kinyukeizai.com
kinyukeizai.com

TOTO国内住宅設備が大幅減益へ、新築低迷とコスト増の深刻度

by 佐藤 理恵
URLをコピーしました

TOTO国内住設を襲う新築低迷とコスト増

トイレや浴室などの住宅設備で国内トップシェアを誇るTOTO株式会社が、国内住宅設備事業で厳しい局面を迎えています。2026年3月期(2025年度)の業績見通しでは、国内住設事業の営業利益が前期比で大幅な減益となる見込みです。

背景にあるのは、新築住宅着工件数の歴史的な低水準と、外部調達コストの増加という二重苦です。日本の住宅市場は人口減少という構造的な問題に直面しており、TOTOのような住宅設備メーカーにとって避けられない課題となっています。

本記事では、TOTOの国内住設事業が抱える問題の実態と、その背景にある市場構造の変化、そして今後の戦略について詳しく解説します。

TOTOの業績が示す国内住設事業の変調

2026年3月期は通期予想を下方修正

TOTOは2026年3月期の連結業績予想を下方修正しました。修正後の数値は、売上高7,345億円(従来予想7,535億円)、営業利益490億円(同525億円)、純利益290億円(同310億円)となっています。

とりわけ深刻なのが国内住設事業の状況です。中間期(4〜9月)の実績を見ると、売上高は前年同期比98%の2,285億円、営業利益は同64%の59億円と大幅に落ち込みました。連結売上高の約65%を占める主力事業の不振は、全社業績への影響が避けられません。

新築が特に厳しく、リモデルも伸び悩み

国内住設事業の内訳を見ると、課題の深刻さがより鮮明になります。

事業の約7割を占めるリモデル(リフォーム)需要は、中間期の売上高が前年同期比98%の1,628億円にとどまりました。新築向けも同97%の657億円と減収です。前期(2025年3月期)まではリモデル事業が増収を維持し、新築の落ち込みをある程度カバーしていましたが、2025年度に入ってからはリモデルも勢いを失いつつあります。

営業利益面では、外部調達コストの増加や人材投資の拡大が重くのしかかっています。住宅向け設備の販売が当初計画を下回るなか、コスト増が利益を圧迫する構図が続いています。

新築住宅市場の縮小と構造的課題

着工件数は過去61年間で最低水準

TOTOの国内事業が苦戦する最大の背景は、日本の新築住宅市場の縮小です。2025年の新設住宅着工戸数は74万667戸で、前年比6.5%減となりました。これは過去61年間で最低の水準です。

カテゴリ別に見ても全面的な減少が続いています。持ち家は20万2,185戸(前年比7.7%減、4年連続減少)、貸家は32万4,991戸(同5.0%減、3年連続減少)、分譲住宅は20万8,169戸(同7.6%減、3年連続減少)と、いずれも前年を大きく下回りました。

人口減少が住宅需要を構造的に押し下げ

住宅着工件数の減少は一時的な景気変動ではなく、人口減少という構造的要因に根ざしています。日本の総人口は2008年の約1億2,808万人をピークに減少に転じ、2025年時点では約1億2,340万人にまで減っています。約470万人もの減少は、住宅需要の縮小に直結します。

特に深刻なのは、新築住宅の主要購入層である子育て世代の減少です。出生数の低下に伴い、「新しく広い家を購入する」という新築需要そのものが細っています。建築資材価格の高騰も重なり、住宅取得のハードルはさらに上がっています。

ライバルとの競争環境

国内住宅設備市場では、LIXILやパナソニックといった大手メーカーとの競争も激しさを増しています。LIXILはキッチンやバスルームなど住宅全体をトータルで提供できるラインアップの幅広さが強みです。パナソニックはIoT対応の住宅設備で差別化を図っています。

TOTOはトイレや水回り製品での技術力に定評があり、「きれい除菌水」や「セフィオンテクト加工」といった独自技術が高い評価を受けています。しかし、市場全体のパイが縮小するなかで、シェア維持の競争はより厳しくなっています。

リモデル深耕と米国シフトの成長戦略

リモデル市場へのシフトが鍵

新築市場の縮小が続くなか、TOTOにとっての成長ドライバーはリモデル(リフォーム)市場です。築年数の経過した住宅ストックは増加しており、水回りのリフォーム需要は中長期的には底堅い市場と見られています。

ただし、2025年度はリモデル事業も減収に転じており、楽観視はできません。消費者の節約志向や、リフォームの単価下落といった逆風も意識する必要があります。

海外戦略の転換、中国から米国へ

国内事業の停滞を補う存在として、海外事業の重要性が増しています。TOTOは海外戦略の軸足を中国から米国にシフトしつつあります。2025年4〜6月期の実績では、米州の売上高が187億円(前年同期比13%増)と好調な一方、中国大陸は108億円にとどまりました。

TOTOは米ジョージア州の工場に約300億円を投じ、新たな生産ラインを整備しています。ウォシュレット(温水洗浄便座)の認知度が高まる北米市場で、生産能力を1.5倍に引き上げる計画です。一方、中国では製造拠点2カ所の閉鎖を進めるなど、構造改革を急いでいます。

2026年度は住宅市場に回復の兆し

2026年度の新設住宅着工戸数は、前年度比5.5%増の約77.7万戸と予測されています。2025年度の反動増が期待される形ですが、人口減少のトレンドが変わらない以上、本格的な回復は見通しにくい状況です。

WILL2030へ問われる国内再建と海外シフト

TOTOの国内住宅設備事業は、新築住宅着工件数の歴史的低水準と外部調達コストの増加により、大幅な減益局面に入っています。人口減少に伴う住宅需要の構造的縮小は今後も続く見通しで、国内住設事業への依存度が高いTOTOにとって、事業ポートフォリオの転換は避けられない課題です。

リモデル市場の深耕と、米国を中心とした海外事業の拡大が今後の成長戦略の柱となります。長期経営計画「WILL2030」で掲げる売上高1兆円の達成に向けて、国内事業の立て直しと海外シフトの両立が問われる局面が続きそうです。

参考資料:

佐
佐藤 理恵

企業分析・M&A

会計士としての経験を活かし、企業の財務構造やM&A戦略を深掘り。数字の裏にある経営者の意思決定を読み解く。

関連記事

首都圏マンション短期転売課税で庶民の住宅購入が遠のく本当の理由

マンション短期転売への重課案は投機抑制に見えるが、首都圏新築は上半期平均1億135万円、中古も都心で在庫増と成約減が同時進行。税負担の転嫁、住み替え萎縮、供給制約、金利上昇が重なり、価格は下がりにくい一方で実需層の選択肢がむしろ狭まる。庶民が買えない住宅市場の構造と政策の盲点を最新データから読み解く。

大手7社はどこに建てたのか供給地図で読む首都圏集中と地方展開

メジャーセブン7社は2024年に全国供給の22.8%を占め、2025年も野村・住友・三井が上位を維持した。首都圏供給が2016年比38.6%減るなか、都心再開発、湾岸タワー、郊外大規模、地方中核都市へ広がる各社の勢力図を市場データと公式実績から解説。購入者が比較すべき地域軸も読み解く。

東京23区家賃高騰が映す郊外移住と新たな住宅投資戦略の転換点

東京23区の賃貸・マンション価格は地価や建設費の上昇を背景に高止まりし、若年層やファミリーの住み替え先は葛西、八王子、大宮、湯河原などへ広がっています。人口流入の鈍化、家賃負担率、新築・中古価格、郊外駅の需要を比較し、金利上昇局面の影響も含め、個人投資家の確認点と生活防衛としての郊外シフトを読み解く。

転入超過ランキングで読む大阪・福岡・さいたま集中の都市戦略の実像

2025年の住民基本台帳人口移動報告を基に、日本人移動者の転入超過が大きい自治体を分析。大阪市、福岡市、さいたま市が上位に並ぶ背景を、雇用、住宅、交通、子育て環境、東京圏・大阪圏の構造変化、名古屋・横浜の底堅さから検証し、人口減少下で人を集める都市の条件と副作用を、自治体経営への示唆とともに読み解く。

老舗工務店COLORがアメリカン雑貨店で地域客をつかむ本当の理由

大阪府高槻市の井上工務店が運営するアメリカン雑貨店COLORは、地域客とZ世代を呼び込む体験型店舗として注目される。住宅着工減、リフォーム需要、昭和レトロ消費、実店舗回帰のデータを踏まえ、小規模工務店が物販を営業資産と粗利源に変える構造、在庫リスク、次の収益指標を解説。地域工務店の多角化が成り立つ条件まで読み解く。

最新ニュース

猫2匹と100種の植物が共存、壁を傷めない賃貸DIYの安全設計

築34年の賃貸マンションで、猫2匹と100種超の植物が安全に共存する住まいをどうつくるのか。有毒植物を購入前に学名で照合する方法、壁に穴を開けない突っ張り柱と自立棚の使い分け、荷重・地震・湿気・害虫への備え、猫の逃げ場と動線、退去時の原状回復まで、園芸経験者の発想を一般の賃貸住宅で再現する設計手順を解説する。

無料訪問は怪しい?ホームスタートが孤立する親子を支える仕組み

無料で自宅を訪ねるホームスタートは、研修を受けた子育て経験者が傾聴と協働で親子に寄り添う家庭訪問型支援です。週1回約2時間、4〜6回の活動内容、オーガナイザーによる調整と安全管理、家事代行・託児との違い、2025年度に3271家庭へ届いた実績、利用前に確認したい地域差や限界と相談先まで詳しく解説します。

日本の原潜保有論が再浮上、68年の検討史と国家決断の条件とは

日本の原子力潜水艦構想は、1958年の民間試設計から68年を経て安全保障3文書改定の論点に浮上した。小泉純也元防衛庁長官の「造る意思なし」と孫・進次郎防衛相の「選択肢を排除しない」を起点に、原子力基本法、NPT・IAEA保障措置、建造費、人材、AUKUSの教訓を検証し、導入判断に必要な条件を読み解く。

しまなみ海道の外国人客が3割超 映画ロケ地人気を支える観光設計

映画『汝、星のごとく』の舞台として脚光を浴びる、尾道と今治を結ぶしまなみ海道。2024年度はレンタサイクル13万5735台の32.2%を外国人が占めた。70キロのブルーライン、乗り捨て、電動化、無料の橋梁通行、島文化が生む体験価値を整理し、急増客を滞在消費へ変える地域課題と旅行者が守るべきマナーを読み解く。

恋愛が怖い若者へ、傷つく不安を越えて関係を育てる心の実践処方箋

恋人がいる未婚者は男性19.6%、女性27.8%――最新の出生動向基本調査が示す若者の恋愛離れを、拒絶への敏感さ、男子校・女子校の交流経験、SNS時代の評価不安から分析。林真理子さんの「欲望」を手がかりに、本人が無理なく踏み出す方法と、親が干渉せず自律を支える具体策、安全な関係の境界線まで解説する。