ロイヤルホスト増収増益の裏にある高付加価値戦略の全貌
物価高下のロイヤルホスト増収増益
物価高が続くなか、外食産業では消費者の節約志向が強まり、多くの飲食チェーンが厳しい経営環境に直面しています。しかしその一方で、ファミリーレストランのなかでも「ちょっと高級」な路線を貫くロイヤルホストが好調な業績を維持しています。
親会社であるロイヤルホールディングスの2025年12月期通期決算は、売上高が前期比8.8%増の1654億円、営業利益が同4.3%増の76億円と増収増益を達成しました。ロイヤルホスト単体でも、既存店売上高は2026年1月時点で18カ月連続の前年超えを記録しています。
物価が上がるほど消費者は安い店を選ぶのではないか。そんな直感に反するロイヤルホストの好調には、長年にわたる経営戦略の転換が背景にあります。本記事では、その成功要因を多角的に分析します。
「戦略的圧縮」が生んだブランド価値
店舗数削減という逆張りの決断
ロイヤルホストはかつて全国に300店舗以上を展開していましたが、2000年代以降、不採算店舗の閉鎖を積極的に進めてきました。2024年時点での店舗数は約222店舗と、ピーク時から大幅に縮小しています。
この戦略を推進してきたのが、ロイヤルホールディングスの菊地唯夫会長です。菊地氏は「規模の戦略的圧縮」を掲げ、店舗数を追わず、1店舗あたりの売上と顧客価値を最大化する方針を明確に打ち出しました。店舗数を減らしたことで希少性が生まれ、「近くにあれば行きたい」というブランドへの信頼感が高まったとされています。
24時間営業の廃止がもたらした変化
2017年、ロイヤルホストは全店で24時間営業を廃止しました。加えて、元旦と大晦日を含む年間3日の店舗休業日も導入しています。
一見すると売上機会の喪失に見えるこの施策ですが、結果は逆でした。営業時間の短縮によってスタッフの労働環境が改善され、接客品質が向上しました。余裕のある営業体制のもとで、メインの食事だけでなくデザートやドリンクの追加注文が増えるという好循環が生まれています。
客単価アップを実現するメニュー戦略
「中価格帯の本格料理」という独自ポジション
ロイヤルホストが選んだのは、低価格競争から完全に撤退し、「ホテルや専門店に近い本格料理を、専門店よりはリーズナブルに提供する」というポジショニングです。
看板メニューである「黒×黒ハンバーグ」は、黒毛和牛と黒豚を使用した本格派で、250グラムで2068円(税込)という価格設定です。ファミリーレストランとしては高めですが、同等の品質を専門店で食べればさらに高くなることを考えると、むしろ「お得感」さえ生まれる絶妙な価格帯といえます。
メニュー改定と継続的な価値向上
2025年にはグランドメニュー全51品中43品について30円から250円の価格改定を実施しました。単なる値上げではなく、新メニューの投入も同時に行っています。ビーフシチューを合わせた「ビーフシチューオムライス」や、カリフラワーライスを使用したリゾット仕立てなど、付加価値の高い商品を開発し続けているのが特徴です。
その結果、2025年のロイヤルホストの客数は前年比で0.8%減少したものの、客単価は6.2%増加し、既存店売上高は5.4%増となりました。客数がわずかに減っても、来店した顧客の満足度と消費額を引き上げることで増収を実現するモデルが確立されています。
店舗改装への積極投資
ロイヤルホールディングスは2025年に16億円を投じて37店舗の改装を実施しました。改装店舗では、改装翌月から12月までの平均で売上高が11%増加するという成果が出ています。
2026年はさらに6店舗の新規出店と19店舗の改装を計画しており、「出店よりも既存店の磨き上げ」を重視する姿勢が鮮明です。
ターゲット転換と外食市場の二極化
「経済的にゆとりある40代女性」への照準
ロイヤルホストは来店データの分析に基づき、メインターゲットをファミリー層から「経済的にややゆとりのある40代女性」に転換しました。夜の来客が相対的に少ないことに着目し、ランチやティータイムでの利用価値を高める方向にシフトしています。
この判断は、物価高時代の消費行動とも合致しています。消費者全体としては節約志向が強まる一方で、「自分が本当に価値を感じるものには出費を惜しまない」という層が確実に存在します。いわゆる「プチ贅沢」需要を的確に捉えたのがロイヤルホストの戦略です。
ファミレス業界に広がる二極化の波
外食市場全体では価格帯の二極化が進行しています。低価格帯のファストフードやファミリーレストランが「安さ」で消費者の日常的な食事需要を取り込む一方、一定の品質と体験を提供する中・高価格帯の業態にも支持が集まっています。
ロイヤルホストの競合であるすかいらーくグループのガストは、資さんうどんの買収など業態転換を含む多角的な戦略で対応を図っています。一方、サイゼリヤは高い客席回転率と圧倒的な低価格で独自のポジションを確保しています。各社がそれぞれの強みを活かした戦略を展開するなかで、ロイヤルホストは「高付加価値ファミレス」という明確なポジションで差別化に成功しています。
原材料費高騰と2026年6店舗出店
ロイヤルホストの戦略は成功を収めていますが、いくつかのリスク要因も存在します。
まず、原材料費の高騰は引き続き経営を圧迫する可能性があります。実際、ロイヤルホールディングスの2025年1〜3月期は原材料費と新規出店費用の増加により、営業利益が前年同期比9.6%減となりました。高付加価値路線を維持するには品質を落とせないため、コスト管理と価格転嫁のバランスが今後も課題となります。
また、客数が微減傾向にある点にも注目が必要です。客単価の上昇で増収を維持していますが、客数減少が加速すれば収益構造に影響が出る可能性があります。新規顧客の獲得と既存顧客のリピート率向上の両立が求められます。
一方で、2026年に計画されている6店舗の新規出店は、長年にわたる「出店ゼロ」の時期を経た反転攻勢の兆しともいえます。改装投資の効果が実証されたことで、今後は質を維持しながらの緩やかな拡大路線に移行する可能性もあります。
戦略的圧縮と高付加価値化の成果
ロイヤルホストの増収増益は、一朝一夕の施策で達成されたものではありません。店舗数の戦略的圧縮、24時間営業の廃止、ターゲット層の転換、そしてメニューの高付加価値化。これらの施策を10年以上にわたって一貫して推進してきた結果が、物価高という逆風のなかでの好業績につながっています。
「安さで勝負しない」という選択は、外食産業の常識に反するように見えます。しかし、ロイヤルホストの事例は、顧客が求める「価値」を正確に捉え、それに見合う品質を提供し続けることの重要性を示しています。物価高時代の外食経営を考えるうえで、示唆に富む事例といえるでしょう。
参考資料:
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