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奨学金月10万円返済が心身を蝕む実態と対処法

by 小林 美咲
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月10万円返済と自律神経不調の実態

日本では大学生の約半数が奨学金を利用しており、卒業後の返済が大きな社会問題となっています。日本学生支援機構(JASSO)の調査によると、奨学金の平均借入総額は約324万円、毎月の平均返済額は約1万6,880円です。しかし、大学院進学や複数の奨学金を借りた場合、月々の返済額が10万円近くに膨らむケースも存在します。

こうした高額返済を続ける中で、自律神経の異常や慢性的なストレス症状に悩まされる方が少なくありません。奨学金返済が心身にどのような影響を及ぼすのか、そしてどのような対処法があるのかを解説します。

奨学金返済が心身に与える深刻な影響

自律神経への負担とストレス反応

奨学金の返済は単なる経済的負担にとどまりません。2025年12月に公開された「奨学金返済がもたらす心理的ストレスの実態調査レポート」(アクティブ アンド カンパニー)によると、奨学金返済を抱える若手社会人は、日常的な心理的ストレスにさらされており、その影響は心身の健康、キャリア形成、さらには結婚や出産といったライフイベントにまで及んでいます。

月10万円という高額返済を続けると、常に「返済できなくなるのでは」という不安がつきまといます。この慢性的なストレスが自律神経のバランスを崩し、動悸、不眠、めまい、胃腸の不調といった身体症状として現れることがあります。自律神経失調症は、交感神経と副交感神経のバランスが乱れることで発症し、長期間の精神的プレッシャーが主な原因の一つです。

「辞められない」というキャリアの制約

奨学金返済を抱える方にとって、転職や休職は大きなリスクです。返済を止めるわけにはいかないため、たとえ職場環境が合わなくても「辞められない」と感じる方が多くいます。東京新聞の報道では、奨学金返済者から「無理ゲー」「生きるのがしんどい」といった声が寄せられており、返済のプレッシャーが精神的な追い詰めにつながっている実態が浮かび上がっています。

JASSOの属性調査(令和5年度)では、延滞者の62.9%が「本人の低所得」を理由に挙げています。収入が十分でない中で返済を続けることは、心身の健康を犠牲にすることと表裏一体です。

返済が苦しいときに使える公的制度

減額返還制度:月々の負担を軽くする

JASSOの減額返還制度は、経済的に返還が困難な方に向けた制度です。月々の返還額を2分の1、3分の1、4分の1、または3分の2に減額できます。返還総額は変わりませんが、返還期間を延長することで月々の負担を大幅に軽減できます。

主な条件:

  • 災害、傷病、経済的理由により返還が困難であること
  • 減額すれば返還を継続できること
  • 1回の申請で12か月間適用、最長15年(180か月)まで延長可能

申請はスカラネット・パーソナルからオンラインで行えるほか、郵送でも可能です。

返還期限猶予制度:一時的に返還を停止する

経済的に返還が困難な場合、一定期間返還を猶予してもらえる制度です。通算10年(120か月)まで利用できます。失業中や傷病の場合はオンラインからの申請も可能になりました。

猶予期間に制限がないケース:

  • 災害による被害
  • 傷病
  • 生活保護受給中
  • 産前産後休業・育児休業中

なお、2025年の制度改正により、減額返還制度の年収要件が325万円から400万円に引き上げられました。子どもが2人いる世帯では500万円、3人以上では600万円まで利用可能となり、より多くの方が制度を活用できるようになっています。

返済ストレスを軽減するための実践的アプローチ

繰り上げ返済に固執しない

月10万円の返済は、早く完済したいという思いから繰り上げ返済を行っている場合もあります。しかし、健康を害するほどの返済ペースは本末転倒です。JASSOの一般的な返還額は月1万5,000円〜2万円程度であり、それ以上の返済を行っている場合は、まず返済計画を見直すことが重要です。

月々の返済額が手取り収入の15%を超えている場合は、生活に支障をきたすリスクが高まります。減額返還制度の利用も含め、無理のない返済ペースを設定しましょう。

転職という選択肢を排除しない

奨学金返済があるから転職できないと考える方は多いですが、長期的にみると、心身の健康を維持しながら働ける環境に移ることが返済完了への近道になることもあります。返済中でも返還期限猶予制度を利用すれば、転職活動期間中の返済を一時停止できます。

近年は奨学金返還支援制度を導入する企業も増えています。福利厚生として従業員の奨学金返済を補助する企業への転職も、一つの有効な選択肢です。

専門家への相談を早めに行う

返済が困難になってからではなく、困難になりそうな段階で相談することが大切です。JASSOの相談窓口のほか、法テラス(日本司法支援センター)や弁護士による無料相談を活用できます。延滞が続くと信用情報に登録されるため、早めの対応が重要です。

JASSO猶予制度の誤解と2025年改革

よくある誤解に注意

奨学金の延滞については、いくつかの誤解があります。まず、「猶予制度を使うと信用情報に傷がつく」と考える方がいますが、これは誤りです。減額返還や返還期限猶予は正規の制度であり、利用すること自体が信用情報に悪影響を及ぼすことはありません。問題なのは、制度を利用せずに延滞を続けることです。

JASSOの調査では、返還期限猶予制度の存在を返還開始前に知っていた延滞者はわずか5.4%でした。一方、無延滞者では38.8%がすでに知っていました。制度を知っているかどうかが、延滞の分かれ目になっていると言えます。

制度改革の今後

2025年度からは多子世帯向けの給付型奨学金が所得制限なしで拡充されるなど、奨学金制度は改善の方向に進んでいます。しかし、現在返済中の方にとっては、既存の救済制度をいかに活用するかが現実的な課題です。所得連動返還方式の普及も進んでおり、今後は「返せる範囲で返す」仕組みがさらに広がることが期待されます。

平均6倍の返済負担と公的支援活用

奨学金の高額返済が心身の健康に深刻な影響を与えることは、多くの調査で裏付けられています。月10万円という返済額は平均の約6倍であり、自律神経の異常やメンタルヘルスの悪化につながるリスクは決して小さくありません。

重要なのは、「返済を続けること」と「健康を維持すること」のバランスです。減額返還制度や返還期限猶予制度といった公的支援は、まさにこのバランスを取るために用意されています。返済が苦しいと感じたら、延滞する前にこれらの制度を活用してください。人生は長いからこそ、無理のないペースで返済を続けることが、結果として確実な完済への道につながります。

参考資料:

小
小林 美咲

キャリア・教育

キャリア形成・教育改革・リスキリングなど、人と学びの接点を取材。変化する時代に求められる「働く力」を問い続ける。

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