありません。

維持コストの高さも無視できません。オリジナル部品を用いた修理、湿度管理されたガレージでの保管、専門保険への加入など、年間で数十万円から100万円を超えるコストが発生する可能性があります。

さらに、贋造・詐欺のリスクも存在します。シャーシナンバーの改ざんや非オリジナル部品の混入が後から発覚した場合、資産価値は大幅に下落します。HRCのメモラビリア事業が証明書を付属させているのは、こうしたリスクへの対応策でもあります。

今後の展望と投資を検討する際のポイント

クラシックカー投資の将来性を考える上で、いくつかの重要な視点があります。

電動化の波は、ガソリンエンジン搭載車の希少性をさらに高める可能性があります。特にF1エンジンのような高性能ユニットは、二度と製造されない「一点もの」としての価値が今後も上昇する余地があります。HRCのメモラビリア事業は、インディカーや二輪車への展開も視野に入れているとされており、モータースポーツ関連のコレクティブル市場全体の拡大が期待されます。

ただし、日本における税制面には注意が必要です。クラシックカーを相続する場合、市場価値の上昇に伴い高い評価額が算出される可能性があり、相続税負担が増大するリスクがあります。法人名義での所有による節税を検討するケースもありますが、税務調査では実際の使用実態が厳しく問われるため、専門家への相談が不可欠です。

クラシックカー投資の魅力とリスク管理

HRCのメモラビリア事業が示すように、レーシングカーやクラシックカーの投資的価値は確実に認知が広がっています。セナのF1エンジンが予想を大きく超える約3,700万円で落札された事実は、モータースポーツの歴史的遺産に対する需要の高さを物語っています。

クラシックカー投資は、インフレ耐性や分散投資効果といったメリットがある一方、流動性の低さや維持コスト、贋造リスクといった課題も抱えています。投資を検討する際は、車両の来歴や証明書の有無を入念に確認し、維持管理にかかるコストも含めた総合的な判断が求められます。まずは信頼できる専門家やオークションハウスの情報を収集し、自身の投資目的に合った車種選びから始めてみてはいかがでしょうか。

参考資料:

高橋 翔平

株式・投資戦略

株式市場の構造変化と投資戦略を、個人投資家の視点から分析。企業の財務データを読み解き、マーケットの本質に迫る。

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