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フラット35が6年ぶり復権へ、その背景と今後

by 松本 浩司
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フラット35復権と日銀利上げの背景

長期固定型住宅ローン「フラット35」が、久しぶりに脚光を浴びています。住宅金融支援機構が提供するこの商品は、長らく変動金利型に押されて利用が低迷していました。しかし、2025年度に入ってから申請件数が急回復し、6年ぶりに前年度を上回る勢いを見せています。

背景にあるのは、日銀の利上げに伴う金利環境の変化です。「金利のある世界」が本格化するなか、返済額が変わらない安心感を求めて固定金利を選ぶ人が増えています。本記事では、フラット35復権の裏側にある要因と、2026年4月に控える大幅な制度改正について詳しく解説します。

フラット35の利用が急増している実態

申請件数は前年同期比5割増

フラット35の利用回復は数字に明確に表れています。2025年7〜9月の申請戸数は1万4,223戸で、前年同期比50.7%の大幅増加を記録しました。続く10〜12月も1万4,955戸と前年同期比48.7%増を維持しています。

2025年4〜12月の累計では約2.6万戸に達し、すでに前年度(2024年度)の年間実績とほぼ同水準に到達しています。このペースが続けば、2019年度以来となる6年ぶりの前年度超えが確実視されています。契約実行金額も前年比35.8%増の2,776億円に達するなど、金額ベースでも顕著な回復を見せています。

変動金利一強時代の転換点

これまで住宅ローン市場では、変動金利型が圧倒的なシェアを占めてきました。国土交通省の「民間住宅ローンの実態に関する調査」によると、新規契約における変動金利利用者の割合は84.3%に上ります。金利の低さが最大の魅力で、多くの借り手が変動型を選択してきました。

しかし、日銀の利上げが始まったことで潮目が変わりつつあります。住宅金融支援機構が2026年1月に実施した調査では、「今後1年間で金利は上昇する」と回答した割合が73.7%に達しました。前回調査(2025年4月)の65.7%から8ポイントも上昇しており、金利先高観が急速に広がっていることがわかります。

日銀の利上げがもたらす金利環境の変化

政策金利は30年ぶりの水準へ

フラット35復権の最大の要因は、日銀の金融政策の転換です。2025年12月19日、日銀は政策金利を0.25%引き上げ、0.75%程度とすることを決定しました。これは約30年ぶりの金利水準です。

この利上げを受けて、メガバンクは早速変動金利の引き上げに動いています。三井住友銀行は新規・借り換えともに0.25%、三菱UFJ銀行は新規で0.275%、借り換えで0.25%の引き上げを実施しました。2026年4月には、さらに多くの金融機関で基準金利の見直しが予定されています。

変動金利と固定金利の比較

2026年3月時点での金利水準を見ると、変動金利は0.9%〜1.3%程度、固定金利は2.08%〜3.31%程度となっています。フラット35(返済期間21〜35年、融資率9割以下)の金利は2.25%です。

変動金利との差は依然として存在しますが、変動金利は今後さらに上昇する可能性があります。政策金利が2026年中に1.0%程度まで引き上げられるとの見方もあり、そうなれば変動金利はさらに上昇します。長期金利も2026年1月に一時2.38%台まで上昇し、約27年ぶりの高水準を記録しました。

こうした環境下で、「今は少し高くても、将来の金利上昇リスクを避けたい」と考える借り手が増えているのです。

2026年4月の大幅制度改正が追い風に

融資限度額が1億2,000万円へ引き上げ

フラット35の復権を後押しするもう一つの大きな要因が、2026年4月から実施される制度改正です。最大の目玉は、融資限度額の引き上げです。現行の8,000万円から1億2,000万円へと、実に4,000万円もの大幅な引き上げとなります。

この改正の背景には、住宅価格の高騰があります。特に首都圏では新築マンションの平均価格が1億円を超える水準となっており、従来の8,000万円の上限では都市部での住宅取得に対応しきれないケースが増えていました。融資限度額の引き上げにより、高額物件でもフラット35を活用できる道が開かれます。

子育て支援と床面積要件の緩和

制度改正はほかにも注目すべきポイントがあります。「フラット35子育てプラス」が借り換え融資にも適用されるようになります。この制度は、子育て世帯や若年夫婦世帯に対して、子どもの人数に応じて借入金利を一定期間引き下げるものです。これまでは新規借入に限られていましたが、2026年3月以降は借り換えでも利用可能になります。

また、一戸建て住宅の床面積要件が70平方メートル以上から50平方メートル以上に緩和されます。コンパクトな住宅でもフラット35を利用できるようになり、特に単身者や少人数世帯の選択肢が広がります。借り換え融資の借入基準年数も35年から40年に延長されるなど、利用者の利便性を高める改正が目白押しです。

金利差2.25%と追加利上げ観測

フラット35を選ぶ際の注意点

フラット35の利用増加が続いていますが、選択にあたっては冷静な判断が必要です。まず、変動金利と固定金利の金利差は依然として大きい点を認識すべきです。2026年3月時点で、変動金利の最低水準は0.9%程度であるのに対し、フラット35は2.25%です。返済額の差は借入額3,000万円・35年返済の場合、月々約2万円以上になることもあります。

また、金利上昇が今後どの程度続くかは不確実です。日銀の利上げペースは経済状況次第で変わりうるため、「金利が上がり続ける」という前提だけで固定金利を選ぶのはリスクがあります。自身の返済能力や家計の状況を総合的に考慮することが重要です。

今後の見通し

フラット35の利用回復は、2026年度以降も続く可能性が高いと考えられます。日銀の追加利上げ観測は根強く、みずほリサーチ&テクノロジーズは次の利上げ時期を2026年春ごろと予想しています。金利先高観が続く限り、固定金利への需要は維持されるでしょう。

加えて、2026年4月の制度改正が本格的に効果を発揮し始めることで、これまでフラット35を選択肢に入れていなかった層の取り込みも期待されます。住宅ローン市場における変動金利一強の構図に、変化の兆しが見え始めています。

6年ぶり復権を支える制度改正と家計判断

フラット35が6年ぶりに前年度超えの勢いを見せている背景には、日銀の利上げによる金利先高観の広がりと、2026年4月からの大幅な制度改正という二つの大きな要因があります。変動金利利用者の84.3%というシェアが示すように、市場の構造がすぐに変わるわけではありません。しかし、「金利のある世界」が定着するなかで、返済額の安定性というフラット35の本来の強みが改めて評価されています。

住宅ローンの選択は人生の中でも大きな決断の一つです。金利タイプの選択に迷ったら、将来の収入見通しや家計のリスク許容度を踏まえ、ファイナンシャルプランナーや住宅ローンアドバイザーに相談することをおすすめします。

参考資料:

松
松本 浩司

マクロ経済・国際経済

国際経済の潮流を、通商政策・為替・新興国の動向から多角的に分析。グローバル経済の「次の震源地」を見極める。

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